雑誌『ブルータス』の連載「斉藤壮馬の『ただいま、ゼロ年代。』」でたびたび音楽遍歴を語るなど、”本好き”だけでなく”ロック好き”としても知られる声優・斉藤壮馬が、全曲の作詞・作曲を手がけた4枚目のEP『Nuance』をリリース。インタビュー前編では、タイトル『Nuance』に込めた意味や、こだわり抜かれたギターサウンドについて話を聞いた。
■ 今作は、ギターが主役。”曖昧さ”をテーマにしたバラエティ豊かなEP
――4th EP『Nuance』は、どのような作品になりましたか?
これまでの作品は、コンセプトありきで構築することが多かったのですが、今作では明確なテーマやコンセプトを設けず、”今やりたい楽曲””今作れるベストな楽曲”を揃えた結果、バラエティ豊かな一枚になりました。
そのため、楽曲ごとに色合いや方向性のブレもあるのですが、「それでもいいじゃないか」と思って制作しました。タイトルの『Nuance』はフランス語で、”曖昧さ”や”微妙な違い”を意味します。AかBかで割り切れない領域というのは、自分の中で大切にしている要素なんです。
――1曲目の「lol」は、咳払いや笑い声が入っていて、ユーモアも感じられます。ギターをかき鳴らしているうちに自然にできたような、ラフな印象も受けました。
あまり細かく説明しすぎるのも野暮なんですが(笑)、実際にはしっかり計算して作った曲です。咳払いや音の入り方も、狙って入れています。海外のインディーロックバンドが、大きなガレージで一発録りしているようなイメージで、シンプルなコード進行と、各パートのグルーヴ感で勢いよく突き抜けるような曲を目指しました。最近の自分のムードとして、「短めの曲をしっかり作りたい」という気持ちもありました。
――Aメロ、Bメロ、サビという構成に縛られていないところが、洋楽っぽいですね。
そうですね。ただ、自分の中では自然に出てくる要素を使っているだけなんです。コード展開が少ないので、洋楽的な発想の曲かもしれません。ちょっと身も蓋もない言い方になりますが、「ノリで3分弱、突っ走ろう!」みたいな曲です(笑)。
――「lol」に限らず、今作は全体を通してギターがとても印象的です。音色や演奏の幅も広く、特にこだわりを感じました。意識してギターに比重を置かれたのでしょうか?
今回は、ギターの音色やアプローチの幅が広がったと実感しています。
自分のライブバンドは基本的にギター、ベース、ドラム、キーボードという編成なのですが、キーボードの重永亮介さんがギターも弾ける方で、ライブでは半分くらいギターを担当されているんです。それで、ある時アレンジャーのSakuさんが「もうキーボード、無理に入れる必要なくない?」って(笑)。そういった経緯もあり、キーボードの使用頻度がかなり少なくなっています。もしライブで披露するとしたら、僕を含めてギター3本の”トリプルギター体制”になると思います。といいつつ、重永さんにはキーボードもひいてはいただくのですが(笑)。
■ プログレ要素も。別れの曲「rain shoes」に詰め込んだ感情と混沌
――個人的には、ラストの「rain shoes」で聴けるディストーションの効いたギターソロが特に印象に残りました。
この曲だけは、アレンジを昔からの友人であるKYOTOU-Oさんにお願いしました。KYOTOU-Oさんは「蝿の王」や「Riot!」のアレンジも手がけていて、洋楽的なアプローチが得意な方です。我々は、お互いが'00年代のロックンロール・リヴァイバルに夢中だった10代の頃と重なるような感覚を共有していて。今回、いくつかの曲を聴いてもらった中で、「この曲をアレンジしたい」と選んでくれたのが「rain shoes」でした。この曲は、”大切な人だが、もう二度と会えない”ことについての曲。僕の中にある感情を言葉で説明するというより、感情の輪郭を渡すようなかたちでアレンジをお願いしたところ、その思いをしっかり汲み取ってくれました。
結果として、カオスな展開になりましたが、実はこれはプログレッシブ・ロックなんですよ(笑)。ギターソロも、「今時こんなにコテコテなソロある!?」というくらい、思い切って弾いてくれています。
Sakuさんは、僕が言葉でうまく説明できないことでも「壮馬くんの頭の中ではこう鳴ってるよね」と、ほぼ100%で具現化してくれる存在です。でも、自分ではコントロールできない音色や演奏、そういった”混沌”も、楽曲にとって大事な要素だと思っています。だからこそ、この曲をKYOTOU-Oさんにお願いして、本当によかったです。
■ 学生時代と”今”をつなぐ、余熱のような想い「afterschool」
――話を2曲目に戻しますが、「afterschool」はMVも制作されたリード曲ですね。キラキラしたアルペジオが印象的で、シンプルにかっこいいです。
ありがとうございます。00年代のジャパニーズ・ギターロックのような曲をやりたいなと思っていて、今作のリリースが決まって、ワンコーラスくらいはすぐにできました。ジャキジャキしたギターの感じが自分の中で浮かんできて。
――歌詞は、学生時代を振り返るような内容ですか?
ストレートにそう受け取っていただくのもありですけど、もう少し抽象的な「学生時代と今」という概念に近いです。
歌詞の冒頭に〈余熱で歩いている〉というフレーズが出てきますが、直接的に”昔と今を比べた”というより、「今まで自分って、どうやって歩いてきたっけ?」と立ち止まって考える瞬間を描いた曲と言いますか。これまでの自分の歌詞は、比喩を使ったり、少し捻ったりズラしたりすることが多かったのですが、最近は「どこまでシンプルにできるか」ということも意識するようになってきて。「afterschool」の歌詞も、改めて読むとかなりシンプルだなと感じます。でも、そのぶん、聴いてくださった方それぞれの文脈で、自由に解釈してもらえるようになったのではないかと思っています。
――個人的に、「afterschool」というタイトルも懐かしくて好きです。あの頃、〇〇schoolって名前のバンドも多かったですよね。
そういった”00年代感”も含めて振り返ると、当時は現役の学生だったけれど、今は”余熱”みたいな感覚があるなと、自分でも思います。
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