サッカー日本代表に過去の試合で見られなかった現象 スタッツは低調で遅攻ができなくなっている

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サッカー日本代表に過去の試合で見られなかった現象 スタッツは低調で遅攻ができなくなっている

11月20日(木) 17:45

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日本にとって来年のW杯本番に向け年内最後の強化試合となったボリビアとの一戦は、4日前のガーナ戦に続くクリーンシートを達成した日本が、3-0で勝利を収めた。

ただ、スコア的にはほぼ完璧と言える一方で、試合内容を直視してみると少し違った印象を受けたのも確かだった。この点については試合後の記者会見で森保一監督も、「なかなか自分たちのコントロール下に置けないような試合」だったと振り返っている。

後半、中村敬斗らのゴールで勝負を決定づけた日本だったが......photo by Sano Miki

後半、中村敬斗らのゴールで勝負を決定づけた日本だったが......photo by Sano Miki



実際に公式記録のスタッツでも、ボール支配率は日本が45.3%とボリビアを下回り、シュート数も9本だった日本に対してボリビアは10本を記録した。とりわけ後半だけで見ると、ボール支配率は38.6%(日本)対61.4%(ボリビア)で、シュート数も4本(日本)対8本(ボリビア)と、いずれもボリビアに軍配。加えて、ガーナ戦で評価を高めたデュエル勝利率においても47%対53%(前半は50%対50%)と下回っている(SofaScore調べ)。

もちろん、サッカーの試合はスタッツを競っているわけではないので、この試合は日本が効率よく勝利を収めたと言える。しかしながら、内容が重要になる強化試合の目的を考えると、申し分のない結果を得たこと以上に、試合の中身を反映するスタッツが低調だった原因に目を向ける必要があるだろう。

なぜ日本は3-0で勝利しながら、ボール支配率やシュート数でボリビアを下回り、この試合を自分たちのコントロール下に置けなかったのか。今後に向けた課題を探るためにも、ピッチ上で何が起きていたのかを確認してみたい。

【日本ペースは立ち上がりのみ】 ガーナ戦のスタメンから7人を入れ替えたこの試合の日本の布陣は3-4-2-1。ただし、純粋なアタッカーを両ウイングバック(WB)に配置する従来の編成ではなく、右サイドバックが本職の菅原由勢が右WBを務めた(左WBは前田大然)。

対するボリビアの基本布陣は4-3-3。3-4-2-1の日本は、4-3-3の相手に対して前からプレスをかける場合は、1トップが相手のワンボランチを見て2シャドーが相手のセンターバック(CB)をマークするかたちをとる。この試合でも、基本的には1トップを務めた小川航基がボランチの16番をマークし、久保建英と南野拓実がCBの2番と4番にそれぞれプレスをかけた。

ただ、この日のボリビアは守備的MFの6番(エクトル・クエジャル)が先発したこともあってか、自陣で守る際は15番(ガブリエル・ビジャミル)が高い位置に残り、6番と16番(エルビン・バカ)が横並びになって4-2-3-1(4-4-2)に変形。それにより、本来マッチアップする6番と鎌田大地の距離は通常よりも離れていた。

「日本のプレスやその強度は事前にわかっていたが、序盤からペースを握られて失点をしてしまったことで、選手たちに迷いが生じてしまった」

試合後の会見でボリビアのオスカル・ビジェガス監督が振り返ったように、日本がいつものように開始から高い強度で前からプレスを仕掛けると、2分に鎌田が小川の決定機を創出し、続く4分には久保のクロスから鎌田が仕留めてあっさり先制に成功。その後も日本は試合の主導権を握り、23分には菅原のクロスに小川がヘッドで合わせ、バーに当たったボールを回収した南野がシュートを放つ惜しいシーンも作った。

日本にとっては上々の立ち上がりに見えたが、日本がプレス強度を落としたことと、ボリビアが「我々のFWを日本のMFに近づけるような戦い方に変えた(ビジェガス監督)」ことにより戦況が少し変化した。試合開始から15分間は54.4%、その後の15分も58.3%のボール支配率を記録していた日本だったが、前半ラスト15分は45.1%に低下し、23分以降は前半が終了するまでシュートはゼロ。一転、ボリビアが日本陣内でプレーする時間が増加するようになっていた。

