【プロ野球】ヤクルト・育成出身のアンダースローの成長記青柳晃洋のボールが教えてくれたプロで生き抜くリアル

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【プロ野球】ヤクルト・育成出身のアンダースローの成長記青柳晃洋のボールが教えてくれたプロで生き抜くリアル

11月17日(月) 7:00

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ヤクルト投手陣の未来を担う剛腕とサブマリン(後編)

下川隼佑は神奈川工科大から「ドラフトで指名されることを目標に」と、独立リーグの新潟オイシックスに入団。チームは昨年からイースタン・リーグに加入し、そこで下川は奪三振のタイトルを獲得。そして今年からヤクルトのユニフォームに袖を通すことになった。

今季2勝をマークしたヤクルト・下川隼佑photo by Sankei Visual

今季2勝をマークしたヤクルト・下川隼佑photo by Sankei Visual





【青柳晃洋とのキャッチボール】由規コーチは下川について、「独立の時も見ていたので、どんな選手かはわかっていました」と言って続けた。

「彼は何も言わなくてもコツコツやれるタイプなので、あまり心配することはなかったですね。二軍では、うまくいかなかった時に何がダメだったのかをしっかり反省して、次に生かす。その繰り返しを毎日やっていました。そのたびに新しい発見や収穫があって、『もっと上へ』という気持ちが強い選手です。一軍で2勝したのはすごいことなんですけど、それも納得できますよね」

下川は今年2月、一軍の沖縄・浦添キャンプに参加。オープン戦にも登板したが、開幕支配下は叶わなかった。

「キャンプで支配下をつかみきれなかったので、ちょっと逃しちゃったかなと......。育成指名でしたし、年齢的にもチャンスが多くあるわけじゃない。でも、気持ちを切り替えてシーズンに入りました」

二軍では先発として開幕から5試合に登板し、2勝1敗、防御率1.80と安定した投球を見せた。5月1日に支配下登録されると、1カ月後の6月1日に一軍へ昇格。その日のDeNA戦で、先発のマウンドを任された。結果は4回を投げて3安打2失点。勝敗はつかなかった。

翌日に登録を抹消され、その後、約3カ月を二軍の戸田球場で過ごすことになる。8月15日には「『タイミングが合えばお願いします』と頼んでいました」と、今季シーズン途中にヤクルトに加入した同じ変則投手の青柳晃洋とのキャッチボールが実現した。

下川は青柳のボールを捕るたびに「うわっ」「うおっ」と声を上げ、最後は青柳が「オレ、明日、先発だから(笑)」と、キャッチボールは終わった。

「球の強さやキレなど、『こんなボールがあるのか』と驚くことばかりで、本当にすごいなと思いました。いろいろアドバイスをもらって感じたのは、青柳さんは練習の引き出しがとても多いということです。自分の状態を見て、今日はこれをやると目的を持って取り組んでいる。自分はこれまで毎日同じ練習を繰り返してきたので、そういうやり方もあるんだなと勉強になりました」

【念願のプロ初勝利】その後、下川は8月20日に一軍再昇格を果たすと、同31日の広島戦で先発。5回を投げ8安打を許すも3失点と試合をつくり、プロ初勝利を手に入れた。

「中継ぎでガムシャラに投げて、また一軍で先発させてもらえて......ヒットもたくさん打たれて、内容はアレでしたけど、友だちや知り合いも神宮に来てくれていたので、すごくうれしかったですね(笑)。9回表は、点差もあったので安心しきっていました(笑)」

10月4日の広島戦では、6回を3安打1失点と好投。プロ2勝目を挙げた。

「高津(臣吾)監督の最後の試合でしたし、シーズン最終戦に登板させてもらえたのは自分にとってすごくいいことなのかなと思って、いい形で終われるように頑張りました。今年、一軍で投げられたのは大きかったです。自分の持ち味は真っすぐで、いい時はその球で打ち取れるのですが、打たれたのもその球が多かった。来年は真っすぐの強さに自信を持って投げられるようにしたいですね」

フェニックス・リーグでは「これまで課題としてきたクイックモーションと緩急の使い方を克服しないと、一軍定着は難しいと再認識しました」と語り、重点的に取り組んだ。登板した3試合では2試合が無失点、残る1試合も5回2失点と、先発の役割を果たした。

その下川だが、練習以外の時間はいつも穏やかで、周囲を平和な気持ちにさせてくれる。

「まわりの人にかわいがられて、少し甘やかされて育ってきたので、こういう感じになりました(笑)。でも、マウンドでは気持ちを前面に出して投げるようにしています。新潟にいた時に『打者と喧嘩するつもりで投げろ』と教わって以来、実際に喧嘩をしたことはないですけど、そのくらいの気持ちで勝負しています」

ヤクルトの下川隼佑(左)と廣澤優photo by Shimamura Seiya

ヤクルトの下川隼佑(左)と廣澤優photo by Shimamura Seiya





【いずれは同じ舞台に立ちたい】下川は自身の未来予想図についてこう話した。

「キャンプに合わせて、万全な状態でしっかりアピールして、開幕ローテーションに入れるようにやっていけたらと思います。数字については難しいですね。まずは今年より多く、一軍で登板したいです」

廣澤優は下川の存在についてこう語る。

「アンダースローは日本では希少だと思いますし、そのフォームで投げられることがすごいです。さらに、その投げ方でプロの世界に入ってくるのはもっとすごいことで、尊敬しかないです。下川さんはキャンプから一軍で、それはすごく刺激になりました。自分はまだ成長過程だったので勝負はできなかったのですが、いずれは同じ舞台に立ちたいと思いながら見ていました」

一方、下川は廣澤についてこう話した。

「とてもフレンドリーで、初めの頃から仲良くなったというか。すごく体も大きいですし、球も速くて自分にないものを持っている。すごい人だなと尊敬しています。自分が言えることじゃないですけど、支配下になると思います。それくらいすごいピッチャーです」

11月、下川は松山での秋季キャンプに参加して鍛錬に励んだ。廣澤は15日に開幕したアジアウインターリーグ(台湾)で腕を磨いている。

来季、投手として対照的なスタイルのふたりがヤクルト投手陣のなかに割って入れば、面白いシーズンになるはずだ。期待は膨らむばかりだ。

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