『ウマ娘』では「ウマ娘オタク」のアグネスデジタル芝、ダートを問わない万能ぶりを示した異次元の末脚

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『ウマ娘』では「ウマ娘オタク」のアグネスデジタル芝、ダートを問わない万能ぶりを示した異次元の末脚

11月16日(日) 18:00

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蘇る名馬の真髄

連載第22回:アグネスデジタル

かつて日本の競馬界を席巻した競走馬をモチーフとした育成シミュレーションゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)。2021年のリリースと前後して、アニメ化や漫画連載もされるなど爆発的な人気を誇っている。ここでは、そんな『ウマ娘』によって再び脚光を浴びている、往年の名馬たちをピックアップ。その活躍ぶりをあらためて紹介していきたい。第22回は、稀代の「オールラウンダー」として芝とダートの両方でGⅠを制したアグネスデジタルをピックアップする。

2000年のGIマイルチャンピオンシップで競馬ファンをアッと言わせる勝利を飾ったアグネスデジタルphoto by Sankei Visual

2000年のGIマイルチャンピオンシップで競馬ファンをアッと言わせる勝利を飾ったアグネスデジタルphoto by Sankei Visual



とびっきりのオタク気質で、自分が追いかける"推し"のためならどんな努力もいとわない。『ウマ娘』のアグネスデジタルは、そんな性格の持ち主だ。

"推し"の対象となるのは、あらゆるウマ娘という生粋の「ウマ娘オタク」であるアグネスデジタルは、ウマ娘を愛するあまり、芝とダート両方のレースに出走し、たくさんのウマ娘を間近で拝みたいがために鍛錬を重ねる。その結果、どちらのレースでも活躍できるオールラウンダーとなっていく――。

この特殊なキャラクターは、モデルとなった競走馬・アグネスデジタルから連想されたもの。同馬は1999年〜2003年に現役生活を送り、芝のGⅠを4勝、ダートのGⅠを2勝(地方交流GIを含む)する活躍を見せた。それこそ、今で言う"二刀流"を実現した名馬だったのである。

そんな同馬にとって、オールラウンダーとしての才能を初めて世に知らしめたレースがある。2000年のGⅠマイルチャンピオンシップ(京都・芝1600m)だ。

この日のアグネスデジタルは18頭中13番人気。完全に"伏兵扱い"だった。それもそのはずで、同馬は前年の9月にデビューして14戦5勝の戦績を残していたが、その勝ち星はすべてダート。芝での勝利は一度もなかったからだ。

ダートでは地方交流戦を含めて重賞3勝を挙げて世代上位の力を持っていたが、芝ではGⅡ、GⅢで3着になったのが最高。一線級の強豪マイラーが集うこのGⅠでは、「さすがに通用しない」という見方が大勢を占めた。

レースがスタートすると、アグネスデジタルは後方3番手のポジションにつける。ダート戦では前目の位置を取ることが多かった同馬だが、このレースでは後ろからレースを進めることになった。やはり芝のスピードについていけないのか。そんなふうに見ていた人も多かっただろう。

3コーナーから4コーナーに差しかかっても、依然としてポジションは変わらない。アグネスデジタルは後方3番手を進み、前には15頭のライバルがいる状況だった。

直線に入ると、好位の内を運んでいたダイタクヤマトが先頭に立ち、その他のライバルたちも次々にスパートをかけていく。一方で、アグネスデジタルはまだ後方の位置取り。なおかつ、直線入口で進路が狭くなり、なかなか追い出せない。形勢は絶望的だった。

レースは、はや残り100m。先頭争いに目を移すと、中団内から抜け出してきたダイタクリーヴァが同じ勝負服のダイタクヤマトをかわして敢然と先頭に立った。

その時だった。大外からアグネスデジタルが飛んできたのである。別次元の末脚を繰り出し、外から一気に襲いかかってきたのだ。

直線に入ってしばらく追い出せなかった同馬だが、その後に進路が開くと、すぐさまエンジン全開。凄まじい加速とともに前との差を詰めたのだ。勝利目前と思われたダイタクリーヴァは、一瞬のうちに並ばれてかわされた。

歴戦のトップマイラーたちを蹴散らして、先頭でゴール板を通過したアグネスデジタル。この結果に場内は静まり返った。「まさか芝でこんな末脚を繰り出すとは......」。ほとんどの競馬ファンがそう思ったのではないか。

この日を境に、同馬はオールラウンダーとしての実績を積み上げていく。そして、驚愕のGI制覇を果たした翌年の秋に、地方交流GIのマイルチャンピオンシップ南部杯(盛岡・ダート1600m)、GI天皇賞・秋(東京・芝2000m)、海外GIの香港カップ(香港・芝2000m)を制し、さらに年が明けた2月のGIフェブラリーS(東京・ダート1600m)も勝って、GI4連勝を飾った。

ダートと芝、地方や海外など、ありとあらゆる条件のGIを制する偉業を成し遂げたアグネスデジタルは、まさに競馬界の常識を覆す"異能"の存在だった。

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