観光地・熱海のまちには、海や温泉だけでなく、子どもたちを包み込むようなあたたかな学びの環境があります。幼稚園や保育園、こども園では、歌や遊びを通して英語に親しみ、「熱海を知る」体験保育で地元の自然や文化に触れます。さらに、地域の方々や企業も子どもたちの成長を支え、見守り続けています。「君たちは大人がちゃんと見ているよ」――齊藤市長の言葉には、まち全体で子どもを育てる熱海らしさがにじんでいました。
お話を聞いたのは…
熱海市齊藤栄市長
1963年3月生まれ。東京都出身。東京工業大学工学部土木工学科卒業、東京工業大学大学院修士課程(土木工学専攻)修了(うち、1986年~1987年に米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校へ交換留学)。1988年4月に国土庁(現国土交通省)入庁。その後、学校法人滋慶学園 勤務、国会議員(衆議院)政策担当秘書を経て熱海市市長に就任。現在5期目。
>>熱海市公式HP「市長の部屋」
―熱海には、「熱海こども園」のような、とても素敵な認定こども園がありますね。教育プログラムとしてはどのようなことに力を入れているのですか。
齊藤市長:
熱海は観光地ということもあるので、特徴の一つとしては英語教育ですね。
―外国人の観光客も多そうです。
齊藤市長:
そうですね。市内中学校では、英語の習熟度を測る目的で、中学2年時の1月と中学3年時の5月の2回、GTEC を実施しています。CEFR(Common European Framework of Reference for Languages:セファール)のA1レベル(英検3級から準2級程度)に達しているかどうかを測るものとして取り入れています。
また、就学前でいうと、公立の幼稚園、保育園、こども園にALT(Assistant Learning Teacher:外国語指導助手)を配置しています。
―就学前に、ですか?
齊藤市長:
そうです。年間16回から30回入れています。カード遊びや歌で英語に触れる機会を作ったり、そもそも色々な国があることを知るということから始めています。それと、就学前ということで言うと、「熱海を知る」という教育カリキュラムも取り入れていますよ。
―熱海を知る?
齊藤市長:
はい。園外での体験保育として行っていますが、例えば、「はつしま体験」は、熱海市にある離島を知ることと、船に乗るという体験をすることが目的です。他にも大湯間欠泉で、温泉の湧き出る様子を見たり、老人ホームに慰問し、老人と一緒に歌遊びをしたりもします。
―ALTを取り入れたり、体験保育も行ったりと、就学前教育は充実していますね。
齊藤市長:
カリキュラムを増やすのは、小中学校では難しいんです。すでに目一杯なので。その分、幼児教育の方が自治体の自由度があるので、郷土愛にも結びつく「熱海を知る」という取り組みを、幼児教育から取り入れることができています。一方で、市長を務めながら思うのは、熱海は学校以外の非行政の皆さんが、子どもたちにとても熱心なことが、特徴だろうと思っています。
―学校以外の非行政というと、地域の方々ですか?
齊藤市長:
そうですね。更生保護女性会や保護司の方々が、行政と密に連携をとっているんです。実は、熱海は子どもの非行率がとても低いんです。それも学校ももちろんですが、この方たちを中心に、何か非行のようなことがあれば、更生できるように、また日ごろからも子どもをちゃんと見守っているんですね。
―地域の温かさを感じますね。
齊藤市長:
それから、青少年健全育成会という、全国にどこでもあると思いますが、熱海はとても熱心で、毎年「熱海ジュニアグランプリ」というのをやっているんです。その年、頑張った子、スポーツやボランティア、英検に合格したとか、大体50~60人、その団体の名誉会長として市長名で表彰状を渡しています。表彰式の時に、壇上に上がるまで、みんなこう、硬い顔してるのですが、表彰状を渡すと、みんなニコっとするんですね。これって、すごく大事だと思っています。君たちは我々大人がちゃんと見守ってるよ、って。
―認めてあげるというのも大事ですね。
齊藤市長:
そう。認めて、見守っている、という大人の姿勢を子どもたちに伝えるということですね。あと、熱海ワイズメンズクラブという、地元の企業経営者などが集まるYMCA系の団体があって、そこが夏になれば、サマーキャンプ、冬になれば、スキー・スノボ教室、ドッジボール大会や英会話のコンテストなど催してくれるんです。毎年、これらの行事に多くの子どもたちが参加しています。
―地元の経営者の方々が主催してくださるんですね。
齊藤市長:
経営者と言っても、熱海は大きい会社はないので、旅館とかホテルのオーナー、お土産屋さんだったり、お饅頭屋さんだったり、皆さんそういう方々です。しかも、補助金なんて一円も入っていないんですよ。
―素晴らしいですね。
齊藤市長:
こういう非行政、地域の方々の、子どものための活動が、熱海は本当に盛んですね。熱海出身者で頑張っている若手の代表格が熱海富士、力士です。それから、鈴木芽吹くんという陸上選手。彼は駒澤大学の陸上部の主将をやって、今、トヨタ自動車の実業団で長距離ランナーとして活躍しています。先日の世界陸上にも出場していました。それからゴルフの渡邉彩香プロ。わずか3万人の街で、これだけ第一線で活躍しているスポーツ選手たちがいるのは、熱海の地域が子どもたちを見守る土壌があるからではないかなって、私は思っています。
取材・文/政治ジャーナリスト細川珠生
政治ジャーナリスト細川珠生
聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
(細川珠生)
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