30歳差の兄弟。血統ではつながっているが、たまに異端児やアウトサイダー扱いされてしまう。ポルシェ914とボクスターのことだ。それぞれが独自の成功を収めたモデルであり、最上位モデルである911に対して、より手頃なモデルとして販売された。914(全モデル)は、累計11万5千台を販売、986ボクスター(全仕様)は2004年までに16万5千台以上が販売された、いわばヒット作である。
【画像】どちらも攻めるほどに楽しさが増す!ポルシェ914-6とボクスターSを乗り比べる(写真6点)
どちらのベースモデルにも、より”マッチョな”兄貴分が存在した。914の場合、それは914-6だった。一般的なフォルクスワーゲン製の4気筒エンジンとは違い、ポルシェ製の2.0リッター水平対向6気筒エンジンをミドに搭載していた。一方、1996年に初登場したボクスターの場合、その兄貴分は1999年に発売された高性能モデルのSが該当する。ボクスターSがS550スパイダーなど様々な派生モデルで発展したのに対し、914-6は販売面では期待通りの結果にならなかったことは否めない。
果たして、この2台を比較することは妥当だろうか?何しろボクスターSは、914-6に対して30年も新しいモデルだ。250馬力の水冷3.2リッターエンジン、滑らかな6速トランスミッション、ワイドなタイヤ、マクファーソン・ストラット式サスペンションを装備する。対する914-6は軽快で紛れもなくセクシーではあるものの、パワーでは120馬力も劣り、165の細いタイヤを履き、セミトレーリングアーム式リアサスペンションを採用。そしてドッグレッグ型の5速シフトは、なんとも曖昧なフィールに悩まされる。
PCAパレード賞を受賞したこのオレンジの914-6を所有する良き友、トム・エリソンが、ワインディングを走りに行こうと誘ってくれた。そこで、私はレインフォレスト・グリーンのボクスターSを引っ張り出して、カスケード山脈のふもとで熱い走りを楽しむことにした。タイトなコーナー、気持ちの良い直線、そして週末なのに少ない交通量。さぁ、出発だ。シアトルから東へ約30マイルあたりの、レイジング川に沿った田舎道を走ることにした。
ポルシェにはかなり乗り慣れているつもりだが、914-6を運転するのは今回が初めてだった。そのトランスミッションは、フラット4の914を思い出させる感触だ。硬めで最初は扱いにくいけれど、加速は驚くほどシャープ。このモデルは、2.4リッター用のピストンとカムを搭載し、ウェーバー製キャブレターで燃料が供給される。そのサウンドは素晴らしく、思わず回転数を上げたくなる。
55年も前の車とは思えないほど速く、その走行安定性にも感心する。現代の基準では真の軽量車と言える1トン未満の車重で、まるでこの田舎道のために作られたかのようなハンドリングは抜群だ。もちろん、長い直線では私のボクスターと差がついてしまうが、914-6はコーナーでは十分に食らいつき、差を詰めてくる。そう、細いタイヤにもかかわらず、これまで乗った車の中でも類を見ないほど路面に張り付く。安定感とバランス、引き締まった走りを実感させ、驚くほど速い。
再び車を乗り換え、慣れ親しんだボクスターSに戻る。20年以上経った今も素晴らしい車であり、コストパフォーマンスも抜群だ。私はこの車を、『Bring a Trailer』経由で3年前に2万6千ドルで購入した。その際の走行距離は4万マイルで、クラッチとIMSベアリングは新品だった。(イギリスではさらに割安で、状態の良い個体は1万ポンド以下から入手可能だ。)それに比べて、程度の良い914-6は10万ドル以上もする。
このボクスターSは、どんな天候でも頼れる私の常用ロードスターだ。速く、車高は低く、作りもしっかりしていて、(今のところ)トラブルはない。914-6と比べたらどうだろうか? グリップが良く、ダイナミックにバランスが取れており、狭い田舎道を何時間走っても文句なしに楽しめる。手頃な価格で、運転していてとにかく楽しいから人気があるのも頷ける。頑丈で、驚くほど速く、運転が喜びになる車だ。
どちらも、思い切り攻めるほどに楽しさが増すことに驚かされる。ただし、914-6の方がより直感的な楽しさを提供してくれる。必ずしも優れているというわけではなく、「違う」のだ。より一体感がある。高速道路のランプに差し掛かると、トムはシフトダウンし、914-6は一気に加速した。私は3速なら、3.2リッターのトルクが十分なので付いていけると考えた。その考えは甘かった!914-6は、私を置き去りにした。
当時、914-6は価格面で911Tと近過ぎたうえに、新型で安価なダットサン240Zとの競合に苦戦した。一方、ボクスターSは、市場をほぼ独占してきた。どちらも異なる時代の優れたドライバーズカーであり、現代の基準では決して速くはないものの、今なお興奮を与えてくれる。選ぶなら、私は914-6に一票を投じるだろう。確かにボクスターSは、より快適で、速く、運転しやすい。しかし914-6は、手に負えないほど扱いにくくはなく、過度に要求が多いわけでもない。軽快な走りと、古き良き時代の感覚を兼ね備えているのだ。
文:Greg James
【関連記事】
・連載:アナログ時代のクルマたち|Vol. 65ヴァンダラーW25K
・ウェールズ公(現国王チャールズ3世)が乗っていた、2013年ベントレー・ミュルザンヌを入手できるチャンス!
・ブガッティが古都を駆け巡る|BUGATTI CLUB JAPAN MIYABI TOURING
・大阪のS&COMPANYが「テュフ ラインランド クラシックカーガレージ認証」取得|千原ジュニアさん所有の2台が認証対象に!
・久方ぶりに1971年サーブ96 V4と向き合う|『Octane』UKスタッフの愛車日記