(写真撮影:相馬ミナ)
11月24日(月) 7:00
今、家づくりを考えている人の間では、コンパクトかつ高性能な平屋が注目を集めています。みなこさん一家が実家の隣に建てた平屋は、無駄のない間取りながら子育てや愛犬との暮らしを快適に営める工夫が満載。家族や親族との親密な距離感を大切にしつつ、華やかなカラーリングや魅力あふれる素材感などに好みを詰め込み、理想をかなえた住まいをご紹介します。
実家リフォームから「実家の隣に一戸建てを新築」への転換■みなこさん邸
施工費1383万円(本体工事)家族構成夫35歳、妻33歳、長女3歳、犬11歳竣工年数2023年4月階数・間取り平屋・2LDK建物面積76.18平米住宅性能断熱等級6UA値0.58W/m2・K建築会社アットナチュレみなこさんのお宅は、ペールブルーの下見板張がアメリカンハウスを思わせる、キュートな外観。青々した広い芝生の庭には楽しげな遊具が置かれ、田園地帯と住宅地の狭間に、ワクワクするような風景が生まれています。
「将来は母のそばに住みたい。そう考え始めたのはまだ20代後半のころでした」と話すみなこさんは、結婚前からすでに家づくりを意識していたそう。結婚後しばらくは実家に間借りしていましたが、長女が生まれたことをきっかけに、自分たちのライフスタイルを大切にしたいという気持ちが強くなったといいます。
当初は実家の増築やリフォームも考え、リフォーム会社に相談に行きましたが、市街化調整区域(※)にあることで難しい手続きが必要であることが判明。「だったら、新しい家を建てる方がシンプルで進めやすい」と方向転換することに。実家の隣にあるおばあさまが所有していた農地を住宅地に転用し、新築することになりました。
※市街化調整区域……都市計画法で定められた、市街化が抑制されている区域。住宅や商業施設の建設が制限されている。
実家は2階建てで部屋数も多いのですが、みなこさんはあえてコンパクトな平屋を選びました。その理由は、実家には余っている部屋があり、必要になればそこを使わせてもらえること。そして、両親の暮らしぶりをそばで見ていて、大きな家は必要ないと感じたそうです。
最初から平屋を意識していたわけではなかったそうですが、実家で2階の部屋が余っている様子や、自分自身のマンション暮らしの経験から、ワンフロアで上り下りがない方が楽だと感じたことから、徐々に平屋志向へと傾いていったそう。
平屋は2階建てに比べて坪単価が高くなることもありえますが、それでもみなこさんは、利便性と快適性を優先しました。「価格よりも暮らしやすさを重視しました。将来を見据えたときに、平屋の方が自分たちに合っていると感じたんです」と話します。
数年かけてSNSや住宅雑誌で情報収集し、複数の住宅会社に資料請求をしていたみなこさん。そのなかで実際に施工を依頼した会社の決め手になったのは、シンプルさと機能性、そしてアメリカンテイストを取り入れたデザインの良さでした。
なぜアメリカンテイストが良かったのですか?と深掘りしてみると……
実はみなこさん、高校生のときに米国シアトルにホームステイをした経験が。そのとき友人がステイしていた住まいが平屋でした。「その家庭では、家族があまり個室にこもることがなく、いつもリビングに集まってくつろいでいて、そんなオープンさがいいなと感じていました」
家族や友人がリビングに集まり温かい雰囲気で過ごしている様子に憧れを抱いたことが原風景となっていたのです。
実家には廊下があり、寒暖差が生じたり動線が長くなったりすることの暮らしにくさを感じていたみなこさん。自分の家には、玄関から直接リビングへ入る海外のスタイルを希望しました。設計を担当したアットナチュレの藤川さんは「廊下がどこにもない間取り」でデッドスペースをなくし、シンプルで無駄のない平屋を形にしていきました。
その結果、生活動線がシンプルになり、各部屋へも最短距離で移動できる快適性が実現。無駄を削ぎ落とした分、みなこさんがもっとも大切にしたかったLDKを約20畳と広くすることができたのも良かった点です。
また、リビングから放射状に子ども部屋や寝室へとつながる設計にしたことで、家族の気配を常に感じられます。「ドアを開けたらすぐリビングだから、家族の気配や光が行き交い、家が明るい雰囲気になる気がします」(みなこさん)
個室は寝室が約8畳、子ども部屋が6畳と、必要以上に広くはしていません。しかし、ふだんは個室のドアを開け放っているので、それでも十分広いと感じられます。
