"モンスター"井上尚弥の実弟が"神童"那須川天心と決戦!井上拓真が描く世界王座奪還への道筋と、断ち切った引退への迷い「仕上がりは過去イチ。勝つ自信しかない」

「ボクシングで負けるわけにはいかない」井上拓真の表情にはその強い覚悟があふれ出ている

"モンスター"井上尚弥の実弟が"神童"那須川天心と決戦!井上拓真が描く世界王座奪還への道筋と、断ち切った引退への迷い「仕上がりは過去イチ。勝つ自信しかない」

11月22日(土) 9:45

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「ボクシングで負けるわけにはいかない」井上拓真の表情にはその強い覚悟があふれ出ている

「ボクシングで負けるわけにはいかない」井上拓真の表情にはその強い覚悟があふれ出ている





昨年10月13日、WBA世界バンタム級タイトル戦で同級2位の堤聖也に判定負けを喫し、王座から陥落した井上拓真。

しばらくの間、現役を続行するか悩んだ彼が、再びリングに立つことを決意した理由を明かす。さらに、世界王座を懸けて闘う那須川天心への思いと勝利への絶対的自信も余すところなく語ってくれた。

***

【即断即決でマッチメイクに同意】 MLBのWS(ワールドシリーズ)やNPBの日本シリーズが閉幕した現在、スポーツファンの間では11月24日の井上拓真(大橋)と那須川天心(帝拳)によるWBC世界バンタム級王座決定戦の話題で持ちきりだ。

「無敗で世界王座挑戦まで上り詰めた天心の勢いを買う」「いや、ボクシングの幅で拓真が勝つ」などの声が上がり、戦前の勝敗予想は真っぷたつに割れている。

議論になればなるほど、さらに盛り上がることは必至。いったい勝負の行方はどうなるのか。

「世の中で話題になればなるほどうれしい」と語るのは井上拓真。

知ってのとおり、昨今のボクシングブームを牽引(けんいん)する"モンスター"井上尚弥の実弟で、かつてWBAバンタム級とWBC同級暫定を制した元世界王者だ。

「SNSでも、天心選手との一騎打ちは盛り上がっていますね。自分はけっこう見たりしますよ。腹が立つ?いや別に(微笑)。

予想はその人が決めることなので、別に気にならない。自分としてはファンが見たいカードをやっていきたいという思いが強いので」

今回の一大決戦は、大橋ボクシングジムの大橋秀行会長の「天心とやりたいか?」というひと言から始まった。考える時間など必要なかった。拓真の気持ちはすぐ固まり、「やらせてください」と了承したのだ。

――こんなドリームマッチが実現するなんて夢にも思っていませんでした。対戦相手の候補者リストの中に天心選手の名前は入ってました?



「なかったですね。いきなり大橋会長から話が来たので、すごくビックリしました」

昨年2月24日のWBA世界バンタム級初防衛戦。9ラウンドに強敵ジェルウィン・アンカハスに右ボディ一閃、TKO勝利を飾った。井上拓真が王座に返り咲くか、注目が集まる

昨年2月24日のWBA世界バンタム級初防衛戦。9ラウンドに強敵ジェルウィン・アンカハスに右ボディ一閃、TKO勝利を飾った。井上拓真が王座に返り咲くか、注目が集まる





――報道する側から見ても、「そうきたか!」と感心せざるをえない意外性のあるマッチメイクでした。

「そうなりますよね。でも、このタイミングで天心選手と闘えるのであれば、自分のモチベーションは高まるし、断る理由はなかったです。

最初は外国人選手との復帰戦を予定していたんですけど、それよりモチベーションは高いですね」

――天心戦が決まるや、尚弥選手は「絶対に拓真が勝つ」と断言したと聞きました。

「会長とナオ(尚弥)の会話の中でそういう発言があったようです。僕が直接聞いたわけではないですね」

――試合は昨年10月13日の堤聖也(角海老宝石[かどえびほうせき])を挑戦者に迎えてのWBA世界タイトルマッチ以来となります。この一戦で判定負けを喫して以来、どのように過ごしてきたのですか?

「試合直後は進退について『どうしようかな?』という感じでした。試合中に集中力が切れたりもして気持ちの面が整っていなかったので、『こういう内容だったら辞めたほうがいいのかな?』という方向に気持ちが傾いたこともありましたね」

――気持ちを切り替えることができた最大の要因は?

「あれこれ考えているうちに、『俺は何を考えてんだろう?』と思い始めたんですよ。

別に技術で負けたわけではない。気持ちの面で負けたことは自分も父(尚弥&拓真のトレーナーを務める井上真吾氏)もわかっていたので、『ここで辞めたら後悔する』と思ったんです。年末か年始くらいには、(現役続行の)意思は固まっていましたね」

9月25日の記者会見の席上。井上拓真は、「人の話を聞いているのか」とばかりに那須川天心(左)に鋭い視線を投げかけた

9月25日の記者会見の席上。井上拓真は、「人の話を聞いているのか」とばかりに那須川天心(左)に鋭い視線を投げかけた





――この一戦には大橋会長の愛のムチを感じる?

「愛なのか、期待なのか。会長も絶対負けない自信があるからこそ自分に話を振ってきてくれたわけなので、その期待には応えたい。そういう気持ちは強くありますね」

――拓真選手にとって天心戦はキャリア23戦目。調べてみたら、大橋会長も現役時代はちょうど23戦目で世界王者に返り咲いているんですよ(1992年10月14日、韓国のチェ・ヒヨンに勝利し、世界王者に返り咲き)。



「(驚いた表情を浮かべ)そうなんですか?めちゃくちゃドラマがあるんですね」

――ところで、前戦の堤戦から13ヵ月という長いインターバルが空いたことで試合勘が鈍ることはない?

