【箱根駅伝2026】「気づいたら國學院。後半の國學院」出雲駅伝2連覇の裏にあった「区間配置の妙」と「前半区間の好走」

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【箱根駅伝2026】「気づいたら國學院。後半の國學院」出雲駅伝2連覇の裏にあった「区間配置の妙」と「前半区間の好走」

10月17日(金) 17:00

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2連覇を達成した出雲駅伝で強さを見せつけた國學院大(左から1区青木瑠郁、2区尾熊迅斗、3区野中恒亨、4区辻原輝、5区高山豪起、6区上原琉翔) photo by スポーツ報知/アフロ

2連覇を達成した出雲駅伝で強さを見せつけた國學院大(左から1区青木瑠郁、2区尾熊迅斗、3区野中恒亨、4区辻原輝、5区高山豪起、6区上原琉翔) photo by スポーツ報知/アフロ





前編:出雲駅伝2連覇に見る國學院大学の強さとは

学生三大駅伝の初戦となる出雲駅伝は、前年度に2冠を達成した國學院大学の圧勝で幕を閉じた。3区で流れをつかむと、4区からは独走。アンカー勝負も見据えて6区に配置された主将の上原琉翔は、2連覇をアピールする余裕のVサインでフィニッシュテープを切った。2位に38秒差をつけた國學院の強さとは、どこにあったのか――。

【"攻撃区間"がないと、駅伝は勝てない】ほとんど狙いどおりの襷リレーだった。2年連続3度目の出雲制覇を果たした前田康弘監督は、確かな手応えを得ていた。

「気づいたら國學院。後半の國學院。持ち味を出し、自分たちの駅伝を見せることができたと思います」

思い返せば、2019年の初制覇はアンカー区間で逆転優勝。昨年度に2冠を達成した出雲、全日本大学駅伝でも後半区間に巻き返し、タイトルをさらっている。

目を引くのは、区間配置の妙。今回、オーダーで最後まで悩んだのは2区と4区だった。2区にエース格である3年の辻原輝を置く案もあったものの、最終的には自らの直感を信じた。監督就任は17年目。國學院の指揮官として、出雲駅伝に8回、全日本大学駅伝に11回、箱根駅伝には14回出場しており、酸いも甘いも経験してきた。

「『これは絶対に4区だ』と風向きを読みました。2区の尾熊迅斗(2年)で耐えて、4区の辻原で攻めようと。やっぱり、"攻撃区間"がないと、駅伝は勝てないんで」

1区の青木瑠郁(4年)から5位で襷を受けた尾熊は落ち着いていた。三大駅伝は初めての出走となったが、自らの役割をよく理解している。スピードが問われる最短区間(5.8km)の2区。競い合う相手は、三大駅伝で実績を残してきた選手ばかりである。すぐ前を走る創価大の小池莉希(3年)がぐんぐんとペースを上げても後ろにつくことはない。後ろから猛烈な勢いで迫ってきた早稲田大の山口智規(4年)に追い抜かれても、焦ることはなかった。

「周りに惑わされないようにしようと。前半はあまり突っ込みすぎず、後半勝負に持ち込んで、勝ちきるつもりでした。前田さんから『レースの流れを読んで、自分でマネジメントしながら走れ』と言われていましたから」

短いようで長い5.8km。集団から離れず、想定どおりの展開でレースを進めていく。ラストにさしかかると、予定どおりペースを上げる。3区の中継所まで、歯を食いしばって腕を振った。5位の順位を守ったまま、前が見える位置まで迫り、区間6位の力走を見せた。

「最後まで自分の走りに徹しました。僕は主役ではないので。先輩たちにいい思いをしてもらいたくて」

初の大仕事を完遂した2年生の顔は、安堵感にあふれていた。

【大エースのような走り。あっぱれです】その後輩の奮起に触発されたのは、野中恒亨だ。人一倍責任感の強い3年生は、背中で見せることを誓っていた。チームのために襷を運んできた尾熊をはじめ、メンバー外となり、神奈川の寮で見ている後輩たちの顔も頭に思い浮かべた。

「先輩が緊張しながら走っていると、カッコよくないですよね。やっぱり、楽しんで走らないと成長もないので」

3区は各大学のエースクラスが集まる主要区間。スタートリストを見れば、持ちタイムではかなわないランナーも並ぶ。野中の10000mの自己ベストは28分17秒98。当初、27分台で走る留学生たちは勝負の対象外にしていたが、走る前に前田監督から「流れを変えてこい」とハッパをかけられ、気合が入った。

負けん気は人一倍強い。1年時からエース級の先輩たちに対抗心を燃やし、面と向かって「勝ちますので」と宣言してきた男である。今春、絶対的なエースの平林清澄(現ロジスティード)が卒業し、「自分がエースになるんだ」という覚悟も芽生えた。いざ走り始めると、ケニア人の猛者たちと並走。2位集団のなかで城西大のヴィクター・キムタイ(4年)、創価大のスティーブン・ムチーニ(3年)らと堂々と渡り合う。

「めちゃくちゃきつかったですが、思ったよりも離されなかった。ついていきやすいペースだったのかなと。途中から余裕があったので、これはいけるんじゃないのって。すごく楽しかったですよ」

終盤の残り700mからキムタイがスパートをかけると、懸命に後ろを追いかけた。ラスト50m付近で早稲田大をかわし、2位まで順位を押し上げる。区間賞こそキムタイに譲ったが、区間2位の快走。4区の辻原輝に襷をつなぐと、右拳を突き上げながら雄叫びを上げた。果敢に勝負を挑む姿を見ていた前田監督は、思わず目を丸くした。夏合宿では決め手となるエースがいないと口にしていたが、前言を撤回するようにまくし立てた。

「大エースのような走りをしてくれました。あっぱれです。あそこですべてが変わった。流れがひっくり返りましたから。これは『もう来たな』と。4区で先頭に立ち、5区で後ろを離して、6区で逃げきるという作戦だったので。野中の走りは想定を超えていました。サプライズです。強い留学生たちと互角以上に戦ったんで。27分06秒88の学生記録を持つ(リチャード・)エティーリ(東京国際大3年/区間3位)にも勝ったんですよ。本当にすごかった」

出雲ドーム前の壇上で優勝インタビューを終えたあと、歩きながら何度も「すごい」という言葉を繰り返し、手放しで褒めた。最高のお膳立てから得意の後半区間へ。ここからミスひとつ出さないのも、國學院の強さ。そして、驚きはまだ続いた。

つづく

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