結局、前半のボリビアのシュートは2本のみに終わったが、30分には日本陣内深い位置で鎌田のミスパスをカットした左ウイングの11番(フェルナンド・ナバ)が決定機を迎えている。そのシュートはわずか右に外れたが、振り返れば、それは試合結果を左右するような紙一重のシーンでもあった。

【後半もペースは握られていた】 明らかに流れが悪くなっていたなか、日本は後半開始から右WBに堂安律を起用。一方のボリビアも、16番を下げて14番(ロブソン・マテウス)を投入すると、ワンボランチとなった6番が戦況によって最終ラインに落ちて3バックを形成。日本の前からのプレスを回避する策を打つと同時に、インサイドハーフのレギュラーである14番の起用によって、反撃の姿勢を強めた。

「戦術面の調整を行なったことで、後半はよりこの試合の主役としてプレーすることができるようになったと思う」

ビジェガス監督が語ったように、その交代策が奏功し後半はボリビアのペースで展開。最大のポイントになっていたのは、適宜に最終ラインに落ちたり前に出たりといった動きを繰り返した6番のクレバーなプレーにあった。W杯南米予選では3バックの一角を担うこともあった守備的MFのラインコントロールは、手慣れたものだった。

それに惑わされたのが小川だ。1トップが明確にマークする相手を見失うようになり、日本の前からのプレスがハマらない状態が続くと、ボリビアはロングボールを使わずにパスをつないで日本陣内に前進。後半立ち上がり15分のボール支配率も64.4%にアップ(日本は35.6%)し、決定機はなかったにせよ、カウンターを含めてシュート4本(枠内3本)を立て続けに記録した。

そんな戦況を見て、森保監督は67分に前線3人を入れ替えて上田綺世、中村敬斗、町野修斗を投入すると、71分(町野)と78分(中村)に加点することに成功。戦況が大きく変わったわけではなかったが、後半のシュート4本のうち、2本をゴールに結びつけるなど、ボリビアとの個人能力の差を見せつけた格好となった。

勝敗という点ではこの3枚代えが決め手となったわけだが、その一方で、日本が盛り返したのは追加点を挙げた時間帯のみ。ラストスパートの時間帯で再びボリビアにペースを握られてしまったことは、反省点のひとつとして挙げられる。

今回の対戦相手は、1994年アメリカW杯以来の本大会出場を目指して大陸間プレーオフを戦うFIFAランキング76位のボリビアだ。W杯でベスト8以上の成績を目指す日本としては、ホームでの試合だったことも加味すれば、内容的には手放しで喜べるような試合ではなかったと見るのが妥当だろう。

【縦に速い攻撃に終始】 特に気になったのは、日本がボールを奪ってから縦に速い攻撃に終始していることだった。実際、日本が前半で記録したシュートはプレス強度が高かった開始約20分に限られ、オープンプレーで記録した5本のうち3本は10秒以内。23分の小川のシュートも、自陣ボックス内で相手のクロスを遠藤がカットしてから22秒で記録したロングカウンターによるものだった。後半のシュート4本も、そのすべてが10秒台のフィニッシュだ。

その結果、試合を通して敵陣で打ち込んだくさびの縦パスはゼロ。これは過去の試合では見られなかった現象で、しかもサイドからのクロスも前後半ともに5本しかなかった。要するに、プレスの強度を落とした時もハイプレス時に効果的な、速攻オンリーになっていたことを示している。

強度の高いハイプレスは90分を通してできるものではない。それだけに、その強度を落とした時に、いかにしてボールを握りながら効果的な遅攻を織り交ぜることができるか。森保監督が「不安定なボールが行ったり来たり」と表現したこのボリビア戦で、日本が試合をコントロール下に置けなかった最大の理由はそこにある。

48チームが出場する来年のW杯では、おそらくグループリーグでは日本よりもFIFAランキングが低いチームとの対戦が2試合になる。その相手に今回のボリビア戦のような不安定な戦いをするようだと、足元をすくわれてしまう危険性も考えられる。そういう意味では、速攻と遅攻の使い分けと試合コントロールも、今後のチェックポイントになりそうだ。

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