人生に迷ったとき、元気がほしいとき、あるいはただ日常を忘れて泣きたくなるとき――そのような瞬間にそっと寄り添う存在がアニメである。アニメには人生のヒントや生きる力が詰まっている。
本コラム『アニメ大先生』は、「人生で大切なことはすべてアニメが教えてくれる」をテーマに、アニメを通じて得られる学びや気づきを綴る連載である。
【アニメ大先生】連載第12回となる今回は、アニメに情熱を傾けるアナウンサー・森遥香さんが4度目の登場。彼女が選んだテーマは、話題の中国アニメ映画『羅小黒戦記2』。熱狂的なファンを持つこの作品を、森アナが「日本人にも見てほしい」と推す理由は何なのか。その魅力を語る。
◆良いアニメに国境はない!中国アニメ映画『羅小黒戦記2』を日本人にも見てほしい理由
久々の登板回です。ご無沙汰しております。
言い訳がましいのですが、アニメ大先生に相応しい、本当に感銘を受けた作品を紹介したいがために、熟考しすぎて遅筆になってしまいました。
寝かせた分、しっかり味のする記事が書けていると幸いです。
ここ数年、日本のアニメオタクの中で、海外アニメの人気が沸騰している気がする。
かくいう私も友人たちの薦めで、アメリカの『ハズビン・ホテル』はじめ、中国の『時光代理人』や韓国の『ALIEN STAGE』など、ハマった海外作品は多数ある。
圧巻の映像美に目を丸くすることもあるし、建造物や食べ物など、その国独自の文化には、日本人にとってある種ファンタジーのような魅力を感じるのだ。「良い!!!」と叫びたくなるアニメに、もはや国境は無くなりつつあるのではないだろうか。
ということで、今回、国を越えて布教したい作品が、今月7日から劇場上映がスタートした、中国アニメーション映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)2 ぼくらが望む未来』だ。
前作の『羅小黒戦記ぼくが選ぶ未来』は、2020年に日本語吹替版が公開されると瞬く間に評判が広まり、異例のロングラン上映となった。
現代の中国を舞台に、人間たちの自然破壊によって故郷を失った子猫の妖精・シャオヘイが、新たな居場所を求めて旅に出る。その道中、シャオヘイは人間のエゴを許せない妖精フーシーや、最強の人間ムゲンに出会い、成長しながらも大きな戦いに巻き込まれていく。彼らの心の交流や決意に胸を打たれる感動作だ。
そんなシャオヘイたちの2年後を描いたのが、『ぼくらが望む未来』。5年ぶりの待望の続編ということで期待も大きかったが、想像していた100倍「最高」だった。
特筆すべきは、前作からさらに進化したアクションシーン。
ハイクオリティな映像技術とカメラワークによって、まさにコンマ1秒の世界で、滑らかかつ激しい戦闘が繰り広げられる。思わず笑ってしまうほど尋常ではないスピード感に、吹替を演じる声優の皆さんは台本と映像を追うのをやめ、シーンを覚えてアフレコしたそうだ。
目の肥えたアニメファンの方も、きっと衝撃を受けると思う。私も動体視力をしっかり鍛えてから、また観なくては。
そして、とにかく登場人物たち皆、愛おしいのだ。
特に主人公のシャオヘイの可愛さたるや。猫と子供の姿に変幻自在なのだが、あまりにも愛らしすぎて目尻が下がりっぱなしになってしまう。いっぱいご飯を食べさせてあげて、それを隣でずっと眺めていたい……。
うっかり願望が漏れてしまったが、心が和むような日常シーンも、続編では前作と比べてかなり増えていた。「尊い」の増量に喜ばないオタクはいませんよね。
そんな温かみのあるキャラクターたちを通して描かれるのが、環境問題はさることながら、「共存」という普遍的なテーマだ。
異なる価値観や背景を持つ者たちの対立、そして平和を目指すというメッセージは、現実問題にも置き換えられ、日本で暮らす私たちにも問いかけてくる。
前作と今作ともに、妖精側と人間側の狭間に立たされるシャオヘイも選択を迫られる。
元々シャオヘイは人間を嫌っていたが、ムゲンとの旅や生活を通して、人間の文化や社会に触れることで人間というものを知っていく。
今では「人間だから悪い」のではなく、「人間の中にも悪い人はいる」という成長した視点を見せてくれるようになった。
だからこそ、どちらが正しくて、どちらが間違っているのか———シャオヘイは悩みながらも決断をしていく。
実は、この共存というテーマについては、作中でもハッキリとした結論は出ないままだ。
だが、シャオヘイの考え続ける姿こそが、私たちが学ぶべき姿勢なのかもしれない。
一方的な感情や偏見で決めつけるのではなく、まずは相手をよく知るところから行動してみる。相手の立場が想像できるようになることは、共存への一歩。考えることを放棄してはいけないと、シャオヘイは私たちに教えてくれた。
さらに、二者択一に捉われず、新しい選択肢を模索し続けることも、より良い未来に繋がるのではないだろうか。
そんな壮大なメッセージを投げかけながらも、軽快なギャグや可愛らしいキャラクターのおかげで重くなりすぎないので、お子さんと一緒に楽しく観て、両者の視点から話し合うのもいいのかもしれない。裾野が広いのもこの作品ならではだ。
小さなシャオヘイが選択する未来は正しかったのか、さらなる続編にも期待して、これからも見届けていきたいと思う。
【関連写真】シャオヘイ役花澤さんとフーシー役櫻井さんと森さんの写真をチェック!
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