連載:アナログ時代のクルマたち|Vol. 64フィアット・アバルト750ザガート シリーズⅡ

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連載:アナログ時代のクルマたち|Vol. 64フィアット・アバルト750ザガート シリーズⅡ

11月7日(金) 18:11

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一口にフィアット・アバルト750といっても、そのバリエーションは極めて多岐にわたる。もちろんその中でもっとも有名なのは、ザガートがボディを架装したフィアット・アバルト750ザガートだが、それとて大きくシリーズ1からシリーズ3まで存在し、基本的には殆んどハンドメイドでボディが架装されたことから、一目で判別することなど難しいし、ましてやGTあるいはコルサなど、エンジンチューンが異なるモデルも存在し、調べてみると実に奥が深い沼地に入り込む。

【画像】奥深きフィアット・アバルト750の世界(写真6点)

この車が誕生するのは1956年のことだが、その前年にフィアットがリリースした600が、そのベースであることはご承知の通りである。彼らがチョイスしたディーラーやカロッツェリアにクルマを供給し、オリジナリティーのあるボディを架装することで、市場にある種のインパクトを与える作戦を立てた。そして、ミラノを拠点としたフィアットディーラーのオヴィディオ・カペッリ(Ovidio Capelli)が、そのボディデザインをザガートに依頼するのである。

依頼したのが1955年7月。そしてザガートは僅か4カ月の後、依頼されたモデルを発表することになるのだが、その段階でアバルトは関与していないものの、後にこの車はアバルトとして認知されるようになったという。この時ザガートが作り上げたモデルは、ルーフが平らなデザインを持ち、後にダブルバブルあるいはイタリア語で「ドッピアゴッパ」と呼ばれる独特の形状をしたモデルではなかった。そして、このフラットルーフを持つモデルがアバルト750ザガート シリーズ1となるのである。

アバルト750ザガートは、言うまでもなくフィアット600をベースとし、ザガート・デザインによる粋なアルミボディと、排気量を750cc(747cc)に引き上げ、高度にチューンされたエンジンを搭載していた。ベースエンジンは633ccのティーポ100と呼ばれたもので、オリジナルのフィアット600では、22bhpであったが、アバルトに搭載された747ccは43bhpと、ほとんど倍近いパワーを誇っていたのである。

750ザガートの生産は1956年から60年まで続けられ、総数にして500~600台のモデルが生産されたとされている。有名なダブルバブルは、シャシー番号などから294台が確認されているそうだ。ザガートの工房には複数の生産ラインが存在したそうだが、これとは別に契約生産施設として、M.E.C.A.T.という会社が存在しており、この施設で誕生した750ザガートも数多く存在している。

4年間の生産期間中、微妙なデザイン変更が加えられている。ヘッドライト、フロントエアベント、クォーターウィンドウ裏のエアベント、メーター類、ウィンドウ素材、バンパー、バッジ、ダッシュボードスイッチ、シート、テールライト、内装トリム、外装トリム、ウィンドウトリム、雨どい、インジケーターライトなどに多くの違いが見られ、まさに多彩なバリエーションが存在するようにも見受けられるが、実際には750ザガートとしては前述した通りシリーズ1からシリーズ3までの3種である。

驚いたことに排気量僅か750ccのモデルながら、かなりの数がアメリカに渡り、レース愛好家の手によって、全米各地のヒルクライムやレースイベントに出場して活躍している。北米におけるフィアット/アバルトのインポーターは、当時ワシントンにあったルーズベルト・オートモビル・カンパニー。そして、そのオーナーだったフランクリン・D・ルーズベルト・ジュニアは、第32代アメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトの第5子であり、フィアットのインポーターである傍らで、ティーム・ルーズベルトを率い、アバルトでレース活動を行っていた。しかも全米で最も活躍したアバルトのチームでもあったという。

ロッソビアンコのザガート750は、オリジナルではないややモダンなホイールが気になるモデルだが、独特なダブルバブルはごく薄い盛り上がりを持つデザイン。リアのエアインテークもルーフ同様二つの盛り上がりを持つデザインとされたものである。残念ながらシャシーナンバーが不明なため、特定はできないが、初期のフラットなルーフがシリーズ1とされ、その後56年後半に誕生した薄いダブルバブル・ルーフを持ったモデルがシリーズ2。57年に登場し、ノーズ形上などが異なるモデルがシリーズ3とされる。このため、シリーズ1に近いノーズ形状を持つこの車は、シリーズ2のモデルと考えられる。


文:中村孝仁写真:T. Etoh
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