「以前にも試合間隔が空いたことはある。今回はちょっとケガをしていたこともあり試合ができない期間でもあったので、ちょうどいいリフレッシュになったという感じです」

【「始まってみなければわからない」】 ――2年前、天心選手がボクシングに転向してきたとき、どんなイメージを抱きました?

「ずっとキックボクシングでやっていて、そこからボクシングに来るというのは勇気があるなと感じました」

――振り返ってみれば、天心選手が6回戦でボクシングデビューを果たした興行(23年4月8日)で、拓真選手はリボリオ・ソリス選手と空位のWBA世界バンタム級王座を争って判定勝利を収めています。それから天心選手はとてつもないスピードでランキングを上げ、拓真選手と肩を並べるところまできたという見方もできます。

「やっぱりボクシングとキックは競技が違うわけで、(天心のように)途中から新しい挑戦をするのはすごいことだと思います。まあ、彼がボクシングに来た当初はそこ(自分との対戦)までは考えていなかったですけどね」

――その後の天心選手の快進撃はどのように見ていた?

「階級は自分と一緒なので、いつかは当たる可能性もあるという思いがちょっとだけありましたね」

――試合が決まってからずっと対策を練っている感じ?

「そうですね。もうそこから天心選手をイメージしながら練習しています」

インタビュー終了後の練習風景の撮影で許されたのは、1ラウンドのシャドーのみ。兄・尚弥からも技術的なアドバイスをもらっているが、試合当日まで機密情報だ

インタビュー終了後の練習風景の撮影で許されたのは、1ラウンドのシャドーのみ。兄・尚弥からも技術的なアドバイスをもらっているが、試合当日まで機密情報だ





――試合前はどういう流れになるか、かなり綿密にシミュレーションするほうですか?

「いや、そんなにはしないですね。闘い方は何パターンかあるので、そういう想定はある程度するけど、やっぱり試合は始まってみないとわからない。そのとき起こったことに対応できるように、自分をつくっていくだけです」

――拓真有利を唱える識者の中には「ボクシングの幅が違う」と分析する方もいます。その幅をもう少し詳しく解説するとしたら?



「自分は対戦相手ありきで動いているけど......。う~ん、いろんなパターンができること、あと接近戦も長距離戦もどっちもできることですかね」

――両雄の闘いなら接近戦になるという見方もあるけど、そのあたりは?

「いや、第三者の勝手な意見は何も気にしていません。本当に始まってみなければわからないことが多いので。盛り上がってくれることはうれしいんですけどね」

――対サウスポーという部分はいかがですか?

「別に苦手意識はないです。ジム内にもサウスポーのパートナーはいっぱいいるので、今は対サウスポーの練習をやってます」

――リーチは天心選手のほうが長い。その差については?

「別に気にしていませんね。過去にも自分よりリーチのある長身のサウスポーがいっぱいいたけど、彼らにもちゃんと勝ってきているので、そこは気にしていないです」

――現時点(取材は10月中旬)では何%くらいまで仕上がっているんですか?

「仕上がりは過去イチと言っていいほどいい感じですね。だから勝つ自信しかないです」

【兄から受ける刺激を動機に変えて】 ――今回、兄・尚弥選手からはどんなアドバイスを?

「技術的な細かい動きなどの面でけっこうもらっています」

――それを少しだけ教えていただくことは可能?

「それはちょっと言えませんね(含み笑い)」

――では当日のお楽しみにしておきます。今回3度目の世界王座戴冠を成し遂げたら、過去の2回と比べて世間からはまったく違うと言っていいほどの高い評価を得ることが予想されます。

「勝った後のことはまだ何も考えていないけど、それはあると思います。そこは楽しみたいですね」

22戦20勝のうち15勝が3‐0の判定勝ちとは思えないキレイな顔。いかに相手に打たれずに打っているかがわかる

22戦20勝のうち15勝が3‐0の判定勝ちとは思えないキレイな顔。いかに相手に打たれずに打っているかがわかる





――過去に何度となく尚弥選手と比較されることがあったと察します。天心選手に勝てば、その部分の評価も変わってくるのでは?

「いや、そこは変わらないと思います、変わらないです」

――その心は?



「ナオがやりすぎてるから(微笑)。そうでなければ、2階級で4団体統一なんてありえない」

――贅沢(ぜいたく)な悩みになるけど、もう少し活動にブレーキをかけてもらいたい?

「いや、これからもナオには突っ走ってもらわないと。意識していないことはないし、いつも刺激をもらっている。

でも、評価の部分で肩を並べたりするのは無理です。断言します。そこはしっかり受け止めないといけない」

――決戦から約1ヵ月後(12月26日)には、ちょうど30歳の誕生日ですね。

「もちろん世界チャンピオンとして誕生日を迎えたい。そのために、今は苦しい練習にも耐えられるので」

●井上拓真Takuma INOUE

1995年12月26日生まれ、29歳。神奈川県座間市出身。身長164㎝。元アマチュアボクサーの父と兄・尚弥の影響で幼少期からボクシングを始め、2011年にはインターハイで優勝。13年の12月にプロデビューを果たす。18年12月、WBC世界バンタム級で初の暫定王座獲得。翌19年11月に団体内王座統一戦に敗れ、暫定王座陥落。23年4月にはWBA同級王座を獲得するも、翌24年10月に同級2位の堤聖也に敗れ、再び王座を手放す。11月24日、13ヵ月ぶりの世界戦に挑む

取材・文/布施鋼治写真/ヤナガワゴーッ!

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