緒方孝市の広島総括後編(全3回)
(中編:小園海斗、2人の外国人の活躍を称賛一方で広島・野手陣の昨季から残る課題も指摘した>>)
緒方孝市氏の広島の総括の後編では、一定の活躍を見せた若手選手を中心に語ってもらった。
41試合を投げて防御率2.88、1勝1敗1ホールドの成績だった岡本 photo by Sankei Visual
【成長が見えた若手投手たち】――シーズンを通して投手陣は苦しい状況が続きましたが、髙太一投手がプロ初勝利を挙げるなど、ポジティブな部分もありました。
緒方孝市(以下:緒方)髙のほかにも、森翔平、玉村昇悟らに多くのチャンスを与えられ、ある程度の結果を残しましたよね。森は先発ローテーションでも投げましたし、貴重な経験を積めました。シーズン中盤には安定感を欠くこともありましたが、いろいろと感じることができたはずです。
玉村は昨シーズンくらいから試合を作る能力は見せてくれていたのですが、課題はやはりスタミナです。特に試合の中盤に球数が増えてくると、真っすぐのキレが悪くなったり、変化球が高めに浮いてしまってつかまる傾向があります。そこをクリアできれば、来シーズン以降は先発ローテーションとして目途がつくと思います。
今シーズンが実質1年目の高は、投げるごとにいい投球内容を見せてくれましたし、本人も手応えをつかんだのではないでしょうか。彼は真っすぐが持ち味で、特に右バッターのインサイドを突く真っすぐはかなり自信を持っているはず。バッターの反応を見ても、かなりの球威、角度を感じていると思います。あとは外の変化球をコントロールできるようになれば、投球の幅が広がって安定して試合を作れるようになるでしょうね。
――そのほかに、明るい材料を挙げるとすれば?
緒方ドラフト3位ルーキーの岡本駿がいい投球を見せてくれたということと、ベテランではありますが中﨑翔太の復活です。リリーフ陣が薄くなったところをカバーしてくれましたよね。
特に岡本は、ストレートのキレがあってコントロールがよく、度胸もある。独特のツーシームは右バッターが非常に打ちにくそうにしていましたね。最初は点差の開いたラクなイニングでの登板だったのですが、結果を残していくうちに僅差の試合、そして勝ちパターンも任せられるくらいになりましたからね。ルーキーながら大きな戦力になったと思います。
後半は登録抹消されましたが、これはルーキーということもありますし、やはりスタミナの部分でしょうね。夏場に少し球速が落ち、コントロールが甘くなって失点するケースが見られましたから。ただ、1年目でこれだけ大きく貢献した投手ですし、来シーズンもかなり期待できるんじゃないですか。
――すでに計算できる投手と言ってもいい?
緒方そうですね。今後は配置転換も含めていろいろ考えているようなので、先ほど(前編で)課題として挙げた先発の右ピッチャー不足を解消するため、先発に転向する可能性もあると思います。まだ新人ですし、挑戦して可能性を追求することは成長にもつながりますから、いいことなんじゃないですか。
それと、支配下登録を勝ち取った辻大雅もいいですね。16試合に登板(防御率1.13)しましたが、度胸もあるし、非常にいいボールを投げます。ベース板の上で球威のある球で、バッターがタイミングを取りにくそうにしていたのが印象的でした。奪三振率も高いですしね(11.81)。まだ体は細いですが、これから鍛えて下半身の強さが出てくると球速もアップするはずですし、面白い存在になると思います。
【将来の大砲候補も】――一方、中村奨成選手は成績を大きく伸ばしましたし、大盛穂選手、ドラフト1位ルーキーの佐々木泰選手らは光るものを見せてくれました。
緒方特に中村はシーズン途中に一軍に上がってきて以降、シーズン中に成長していった選手ですよね。その大きな要因は、打撃フォームを変えたこと。彼にぴったりはまったのか、今までは力に頼っていたバッティングが、しっかりと自分のタイミングでボールを呼び込めるようになりました。
センターから逆方向に打球を運ぶことが多くなり、彼が本来持っているバッティングセンスを発揮できるようになりました。もう7年目ですし、若手ではないんですが、「やっと出てきてくれたか」という存在なので、引き続き頑張ってほしいです。
外野手のポジション争いでは、当初は守備固めや代走要員だった大盛が存在感を示しました。今までは変化球に対して脆さがあったのですが、それを克服してある程度の打率を残しましたよね。彼が本来持っている長打力も含めてアピールできていたと思います。
――ルーキーの佐々木選手もシーズン終盤にアピールしていました。
緒方 15試合連続安打をマークしましたが、ルーキーでそれだけ打つのはすごいことです。1試合1本だとしても、それをコンスタントに続けていくことはなかなかできることではありませんし、彼のバッティングセンスのよさを感じました。
ただ、彼はオープン戦とシーズン中にそれぞれ故障して離脱しているんです。シーズンを通しての活躍とまではいきませんでしたし、来シーズンにレギュラーを期待するのはまだなのかなと。まずは1年間戦うための体力をつけなければいけませんし、守備にしても走塁にしても、まだまだ磨いていく必要があります。
それと、187打席に立ちましたが、ホームランが1本もなかった。どちらかといえば、ホームランを打ちたいタイプだと思うのですが、引っ張る打球がどうしてもラインドライブしてしまう。要因は、ヘッドが下がってしまうことを含めたスイングの軌道にあると思います。守備や走塁も含め、レギュラーをつかむためにはそうした課題をひとつひとつクリアしていかなければいけません。
――やはり長打力に期待している?
緒方チームとしてもそれを期待して彼を獲ったわけですしね。ただ、あまりホームランを求めすぎてしまうと、いい部分まで崩してしまうこともあります。今後一軍での打席を重ねていくなかで、どういうタイミングやポイントで打てば長打につながるのか、というものを探って作り上げていかなければいけません。
若手をはじめ、今年ある程度のアピールに成功した選手たちが、来シーズン以降どれだけレベルアップできるか。広島が巻き返しをはかるうえで、非常に大きなウエイトを占めていると思います。
【プロフィール】
緒方孝市(おがた・こういち)
1968年生まれ、佐賀県鳥栖市出身。1986年に広島東洋カープからドラフト3位で指名され入団。2008年まで主に外野手として活躍し、盗塁王のタイトルを3度、ゴールデングラブ賞を5年連続で受賞した。2009年に現役を引退後、コーチとして後進の指導。2015年に監督に就任すると、2016年から18年にかけてチームを球団史上初の三連覇に導いた。2019年に退任後、野球評論家などで活躍中。
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