「貯蓄はあるけど頭金はゼロ」が増加!「住宅ローンの返済」と「資産形成」の両立を目指すから?

(画像/PIXTA)

「貯蓄はあるけど頭金はゼロ」が増加!「住宅ローンの返済」と「資産形成」の両立を目指すから?

11月19日(水) 7:00

提供:

三井住友信託銀行の「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」(以下、ミライ研)は、全国約1万人(18歳~69歳)を対象とした「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」を2025年1月に実施した。その結果のうち、頭金や金融資産と住宅ローンの関連性について分析したレポート、「“貯蓄はあるけど、頭金ゼロ”という選択」を公表した。住宅ローンの借り方の新しい潮流が見られるので、詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2025年)を分析/三井住友トラスト・資産のミライ研究所

“貯蓄はあるけど、頭金ゼロ”というという人が増えている!

今回、ミライ研では、住宅ローンに関して、頭金ゼロを選択した人に注目して分析をしている。というのも、時系列で見ると「頭金ゼロ(なし)」の割合は増加傾向にあり、「2021年~2024年」に住宅ローンを借り入れた人では、「頭金ゼロ」が最多の36.9%を占めているからだ。ちなみに、次いで「頭金1割くらい」(22.9%)、「頭金3割くらい」(13.1%)が続く結果だった。

また、「頭金ゼロ」を選択した人の中で、住宅購入時の保有金融資産額(物件の頭金や諸費用などを支払う前の額)が「500万円以上」あった人の割合は、「1991~2000年」の22.2%から、「2021~2024年」には38.9%へと16.7ポイント増加しており、“金融資産はあるが、頭金ゼロ”という人が増加していることがわかった。

ではなぜ、手元に資金があるのに、頭金ゼロにしたのだろう?以降は、住宅購入時に保有金融資産が500万円以上あった人が対象の結果だ。

頭金の割合を決めた理由を聞いたところ、「頭金ゼロ」を選んだ人の回答では、最多が「手元にお金を保有しておきたかったから」(27.3%)、次いで「金利が低かったから」(25.9%)、「住宅ローン減税が活用できるから」(20.6%)が上位に挙がった。

手元にお金を保有できる安心感に加え、低金利だったことから借入額が多くても返済への影響が小さく、住宅ローン減税の対象額も(上限額内であれば)増えるといったメリットを重視したことがうかがえる。

頭金割合の選択理由(複数回答可)
出典:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「“貯蓄はあるけど、頭金ゼロ”という選択」より転載

頭金ゼロでは、住宅ローンの借入金額が増加、返済期間が長期化する?

頭金の割合と借入金額の中央値(データを小さいほうから順に並べたときに真ん中にくる値)の関係を見ると、たしかに、頭金ゼロを選択した人は頭金がある人より多くの借り入れをしている。借入金額が4000万円以上の割合も32.4%に達している。

一方で、借入金額に頭金の金額を足した購入金額を算出すると、頭金の割合に関係なく、いずれも同程度の金額になっている。同程度の額の住宅を購入する際に、頭金と借入金額の割合をどう配分するかという選択になっているようだ。

借入金額
出典:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「“貯蓄はあるけど、頭金ゼロ”という選択」より転載

また、住宅ローンの借入期間(返済期間)を頭金の割合別に見ると、「頭金ゼロ」を選択した人は、借入期間が長くなる傾向も見られる。頭金ゼロでは借入期間が一般的な最長期間「35年」が55.9%と過半数を占め、「36年以上」の超長期ローンを選んだ人も比較的多い。これは、借入金額が多くなった分、借入期間を長くすることで、毎月返済額を抑えようとしたからだろう。

借入期間
出典:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「“貯蓄はあるけど、頭金ゼロ”という選択」より転載

「住宅ローンの返済」と「資産形成」の両立を図る時代に?

