10月21日(火) 20:10
NHKの受信料は、放送法によって定められています。この法律では、「協会の放送を受信できる受信設備を設置した者はNHKと受信契約を締結しなければならない」(第64条)と規定されています。つまり、「放送を受信できる設備を設置しているかどうか」が契約義務の判断基準となります。
この仕組みを裏付けるように、最高裁判所は2017年12月の大法廷判決で、受信契約を義務づける制度は憲法に反しないと判断しています。さらに、受信料の支払いは契約を結んだ時点ではなく、受信設備を設置した月から発生するとされています。
たとえテレビをほとんど見ていない、あるいは契約を拒否していたとしても、受信設備の設置が確認されれば支払い義務が生じる可能性があります。
では、なぜテレビを処分しても解約できない場合があるのでしょうか。NHKでは、受信契約を解約できるのは「受信できる機器がすべてなくなった場合」や「誰も居住しなくなった場合」などに限られています。そのため、テレビを廃棄・譲渡する際には、家電リサイクル券の控えや譲渡証明書などの書類提出が求められることが多いのです。
さらに注意すべきはスマートフォンやパソコン、タブレットなど、テレビ放送を受信できる機能を持つ機器の存在です。
ワンセグ機能付きの端末や、インターネット配信を通じてNHKを視聴できる環境を保持している場合、受信設備が完全にないとは認められません。つまり、テレビを手放しても他の機器が受信可能と判断されれば、契約解除の条件を満たさないのです。
また、解約が成立しても、過去に未払いの受信料がある場合には支払い義務が残る点にも注意が必要です。
いまや多くの人が、テレビよりも動画配信サービスを利用しています。これまで、NHK受信料の制度は「放送を受信できる設備を設置しているかどうか」を基準としてきましたが、2025年10月からはインターネットによる視聴も受信料の対象に含まれる新制度が始まりました。
そのため、「NHKを見ていない」「テレビを持っていない」と感じている人にとっては、支払い義務が理不尽に映ることもあるでしょう。
近年は、NHKのインターネット配信も放送と同様に必須業務とされ、放送と配信の境界が一層曖昧になっています。制度の枠組みが生活実態に追いついていないことが、「見ていないのに払う」という違和感を生む要因のひとつになっているのです。
もし解約を検討しているなら、まずは自分の環境を正確に把握しましょう。テレビが完全に処分されているか、ワンセグ機能付きスマートフォンやチューナーなど放送を受信できる機器が残っていないかを確認します。
そのうえでNHKに解約申請を行い、必要に応じて家電リサイクル券の控えや譲渡証明書などの書類を提出します。書類が不十分な場合、NHK側が「受信設備が存在する」と判断して手続きが進まないことがあります。
一方、支払いを継続する場合も、契約内容や支払期間を定期的に確認しておくことが大切です。未払いがある場合は、後日請求が発生する可能性もあるため注意が必要です。
NHKの受信料を、「見ていないのに支払うなんて納得できない」と感じるのは当然です。しかし、テレビなど放送を受信できる設備を設置している場合に加え、2025年10月以降はインターネットを通じてNHKの配信を利用する場合も支払い義務が発生します。
ただし、単に端末や設備を持っているだけでは義務は生じません。まずは、自分の契約状況や受信設備の有無を確認し、解約が可能かどうかを客観的に判断しましょう。そのうえで、支払いを継続するか、正式な手続きを踏んで解約するかを選ぶことが重要です。
放送とネット配信の境界がさらに曖昧と思われる方も多いかもしれませんが、生活者として冷静に制度を理解し、自分にとって最適な選択をしていきましょう。
日本放送協会 NHK よくある質問集 【参考】放送法(第64条)
日本放送協会 NHK よくある質問集 NHKが受信料を徴収する法的根拠を知りたい
日本放送協会 NHK 受信契約の解約
日本放送協会 NHK 放送受信規約および放送受信料免除基準の一部変更について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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