9月19日(金) 4:00
民法第1004条には「遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない」と記載されています。つまり、遺言書を見つけても勝手に開封できないということです。
さらに、第1005条には、家庭裁判所に提出せずそのまま開封した場合、5万円以下の過料が科される可能性がある旨についても記載されています。
今回の事例では「勝手に開けた遺言書は無効になるのか?」ということですが、民法には過料が科される可能性についてのみ記載されているため、無効になる心配はないと考えていいでしょう。
ただし、家庭裁判所での検認が必要とされていない遺言書もあります。遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、特徴は以下の通りです。
●自筆証書遺言:遺言者が自筆で作成する
●公正証書遺言:公証人立ち会いのもと、公証役場で作成する
●秘密証書遺言:遺言者が作成して封をした遺言書を公証役場へ持って行き、遺言書を作成した事実を証明してもらう
このうち「公正証書遺言」については、家庭裁判所を通さず開封しても問題ないようです。公正証書遺言は原本が公正役場で保管されるので、万が一変造されることがあっても原本と比較することで実際の内容を確認できるためです。
検認は遺言書の偽造・変造を防止するための手続きで、相続人に対して遺言書の存在や内容を知らせることも目的に含まれます。
検認がおこなわれる際の手順は、以下の通りです。
●遺言書の保管者、もしくは発見した相続人からの検認の申し立てを受けて、裁判所が相続人に検認をおこなう日を通知する
●出席した相続人の立ち会いのもと、裁判官が検認をおこなう
●検認後に検認済証明書(遺言書1通につき150円の収入印紙)を申請する
検認の申立てには、遺言書1通につき800円分の収入印紙と、連絡用の郵便切手が必要になります。
検認が必要な遺言書を誤って開封してしまったとしても、遺言書が無効になることはありません。また、開封してしまった相続人の相続権が失われることもないでしょう。そのため「開封してしまったものは仕方ない」とそのままにしてしまうこともあるかもしれません。
しかし、遺言書を開封したことで「内容を改ざんしたのではないか」とほかの相続人から疑われてしまう可能性はあります。
そのため、開封後であっても家庭裁判所に相談して遺言書を提出し、検認手続きをおこないましょう。
公正証書遺言以外の遺言書は、開封する際に家庭裁判所による検認が必要です。検認の手続きをせずに開封してしまった場合は、5万円以下の過料が科される可能性があるため、注意しなければなりません。
検認の申立てには、800円の収入印紙と連絡用の郵便切手が必要になります。
検認が必要な遺言書を誤って開封してしまっても、無効になったり相続権が失われたりすることはありませんが、トラブルの原因になることも考えられます。開封後であっても、必ず家庭裁判所に提出しましょう。
デジタル庁e-GOV法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号)第五編 相続(遺言書の検認)第千四条 ・(過料)第千五条
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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