旧車の復元にアイデアとスピード感を。
もはや日本でもブームからスタンダードになりつつある旧車の世界。それは昭和生まれのオジサンだけでなく、若者も興味を持つ対象であり、今後ひとつのカルチャーとして根付いていく可能性を秘めている。
【画像】S&COMPANYが国内では5社目となる「テュフ クラシックガレージ認証」を取得!(写真18点)
こうした流れをキャッチしたメーカーは、人気の高い特定のヒストリックモデルを高品位にレストアできるよう、部品の再販を始めたり、社内における高い技術を持つマイスターの育成や、新車当時のデータ整理など、すでにいくつかのブランドではメニュー化も進められている。
日本のメーカーではマツダが、NAロードスター(ミアータ)などにフォーカスし、ユーザーからのレストアサービスを受け付けているが、広島のマツダ本社工場が『テュフ ラインランド ジャパン クラシックカーガレージ』の認証を受けた2018年から7年を経た今、日本国内に同認証を取得した工場はまだ5つしかない。
マツダ、ヤナセクラシックカーセンター、郷田鈑金、GR Garage富山新庄に続く5社目としてこのほど認証されたのが、大阪・守口にファクトリーを構えるS&COMPANYである。
テュフ ラインランドとは、1870年代に蒸気ボイラーの事故が多発した際にヒューマンエラーを防ぐための第三者検査機関として設立されたドイツの試験・検査サービスプロバイダー。テュフ(TÜV)は「技術検査協会」のイニシャルから取られており、ドイツにおける工業製品の規格を作り出し認証を与える機関として、ドイツ国内の車検制度や免許制度なども管理している。また、ニュルブルクリンクのレーシングカーの車検や、自動車保険のアジャスター、クラシックカーのマッチング適合認証を含めた査定などもおこなっており、こうした中立の立場から、クラシックカーのレストアを適切におこなえる工場を認証しているのが、『テュフ ラインランド ジャパン クラシックカーガレージ』である。
自動車文化が醸成されたドイツでは旧い自動車を産業遺産として取り扱い、クラシックカーに対する価値観や社会的通念が日本よりもしっかりと確立されている。ゆえにその認証の基準は相応ハードルが高く、レストアに関する知識、経験、技術だけでなく、適切な設備や工具、フレーム修正機や鈑金塗装のブース、そして調達が困難なパーツの入手プロセスなど、150項目以上の条件が求められる。一方でユニークなのは、認証工場でレストアを完了した車体毎に認定証明書が与えられるというシステム。第三者機関による証明書により、クラシックカーの価値を保護するというもので、前述のマツダ本社で過去にレストアされた16台のNAロードスター全てに、『テュフ ラインランド ジャパン クラシックカーガレージ』認定証明書が与えられており、オーナーは客観的評価による価値をもって自動車車両保険に加入することが実現しているという。
フォードエコノラインとフィアット600
先日、この『テュフ ラインランド ジャパン クラシックカーガレージ』の認証を取得したS&COMPANYは、元々中古車販売店からカスタムガレージとして成長し、オンリーワンの車づくりを掲げてきた関西の人気ショップ。
顧客にはプロスポーツ選手やタレントなども多く、今回の認証対象となった1965年式フォードエコノラインと、同じく1965年式のフィアット600ムルティプラは、タレントの千原ジュニアさんの愛車だということで、認定証授与式には千原ジュニアさん本人からのお祝いコメントも披露されていた。
S&COMPANYでレストアされた2台は、内外装も機関も申し分ないクオリティで完成されているだけでなく、現代の道路事情でもデイリーユースできる旧車に仕上げられていた。オーナーの千原ジュニアさんは、都内で家族を乗せてドライブしたり、普通にお出かけに使っているという。
注目すべき点は、この2台がけっしてオリジナルにこだわらず、絶妙に乗りやすく使いやすい仕様でレストアされているというところ。レストモッドというほどエキセントリックな変更ではないけれど、オリジナルの良さを残しながらオーナーの好みを汲み取ったレストアは、センスの良さやオーナーとの信頼関係が感じられた。
同社代表の鹿田氏自身、1989年式メルセデス・ベンツ560SLを所有するなど旧車が好きだというのもあるが、あえて難易度が高く設備投資も必要な『テュフ ラインランド ジャパン クラシックカーガレージ』認証を目指したのは、一人の車好きとしての思いがあったからなのだろう。
「周りの若い人で、旧車に乗ってみたい、旧車がカッコイイと言う人が本当にたくさいんいます。でも、何年もかけてレストアして、オリジナルはいいんだけど結局は普段乗りできなくて手放すことになったり、修理してくれるところがないから維持できないとかって話も良く聞くんです。フルオリジナル至上主義とか、敷居が高いとか、何年も時間がかかって萎えてくるとか、そういった日本での旧車の概念を覆したいって思ったんです。今年のSEMAショーなんかでも旧車の出展がすごく増えてるし、製造廃止の部品も3Dプリンターで作ったり、新しい技術やアイデアを取り入れたレストレーションが世界的にも進んでいます。これまでカスタムも海外の情報をキャッチしながら作ることをやってきたので、レストアもいろんな先進的なエッセンスで、熟練の職人じゃなくてもできること、もっとスムーズにもっとスピーディーに、気軽に楽しく旧車に乗れる環境を作っていけたら、と考えています」
テュフ ラインランド ジャパン クラシックカーガレージの認証を機に、鹿田代表は『S&COMPANY Classiche』(エスアンドカンパニー クラシケ)として同社のレストアサービスを全国的に展開する。自社開発したフロントガラス用プロテクションフィルム「アーマーテック」は、飛び石の防止をはじめ紫外線カットや撥水効果など、旧車を守る強力なアイテムでもあり、こういったプロダクトを複合的に組み合わせて、日常使いでガシガシ乗れるクラシックカーを1台ずつオーナーと生み出していく。
文・写真:桑野将二郎Words and Photography: Shoujiro KUWANO
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