あの迷路のようなクラシックカーの祭典、オート・エ・モト・デポカ・パドヴァにうっかり潜入したあげく、クラシックカーの迷宮に入り込んだマニアは多いはず。パリのレトロモビル、エッセンのテクノクラシケと並んでヨーロッパの三大クラシックカーショーと称されるが、交通の便、ホテルの用意など、かなり不便な面があったのも事実だ。そんなイベントが、様々なやり取りを経てボローニャへと移転したのは2年前のこと。ボローニャ展示会場といえば、ボローニャの中心部に位置し、空港も近いから、ヨーロッパ全土からのアクセスも最高。なによりセラミックなど大規模な展示会が長年開催されており、極めてよく整備されているから、少々の混雑など全く問題ない。
【画像】見て良し、買って良し。見どころ盛りだくさんの巨大イベント「オート・エ・モト・デポカ」の会場風景(写真50点)
そんな「オート・エ・モト・デポカ・ボローニャ」は、パドヴァ時代から数えると今回は42回目となる。当初は、”あのパドヴァの牧歌的雰囲気がよかった…”などの声も聞かれたが、今や人気はさらに高まり、土日ともなれば、その広い会場もぎゅうぎゅうとなる。今回は14のホールと4つのテーマルートに広がる23万5,000平方メートルの会場には5000台以上のクラシックカーがディスプレイされ大賑わいだった。
筆者が訪問したのは10月23日の初日。26日まで4日間開催されるが、この初日はいわば業界Dayとでも言おうか、開会式にはASI会長や、ご当地モーターヴァレー協会のトップであるダラーラのアンドレア・ポントレモリ氏なども駆けつける。ちなみにこの初日はチケットの価格も他の開催日と比較して2倍となるが、レアパーツの探し物があったり、”今年は一台買って帰ろう”などという意気込みのある方は、この初日の参加はマストだ。
今回は”内燃機関の誕生から最新の世界チャンピオン、フェラーリF1とホンダの伝説的な二輪ヘリテイジまで”という明確なテーマ設定がなされ、メイン会場他、各ホールでも連携した展示が行われたから、かなりのボリューム感であった。
「F1 75年の歴史」ではフォーミュラ史に刻まれた二つの時代を象徴するフェラーリが展示された。チューブラ・シャシー、ド・ディオン・リアアクスル、2基のツインチョークキャブレター&ツイン・イグニッション・エンジンを採用し、シンプルでありながら極めて実践的な一台として評価の高いフェラーリ500 F2(1952年)がメインホールに。このマシンでアルベルト・アスカリは1952年と1953年にドライバーズ世界選手権を連覇した。そして、その隣には、フェラーリF2007(s/n 262)が。キミ・ライコネンが2007年シーズン最終戦ブラジルGPで勝利を収め、ドライバーズ世界選手権を獲得したマシンだ。シューマッハの後に登場した初めてマシンであるが、マラネッロにドライバーズ世界選手権の王座をもたらした最後のマシンとして、アイコニックな存在だ。
当地ボローニャは2輪の世界でも重要な歴史があり、今なお大きな産業となっているのだが、今年のホンダの展示は圧巻であった。600平方メートルという巨大なスペースに38台もの象徴的なモデルが展示された。ホンダ・クラシックのヘリテイジを称え、技術的・レースにおける進化をたどった貴重な展示であった。イタリアのアテッサ工場から生まれた2ストローク(NS125R アドリアティコを含む)から、ルチオ・チェッキネッロのRS125GPやザルコのRC213Vといったグランプリレーサー。CR250MやCR500といった伝説のオフローダーから、CB750フォア、 VFR750R(RC30)、楕円形ピストンを搭載した革命的なNR750までが並び、高い人気を博していた。
何でもありの巨大イベントではあるが、回を重ねることにレイアウトも整理されてきており、迷わないように「4輪」、「2輪」、「パーツ/モデルカー」、「ミュージアム/クラブ」というように、各フロアへのルートが4色に色分けされている。パーツ類、マニュアルや書籍を並べたショップもたくさん並ぶが、ここボローニャでは、フェラーリやアルファロメオなどといったメジャーなもの以外に、ランチアやデ・トマソなどというちょっと外したブランドのものが大きく動くという。ここボローニャへやって来るビジターたちもそれを狙っているのだろう。
筆者が気になった車(モノ)たちといえば…
