【プロ野球】憧れの坂本勇人を追いかけて武岡龍世が選んだ故郷から1000キロ離れた地での挑戦

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【プロ野球】憧れの坂本勇人を追いかけて武岡龍世が選んだ故郷から1000キロ離れた地での挑戦

11月18日(火) 10:00

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ダイヤの原石の記憶〜プロ野球選手のアマチュア時代

第18回武岡龍世(ヤクルト)

徳島県吉野川市出身の武岡龍世が、地元から1000キロ以上も離れた地を「挑戦」の場に選んだのには大きな理由があった。

県外選手の多い八戸学院光星(青森)でも「四国からは僕が初めてだと思います」と言いながら、武岡はこう語ったものだ。

「坂本選手みたいになりたいと思って光星に来ました」

八戸学院光星時代、東北ナンバーワン遊撃手と称された武岡龍世photo by Ohtomo Yoshiyuki

八戸学院光星時代、東北ナンバーワン遊撃手と称された武岡龍世photo by Ohtomo Yoshiyuki





【1年春からレギュラーとして活躍】同校OBで巨人のドラフト1位指名を受け、今もなおプロの一線で活躍する坂本勇人に憧れ、武岡が縁もゆかりもない雪国の高校を強く意識するようになったのは、吉野川市立鴨島第一中1年の頃だった。徳島ホークス(ヤング)でプレーしていた当時から、彼は遠く離れた青森の地に思いを馳せていたのである。

ちなみに、高校在学中の武岡のために、両親は徳島の実家から車で約18時間もかけて応援に駆けつけたというのだから、一家をあげての「挑戦」だった。

憧れの場所にたどり着き、夢を追いかけ続ける武岡は、東北を代表する強豪校ですぐさま遊撃手として頭角を現した。

1年春からスタメンに名を連ね、着実に成長を遂げていった。2年夏の青森大会では2番打者として打率5割を記録し、驚異的な出塁率を誇った。また2本のアーチを放ち、チームトップの12打点を挙げるなど、甲子園出場の原動力となった。

聖地でもその打撃センスは光った。明石商(兵庫)との初戦では2安打2打点の活躍を見せ、卓越したバットコントロールは多くの注目を集めた。

新チームになってからも、武岡の放つ存在感は揺るがなかった。主将という肩書が加わったことで、その存在はさらに大きくなり、まさにチームの精神的支柱へと成長していった

「夏を経て緊張することがなくなりました。ヒットや守備でのエラーも含めて、甲子園でいろいろと経験できたのは大きかったです」

その言葉どおり、打席での落ち着き、守備での堅実さ、多くの要素で安定感を感じさせる選手になっていった。

【東北ナンバーワン遊撃手に成長】2年秋の東北大会。初戦(2回戦)では、3回表にタイムリーヒットを放つなど2安打の活躍を見せ、さらに2つの盗塁も決めた。武岡の脚力は、打撃や守備と並ぶ大きな武器であり、チームにとっても勝利に欠かせない"攻撃力"のひとつとなっていた。

50m走は5秒9。中学時代は陸上部にも所属し、100m走で徳島県2位に輝いた実績を持つ。武岡本人も、その"足"という能力を生かしたプレーこそが、「本来のスタイル」と言ったものだ。

「長打あり、単打あり、そして足を生かしたプレーが持ち味だと思っています」

東北大会決勝では先制の2ラン本塁打を放った。さらに打棒は止まらず、その後もダメ押しの一打となるタイムリー三塁打をセンター後方へ放ってみせた。

「外角高めの直球を強く振れた三塁打が理想的な打撃です」

試合後の武岡は、確かな自信をつかんだ様子でイメージどおりのスイングを振り返った。

ユニフォームの背中には『6』の数字が浮かぶ。

憧れの先輩も背負った『KOSEIの6番』をつけることに、武岡は「自分でいいのかな......」と思う瞬間があったという。

一方で「責任感はあります」と言い切り、何事にも左右されない強い意志と自覚をにじませた。そんなリーダー気質をのぞかせながら、東北ナンバーワン遊撃手として、翌2019年の選抜大会に出場。

【高校日本代表の不動の遊撃手へ】3年夏にも3季連続となる甲子園出場を果たし、智弁学園(奈良)との2回戦では自身初となる聖地でのホームランを放つ。チームのベスト8進出の中心として存在感を示した。

甲子園での活躍は、U−18ベースボール・ワールドカップのメンバー選出へとつながった。高校日本代表に合流した当初は控えに回っていたが、大会直前の大学ジャパンとの壮行試合では、9回表に代打で出場し、右越えの二塁打を放ってチームからの信頼をつかんだ。

韓国・機張(キジャン)での本戦では、初戦から指名打者としてスタメン出場。さらに南アフリカ戦ではセカンドとライト、アメリカ戦とチャイニーズ・タイペイ戦ではサードを務め、ユーティリティープレイヤーとしての能力も存分に発揮した。

パナマ戦からは、不動のショートストップとして起用された。タイブレークにもつれ込んだ韓国戦の延長10回表には、1死二、三塁の好機で高めに浮いたスライダーを弾き返し、右越えの2点タイムリー二塁打を放った。試合こそ敗れたものの、武岡の勝負強さと鍛えられたバットコントロールは大いに輝きを放った。

結局、武岡は全試合にフルイニング出場。日の丸を背負って戦い抜いた経験は、彼にとって大きな財産となった。

「外野を守ったのは今回が初めてでした。セカンドも、小学2年の時に少し守ったくらいですかね。ポジションを含め、これまでに味わったことのない経験をさせてもらいました。打撃面では、外国人投手特有のボールに対して、しっかりバントができたことが今後のプラスになると思います。本当にいい経験になりました」

積み上げてきた経験をプロの世界で試したい──そう思うのは、ごく自然な流れだったのかもしれない。大学進学を考えた時期もあったというが、最終的には自分の気持ちに素直に従った。2019年のドラフト会議でヤクルトから6位指名を受けた武岡は、プロ6年目となる2025年シーズンも変わらずグラウンドに立ち続けた。

「プロ志望届を出します」

高校日本代表としてプレーした韓国の地。試合後、球場から移動のバスへ向かう坂道を歩きながら、武岡が熱量たっぷりに、そして力強く発したあの言葉は、今でも忘れられない。

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