【箱根駅伝2026】國學院大学・青木瑠郁が覚醒した前田康弘監督の言葉「一度、プライドを捨てろ。勝つためのレースをしろ」

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【箱根駅伝2026】國學院大学・青木瑠郁が覚醒した前田康弘監督の言葉「一度、プライドを捨てろ。勝つためのレースをしろ」

11月22日(土) 7:00

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上尾ハーフで優勝を果たし、自信を取り戻した國學院大・青木瑠郁 photo by Sugizono Masayuki

上尾ハーフで優勝を果たし、自信を取り戻した國學院大・青木瑠郁 photo by Sugizono Masayuki





前編:國學院大が上尾ハーフで再び生み出した上昇気流

10月の出雲駅伝で圧巻の2連覇を達成したが、11月の全日本大学駅伝では不完全燃焼の4位。箱根駅伝の初優勝に照準を合わせる國學院大にとって、11月15日の上尾シティハーフマラソンは大きな意味を持つレースだった。本番のメンバーを絞り込む選考も兼ねていたが、それだけはなかった。

【ラストスパートにつなげた冷静な対応】箱根駅伝に出場する大学が多く集まる上尾シティハーフマラソン。例年どおり、中堅クラスから箱根登録メンバー当落選上の選手までがズラリと並ぶなか、國學院大のエース格である青木瑠郁(4年)は並々ならぬ思いでスタートラインに立っていた。全日本大学駅伝では期待を背負ってエース区間の7区で出走したが、レース中盤から差し込み(脇腹痛)に襲われ、まさかの区間9位。レース後は失意に暮れ、気持ちも沈み込んだという。あれから2週間――。箱根駅伝で勝つために何ができるのかをずっと考えるなか、前田康弘監督の言葉は胸に響いた。

「『一度、プライドを捨てろ。勝つためのレースをしろ』と」

レース序盤は先頭集団の中団で走り、ライバル校の桑田駿介が前で引っ張る背中を後ろから見ていた。相手は駒澤大の主力とはいえ、2年生。4年生の意地はあったものの、それよりも勝つための走りに徹した。「自信のあるラスト勝負に持ち込む」と自らに言い聞かせ、ペースアップしたのは17km付近。桑田が負けじと食い下がってきても、冷静だった。

終盤はデッドヒートを繰り広げる。残り600mで駒大の大八木弘明総監督の声掛けで一度前に出られたが、仕掛けどころはラスト400mと決めていた。渾身のスパートを切ったのは、フィニッシュ地点が見えてからである。

「さすがに、あそこで負けるわけにはいかなかったので。駒澤大の力を持っているランナーに勝てたのは大きかった。前田さんからも『上尾で勝てば、もう一度チームに流れを持ってくることができる』と言われていたんです。それが僕の役目でした」

圧巻の勝利だった。出雲駅伝の1区では終盤にいち早く仕掛け、ラスト勝負に敗れて区間5位。伊勢路の失速を含め、ピリッとしなかった走りを払拭するような内容での優勝。ここまでレースにピークを合わせられなかったが、調子を落としていたわけではない。全日本大学駅伝の10日前も7区で区間賞を狙える49分台を出すくらいは走れていたという。

「全日本では練習してきたことが出せなかったのですが、ここで力を発揮できたのはよかったです。箱根へ向けて、レース勘がないまま臨むよりも、ロードでひとつ勝っておきたかったのもあります」

【涙が出そうなくらいですよ。チームにとっても、本当に大きい】顔を上げて、すっかり自信にあふれる表情に戻っていた。笑みを浮かべる青木の姿を少し離れたところから眺める前田監督も、頬を緩めていた。1年生から学生3大駅伝の出走メンバーに抜擢し、一度も欠かさずに起用。箱根駅伝では3大会連続で往路を任せるなど、その信頼は揺るぎない。

「全日本では彼本来の走りはできなかったので、『青木はこんなもんじゃない』というところを見せてほしかった。上尾は私から『行くぞ』と言って、エントリーしました。メンタル的な修正を入れて箱根に向かうのが、総合優勝への近道になると思ったので。やっぱり、大事な青木瑠郁は外せませんから」

毎日、練習を身近で見ている指揮官の言葉には熱い思いがにじむ。たとえ、伊勢路で一度外しても、青木の実力を疑う者はチームメイトにもいないという。國學院大の誰もが認めているエース格。上尾のレースに臨む前には、本人にはっきりと伝えた。

「2番じゃ意味がない。勝たないと意味がない。口ではなく、シンプルに青木瑠郁の力を見せてくれ、勝つことがすべてだ、と」

青木は結果をもって、満点回答をしてみせた。期待にしっかり応えてくれた4年生の走りには目を細め、しみじみと話す。

「涙が出そうなくらいですよ。これはチームにとっても、本当に大きい。全日本では本人も悔しかったでしょうが、私たちスタッフも悔しかったんです。上尾では持っている力を普通に出せて、よかった。チームの流れって目に見えないですけど、ここから箱根に向けて、さらによくなっていくと思います」

秋が深まるなか、追い風が吹き始めた。近年、國學院大の鬼門となっている『山区間』のメドも立っているようだ。下級生を中心にきつい練習に取り組んでおり、副主将の青木は励みになる走りができたという。

「"山組"のメンタル向上にもつながると思います」

1時間00分45秒とハーフマラソンの自己ベストを更新した青木は、4大会連続で往路の出走を目指す。かつてとは違う一面も見える。エースの肩書にも、もはやこだわっていない。箱根駅伝の総合優勝から逆算し、不用なプライドを捨てていた。全日本大学駅伝の3区で区間賞を獲得している野中恒亨(3年)の実力を認めた上で、どの区間でも走る準備を整える。

「僕は押していく力もありますし、ラスト勝負もできます。1区から4区のどこに配置されても、区間賞を狙いに行きたい気持ちはあります」

主要区間を走るべき主軸が実力をあらためて証明するなか、上尾では中間層の押し上げも目を引いた。

つづく

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