緒方孝市の広島総括前編(全3回)
2025年シーズンはリーグ5位に沈んだ広島。その戦いぶりについて、長らく広島で活躍し、監督として球団史上初のリーグ3連覇を成し遂げた緒方孝市氏に総括してもらった。前編は、投手陣について。
6勝14敗と大きく負け越した広島の森下photo by Sankei Visual
【先発は三本柱、若手も誤算だらけ】――まずは投手陣からお聞きします。先発投手陣は、床田寛樹投手、森下暢仁投手、大瀬良大地投手ら柱として計算していた投手が貯金をすることができませんでした。
緒方孝市(以下:緒方)先発の三本柱で借金が13は大誤算でした。主力の投手たちですし、本来であれば逆の数字にしてほしいくらいです。この3人はカード3連戦の頭に投げる投手たちですし、相手チームもエース級の投手が出てきてどうしても厳しい戦いになりますが、それでも森下の6勝14敗という数字は痛かったです。
防御率は2.48と悪くないのですが、投打の歯車のかみ合わせもありますし、エース級の投手との投げ合いで勝てませんでした。三本柱でこれだけ負け越しているということは3連戦の初戦の勝率も悪いわけで、そうなるとなかなか勝ち越せなくなりますよね。
――森下投手が大きく負け越してしまった要因は?
緒方ある程度試合は作るのですが、どうしても粘りきれないんです。先制される試合がかなり目につきましたし、逆に味方が先制してくれても直後のイニングで失点してしまうことが多かった。そうなると、試合の流れを持ってこられないんです。森下のペースで投げきれた試合はほとんどなかったんじゃないですか。
それと大瀬良の場合は、(10月3日に)右肘のクリーニング手術をしていますし、森下も右肩の違和感で(8月24日に)登録抹消となり、シーズンの最後まで戻ってこられませんでした。来シーズンに向け、まずはコンディションをしっかり整えることですね。
床田はシーズンを通してある程度いいピッチングを見せていましたが、昨年と同じように夏場に点を取られて防御率を大きく落としました。オフにスタミナ面を見直すことも必要かもしれません。
――そのほかの先発投手陣の課題を挙げるとすれば?
緒方先発ローテーションの頭数が足りませんでした。その要因として、まずは九里亜蓮がFAで移籍したことで、本来であれば 四本柱だったものが三本柱になった。九里の穴を埋めることが大きな課題であったにもかかわらず、特に夏場以降はローテーションの頭数が揃いませんでした。
ともにドラフト1位の常廣羽也斗や斉藤優汰の投球を見ましたが、「まだまだ」という感じでした。そのほかの右ピッチャーでいえば、遠藤淳志、ジョハン・ドミンゲス、アドゥワ誠など......先発の右ピッチャー不足が課題として残りました。
――常廣投手は、まだ力不足?
緒方大卒2年目ですし、本来であれば先発ローテーションの枠に入ってきてもらいたかった投手ですが、オープン戦からなかなか結果を出せずにいいスタートがきれませんでした。どのタイミングで一軍に上がってくるのかと注目していましたが、二軍でもなかなかいい内容の投球が見られませんでしたからね。
一軍でも、思いどおりのボールが投げられていなかった。しっかりと指にかかったボールは真っすぐも一級品ですし、空振りが取れるフォークボールもあったりとポテンシャルは感じさせるものがあります。ただ、シュート回転して抜ける球があったり、真っすぐがコントロールできていません。フォークボールも真っすぐと同じで、高めに抜ける球が多かった。肩が開いてしまい、腕が横振りになることが要因だと思います。オフに投球フォームを見直さなければいけないでしょうね。
【リリーフ陣も層が薄くなった】――リリーフ陣はどう見ていましたか?
緒方昨シーズン、9月の上旬まで首位にいた一番の要因は、やはり投手陣の力が大きかったと思うんです。チーム防御率も夏場くらいまではリーグトップでしたし(最終的にはリーグ3位の2.62)、先発、中継ぎ、抑えの形がしっかりできていましたから。今シーズンの場合は、先発陣と同様にリリーフ陣も苦しい部分がありました。
開幕時は9回が栗林良吏、8回がテイラー・ハーンもしくは島内颯太郎と勝ちパターンが決まっていましたが、シーズン中盤くらいになると、栗林やハーンらは登板するたびに失点してしまうなど、勝ちきれない試合が増えていきました。そうなると、どうしても配置転換せざるを得ませんし、昨シーズンに中継ぎで活躍した黒原拓未がキャンプで膝を故障し、結局一軍のマウンドに立てなかったということも、すごく痛かったと思います。
――塹江敦哉投手の不振も響いた?
緒方今シーズンは制球が定まらずにフォアボールが多く、昨シーズンに活躍した姿が影を潜めてしまいましたよね。黒原と塹江という左の中継ぎ2枚が抜けて中継ぎ陣の層がかなり薄くなりましたし、森浦大輔や島内らにしわ寄せがいき、負担がかかってしまいました。
シーズン終盤は8回が島内、9回が森浦と形は決まったのですが、そこにつなぐまでが課題でした。栗林を7回に投げさせたり、リードされた場面で使ったり、起用法については非常に苦労したと思います。
ハーンにしてもそうです。彼の最大の武器は真っすぐなのですが、日本で2年目ということもあって各球団のバッターに対応されていました。本来は8回限定のピッチャーですが、前倒しで7回などに投げさせたり、やりくりに苦労していました。やはり先発では九里、中継ぎでは黒原の穴が埋められなかったことが大きく響いてしまいましたね。
(中編>>)
【プロフィール】
緒方孝市(おがた・こういち)
1968年生まれ、佐賀県鳥栖市出身。1986年に広島東洋カープからドラフト3位で指名され入団。2008年まで主に外野手として活躍し、盗塁王のタイトルを3度、ゴールデングラブ賞を5年連続で受賞した。2009年に現役を引退後、コーチとして後進の指導。2015年に監督に就任すると、2016年から18年にかけてチームを球団史上初の三連覇に導いた。2019年に退任後、野球評論家などで活躍中。
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