最新世代フィアット500のデザイナーでもあるロベルト・ジョリート氏率いるステランティスのヘリテイジハブからは、幻とも言えるアルファロメオ・スカラベオが復刻展示。事前に告知されていたとは言え、その戦闘的なモチーフを持つコンセプトモデルの実車を目にしたのはなかなかの感動だ。Tipo33の流れを引き継ぐ特別な一台でもあるし。
筆者の親友でもある、アドルフォ・オルシJr (マセラティのオーナーシップを獲得したのは彼の祖父であるアドルフォ・オルシ。この”Jr”は若くしてマセラティ・インディの命名も行っている)が、「クラシックカー・オークション・イヤーブック」通算30号発刊記念のカンファレンスを行ったのも気になるポイントだった。
この世界中で行われる自動車オークションに関するデータ(落札価格や、その個体がいつ他のオークションに出展されたか、など)を集めた年刊本がもう30冊にもなったとは感慨深い。30年前の自動車オークション界は、今では信じられないほど低調で、多くの人々がアドルフォに”そんな本を出してどうするんだ”と揶揄したものであった。それが大手自動車ブランドの広告の入る472ページもの”極厚本”に成長したのだから面白ではないか。そう、この年刊本はいつもこのオート・エ・モト・デポカで発表されてきた。
そしてイベントの特徴として、草の根的な活動が充実している点だ。各ミュージアムやメーカーによる展示だけでなく、ASIやACIといったクラシックー団体、そしてオーナーズクラブのメンバー達が大いに楽しんでいる。アマチュア達が手弁当で参加するという昔ながらの楽しみ方が今も健在であるのはうれしい。パビリオンの外には、安価に自分の大切な車やパーツを展示してFor Saleとする古き良きスワップミートの色合いが残っている。売れ残った車たちは、時間の経過と共にディスカウントされていったりもする。
会場で販売される車両の特徴として、まずはCambio Manuale、つまりマニュアル・ギアボックス車の人気ぶりだ。最近ではRuote Classicheなどの中古車相場価格リストも、マニュアルとオートマチックと別々に記載するようになった。だから、マニュアルの車はフロントガラスに大きくその旨記載される。
そして、走行距離数にも、以前よりこだわりが出てきたように感じる。かつてはあまり気にしていなかった傾向があり、走行距離より整備の状況次第という見立てであったが、距離計が信用できるヤングタイマーでは評価の仕方も変わってきたのか。こちらもフロントガラスに大きく距離数が記載され、アピールされるが、日本の感覚で見れば、さして低走行距離でもなかったりもするのだが…
筆者にとって興味深いのは、綺麗なフィアット130クーペや、アルフェッタなどごく普通の車たちが、手ごろな価格で並んでいる点だ。日本ではあまり目にしない、オペルやシムカなどが並んでいるのも楽しい。
莫大な出展車の中で、最もそそられたモデルというと、それは3万9000ユーロのプライスタグが付いたクヴェール・マングスタであった。当時、プロジェクトの進捗を取材したり、テストドライブしたりした、筆者にとって思い出のモデルだ。デ・トマソのエンブレムがフロントフードに付いていたのは愛嬌であるが。正直、マルチェッロ・ガンディーニの筆にはキレが少し足りなかったと当時は思ったが、ネオ・クラシックとして見ると不思議な味がある。こんなレアモデルを愛でるのも悪くない。
ランボルギーニのクラシック・ディビジョン、ポロストリコを覗いてみるなら、そこはOBやOGたちの”同窓会”であった。350GTの顧客デリバリー第一号車を前に、昔話に盛り上がっている。このところ少し体調を壊していたMr.ディアブロことルイジ・マルミローリもやってきてハナシは弾む。ご存じのように彼はディアブロのチーフエンジニアであるが、ボディワークの開発などでタッグを組んだセッキアもやってきた。フェルッチョ・ランボルギーニの通訳や海外との交渉も行ったイングリッド嬢はとても元気だ。
ポロストリコのスタンドで出会った皆さんは会場の平均年齢を押し上げたことは間違いないが、はたして彼らは筆者よりも実際、かなり元気であるのも間違いなかった!そんなイタリアの元気をもらって、会場を後にしたのだった。
文:越湖信一写真:越湖信一、オート・エ・モト・デポカ
Words: Shinichi EKKOPhotography: Shinichi EKKO, Auto e Moto dEpoca
Special Thanks: Barbara Papuzzi
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