現在、住宅ローンを返済している人を対象に、資産形成への取り組みを聞いたところ、頭金の割合に関係なく、7割以上が資産形成に取り組んでいた。多くの人が「住宅ローンの返済」と「資産形成」の両立を図っていることがわかる結果だ。

資産形成への取組み
出典:三井住友トラスト・資産のミライ研究所「“貯蓄はあるけど、頭金ゼロ”という選択」より転載

ただし、頭金の割合によって、「年間資産形成額」の金額は異なる。中央値で比較すると、「頭金ゼロ」の中央値が95.0万円、「頭金1割くらい」が87.8万円であるのに対して、「頭金3割くらい」(117.2万円)、「頭金4割以上」(135.6万円)はより多くの金額を資産にしていた。

「頭金ゼロ」の借り入れで注意すべき点とは?

まず、住宅ローンの金利と利息の関係を整理しておこう。利息は、金利が高いほど増えることは周知のことだろう。加えて、借入金額が多いほど、返済期間が長いほど、利息は増える。

つまり、頭金ゼロの借り方の特徴である、借入金額の高額化、返済期間の長期化は、利息が増える要因になるのだ。さらに、低金利時代の変動型で借りた場合、適用される金利が上昇すれば利息も増えていく。こうした構造を理解しておくことがポイントになる。

また、頭金を1割以上入れて融資率を9割以下にすると、適用金利を引き下げる金融機関もある。頭金については、金利という面でも配慮すべき点がある。

オーバーローンのリスクにも注意が必要だ。返済当初は返済額の多くが利息に充てられて元金がなかなか減らない。頭金ゼロでは住宅価格の全額を借り入れるので、早期に売却することになった場合、住宅ローンの残高が売却金額よりも多いというリスクもある。こうした点も考慮して、資金計画を立てる必要があるだろう。

ローン返済と資産形成よるコントロールも選択肢

一方で、金利上昇局面では、資産形成の際の金利も上がるので、資産を増やしやすいというメリットもある。資産運用により余剰資金を増やし、繰り上げ返済などを活用して、収支をコントロールするといったことも可能になる。住宅ローン返済と資産形成の両立によって、長期的に収支をコントロールするという選択も有効な考え方だろう。

ただし、住宅ローン返済と資産形成を両立させるには、住宅ローンの仕組みを理解することに加え、資産運用の知識も必要になる。高い金融リテラシーが求められるので、長期的なマネープランや家計管理の習慣化、日ごろから金融知識を習得することなどを実践したい。

さて、頭金と借入金額の配分については、家庭それぞれで考え方は変わるだろう。頭金の割合を増やして借入金額を抑えることで金利上昇に備える選択肢もあれば、手元に残した資金を運用して住宅ローンの利息と運用利益を管理する選択肢もある。

やってはいけないことが、貯蓄ができずに頭金がゼロになり、住宅ローンに頼って購入するといった “借りすぎ”をしてしまうことだ。住宅ローンも金融資産も長期的な視点を忘れずに、マネープランをしっかり考えてほしい。

●関連サイト
三井住友トラスト・資産のミライ研究所:ミライレポート
三井住友トラスト・資産のミライ研究所:『「高額」「長期化」しやすいペアローン』


【関連記事】
最大の不安は「物価高」。節約志向が高まるなかでも持ち家派が多数。住宅ローンの不安を軽減する方法を紹介
長期固定に揺り戻し?頭金割合や借入金額は?過去35年間と足元5年間で住宅ローンの利用実態に違いも
調査結果に見る新築マンション購入者の3つの属性と意識の変化。金利上昇が懸念される今後はどうなる?
金利上昇でも約8割が「変動型」!住宅ローン最新利用状況と超長期住宅ローンの落とし穴
住宅購入「買い時か否かわからない」が44.5%に。金利上昇と高すぎる価格に揺れる消費者意識とは

SUUMO

生活 新着ニュース

合わせて読みたい記事

編集部のおすすめ記事

エンタメ アクセスランキング

急上昇ランキング

注目トピックス

Ameba News

注目の芸能人ブログ