リビングは家族の中心となる場所。子どもが自由に遊べるようにスペースを広く確保し、家具も最小限に抑えることでゆとりが生まれ、家族が自然と集まる空間になっています。ボール遊びやおもちゃのゴルフを楽しめて、「外で遊べない暑い日や雨の日でも、活発な娘をリビングで思い切り遊ばせることができ、この広さで本当に良かったと思っています」(みなこさん)
長女や愛犬を遊ばせやすいように、庭とのつながりも大切にしています。芝生の庭へはリビングからのみ直接のアクセスを可能とし、庭にはフェンスをめぐらせてあるため、まだ小さい娘や愛犬を自由に走り回らせても安心です。
開放感を大切にしながらも、窓は適量をバランスよく配置することで、必要なプライバシーや断熱性は確保。庭との適度な距離感が、家族の暮らしを豊かにしています。
家の外も中も、明るい色使いが目を引くみなこさんのお宅。外壁のペールブルーは、みなこさんが好きな色の中で「飽きがこず長く愛着を持てる色」として選んだもの。汚れの目立ちにくさや夫など男性目線からの受け入れられやすさも考慮したそうです。
照明やドアノブ、水栓などの金物にはゴールドをアクセントとして取り入れています。「普段身に着けるジュエリーもゴールドを愛用しています。動画やSNSで、ゴールドが多用されているアメリカや韓国のインテリアを見て影響されました。ゴールドは空間をぐっと華やかにしてくれますね」
また、展示場で見て気に入ったモザイクタイルを水回りに採用。洗面所にはブルー、キッチンにはピンクをあしらい、場所ごとに違う雰囲気を楽しんでいます。
そうした華やかさのベースとなっているのは、ナチュラルな素材感です。今回選んだタイプの標準仕様である漆喰壁は、みなこさんが特に希望したわけではなかったのですが、見た目や触れたときの質感の良さはもちろん、汚れが付きにくく拭き取りやすい点など、暮らしてみて魅力を感じるようになったそう。
「小さい子や犬がいるので、掃除のしやすさは重要なポイントです。犬が歩き回るときに体が壁に触れて少しずつ汚れてくるのですが、漆喰は水拭きをすればある程度汚れを落とすことができ、助かっています。うっかりして欠けてしまったとしても気軽に補修できるなど、メリットが多いですね」
LDKと寝室の床は、標準仕様である無垢のパイン材に、天然素材のオイルを塗っています。「冬でも冷たさがなく、直に座っても痛くないのですごくいいですよ」と、みなこさんは柔らかな質感の快適さを感じている様子。これも暮らしてみるまでわからなかったことでした。
愛犬にとっても快適なのは同じこと。柔らかさゆえにキズが付きやすいデメリットもありますが、経年による「味わい」として楽しむスタンス。将来いよいよキズが増えて気になったら、表面を薄く削って新品同様にすることもできるのが無垢材の強みです。
「冬は暖かく、夏は涼しい家です」とみなこさん。それもそのはず、この家の断熱等級「6」はZEHよりも優れた高水準(※)です。
※2025年度から断熱等級4以上が義務化、ZEHは地域区分6において断熱等級5以上にあたる値
標準仕様の窓であるYKK APW330は、アルゴンガス入りの断熱性能の高い樹脂サッシで、夏も冬も快適な室温を保ちます。みなこさん宅は夏場の暑さがとても厳しいエリアにありますが、リビングに設置したサーキュレーターと併用すれば、エアコン1台でも家中を冷暖房することが可能だとか。
「ワンフロアなので空調の効きが良く、子ども部屋も常にドアを開けてリビングとつなげておくことができるので、遊んでいる音も様子もよくわかります」(みなこさん)
実家の隣にコンパクトな平屋を建てたことは、暮らしやすさにも、子育てのしやすさにも直結しています。「困ったときに母にすぐ助けてもらえるのも、この距離だからこそ。一方で、完全同居ではないのでお互いの生活リズムを大切にできる点も気に入っています」(みなこさん)
さらに、弟家族の家もすぐそばにあり、親族3世帯が隣り合う“スープの冷めない距離”が実現しました。「長女が甥や姪とすぐに遊べることも、子どもたちにとって大きなメリット。将来、両親が高齢になったときも、この距離感なら自然に助け合えるので安心です」(みなこさん)
自分たちの住まいはできるだけシンプルでコンパクトに。その分、家族や親族との関わりが暮らしに広がりや安心をもたらしています。住まいのサイズにとらわれず、人とのつながりで豊かさを育む——そんな住まい方を体現する一例といえます。
●取材協力
みなこさん一家
アットナチュレ
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