今回は喜多方ラーメンを東京で初めて出した店へ
「もやしソバ」をこよなく愛するピエール瀧が、名店をめぐりながら、もやしソバとは何なのかを考えたり考えなかったりするこの連載。喜多方ラーメンといえば、大きなチャーシューがのっているイメージがありますが、それだけじゃありません!もやしソバだってあるんです!!そして今回行った店はすごかった!!!
***
――瀧さん、日本三大ラーメンってなんだか知ってます?
ピエール瀧(以下、瀧)
札幌ラーメンでしょ。で、博多ラーメン。あとは......なんだろう?
――じゃーん!福島の喜多方ラーメンです!
瀧
じゃーん!の意味わかんねえけど、そうなんだ。
――で、今回はそんな喜多方ラーメンで、もやしソバがあるお店。しかも、東京で初めて喜多方ラーメンを出したお店。それがここ東京・板橋の「喜多方屋本店」です。
瀧
東京で初めて喜多方ラーメンを出した店!?歴史もすごいじゃん!
東京・板橋の「喜多方屋本店」
――では、入ってみましょう。
瀧
おじゃましまーす。まずはメニューを見てみよう。うわ!もやしソバにめっちゃバリエーションがある。「もやしそば」(860円)、「もやしニンニク」(920円)、「もやしこってり」(920円)、「もやしこってりニンニク」(980円)、「中辛もやしそば」(1050円)、「大辛もやしそば」(1100円)だって。これは迷うなー。
――メニューに「ちゃあしゅうプラスできます(1枚200円)」って書いてありますよ。ちゃあしゅうおいしそうですね。いいですね。
お店の人
いらっしゃいませ。ご注文はどうなさいますか?
瀧
じゃあ僕はもやしこってりニンニクをお願いします。
――僕は中辛もやしそばをお願いします。瀧さん、ちゃあしゅうもプラスしちゃいましょうよー。
瀧
そうね。じゃあ、それぞれちゃあしゅうを1枚プラスでお願いします。
お店の人
はい。承知しました!
――あれ、餃子は5こ入り(550円)と6こ入り(660円)の2種類ありますね。珍しい。
瀧
これは、ひとりだったら5こ入りを頼んで、ふたりで来たら6こ入りを半分ずつに分けるとか用なのかな。
――なんか親切ですね。
お店の人
お待たせしました。
「もやしこってりニンニク」(980円)
瀧
ありがとうございます。では、いただきます。具は何が入ってるのかな。ええと豚肉、ニラ、もやしね。で、麺は平打ちの太麺で少し縮れてる。スープは醤油味。味つけは全体的に少し濃いめかな。でもうまい!この麺のモチモチ感がいいね。そして、ニンニクこってり味はもやしにとても合う。スタミナがつきそうな味わい。
――風邪っぽいときなんかに食べると元気が出そうですね。中辛もやしそばは、ピリ辛な感じです。でも、あんかけじゃないバージョンですね。
瀧
確かにそうだわ。
――あと、ちゃあしゅうがめちゃくちゃうまいですよ!プラスして大正解です。
瀧
どれどれ。確かにうまい!読者の人にもぜひ、このちゃあしゅうを食べてもらいたいんだけど、普通のもやしそばには入っていないから、プラスすることを忘れないようにしてほしいね。
店主の斉藤裕さん(以下、斉藤さん)
お味はいかがですか?
瀧
おいしいです!やっぱり、喜多方ラーメンというとこの太い麺が特徴ですよね。
喜多方ラーメンといえば、この平打ちの太麺が特徴!
斉藤さん
そうですね。もう昔からこの平打ち麺なんです。うちは50年くらい前からやっているんだけど、その頃は宅急便がないから鉄道で麺を送ってもらってたの。でも、地元の店に届けるような感じで袋に入っていなかったから、駅に取りにいったら乾いてて使い物にならない。それで「1個ずつ袋に入れてくれ」って言ったら「ラーメンを入れる特別な袋はないんだよ。焼きそば用のならあるけど」っていうことで、焼きそば用のビニール袋に入れて送ってもらうようになったんです。
瀧
ラーメンの麺を袋に入れるようになったのは、この店がきっかけなんですか。すごいな。ちなみに、ここが東京で喜多方ラーメンを出した最初の店だと聞いたんですが......。
斉藤さん
そうなんですよ。最初は屋台でやってたの。昼はトラックの運転手をしてて、夜は屋台のラーメン店。屋台は東京・高島平のあたりに出していたんです。
瀧
それが50年くらい前のことなんですね。
斉藤さん
そうです。
店主の斉藤裕さんいわく「本場・福島県の喜多方から送られてくる麺で提供しています!」とのこと
瀧
じゃあ、喜多方ラーメンを東京の人に知らしめたのは、このお店のおかげということですね。それまで、喜多方という地名を聞いてピンとくる人は少なかったんじゃないですか?
斉藤さん
喜多方というのは蔵が多い町なんです。でも、あまり知られていなかった。そこで地元の写真館の人が蔵の写真を撮って展覧会とか開いていたら、NHKの『新日本紀行』が喜多方の町を取材しに来て放送したんです(1975年)。そうしたら観光客がたくさん来るようになって、その人たちは蔵を見た後に地元のラーメンを食べて帰っていった。
瀧
寒い時期なんかはラーメン食べると体が温まりますからね。
斉藤さん
で、市役所の人がテレビ局の人に連絡したら、NHK以外のテレビ局も取材に来るようになって、喜多方のラーメンが全国的に有名になったんですよ。
瀧
じゃあ、喜多方ラーメンは今でいうメディアミックスがきっかけだったということですか?『新日本紀行』が放送されたことで人がたくさん訪れるようになって、みんながラーメンを食べるようになった。「じゃあ地元のラーメンを喜多方ラーメンと呼ぼう」と仕掛けたと。
斉藤さん
そうです。それで、東京でも喜多方ラーメンが食べられるということで、うちにもたくさん取材が来ました。
瀧
なるほど。そして、全国的に喜多方ラーメンのお店ができるようになって、それが日本三大ラーメンまで上り詰めたっていうことですね。すごい話だな、全然知りませんでした。
――なんか、そういう歴史を聞くとものすごく価値あるものを食べてるように感じますね。
瀧
そうだね。心して食べないと。
――喜多方ラーメンにきたか(た)いがありました。
瀧
全然うまくないよ。でも来たかったお店でうまかったよ(笑)。
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■喜多方屋本店
東京都板橋区板橋3ー27ー3
03ー3964ー5874
※営業日時、メニュー、価格などは変更になる場合があります
※この連載は隔号で掲載予定です
※おいしいもやしソバなどの情報は
【moemoyashisoba@gmail.com】
まで
■ピエール瀧(ぴえーる・たき)
1967年生まれ、静岡県出身。ミュージシャン、俳優、声優、タレント。
「無駄こそ宝なり」が信条。好物はもやしソバ。
公式Instagram【@pierre_taki】
構成/TAKA-HO
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