9月15日(月) 23:00
法律上、被相続人(亡くなった方)の所有であったすべての財産は、銀行預金・不動産・株などだけでなく、自宅のタンスや金庫に保管されていた現金も「相続財産」に含まれます。
「誰のものか」が明らかで、死亡時点で被相続人の管理下にあった現金であれば、税務署から相続税の申告を求められる対象となります。
つまり、「子どもに使うように言っていた」「使ってほしい現金」としていても、それが現金として手元にあり、被相続人のものであれば、法的に見れば相続財産です。
相続税がかかるかどうかを判断するためには、まず「課税遺産総額」が基礎控除額を超えるかどうかがポイントとなります。基礎控除額は以下の式で計算されます。
・基礎控除額 = 3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例:相続人が子ども2人+配偶者であれば法定相続人3人の場合
・基礎控除額3000万円 + 600万円 × 3 = 4800万円
この控除額を超える遺産総額があれば、超えた部分に対して相続税がかかります。自宅にあった現金100万円だけであれば、遺産総額がこの基礎控除額を下回るケースがほとんどなので、相続税は発生しない可能性が高いです。
ただし、遺産はその現金だけでなく、不動産・預貯金・株・保険金などすべての財産を合計した額で判断されます。もし他の財産も多くあるならば、その総額と基礎控除を比較する必要があります。
例えば、被相続人に預貯金・不動産など他の財産がほとんどなく、100万円のタンス預金のみを残したとします。相続人が子ども2人の場合、基礎控除額は上記の例で4800万円ですから、100万円だけでは基礎控除額を大きく下回り、相続税はかかりません。
一方で、他にも合計で5000万円分の財産がある場合、基礎控除額を超えているので、超えた部分=200万円に対して相続税がかかります。そのとき、タンス預金である100万円もその「超えた遺産」の一部として税率がかかる対象になります。
現金を相続税の申告対象にする際には、いくつか注意すべきことがあります。まず、「死亡時点にどれだけ現金があったか」を証明できる状態にしておくことが望ましいです。
タンス預金の場合、銀行の通帳残高とは違って記録が残らないことが多いため、家族や関係者との間で「この日にいくらあった」というメモや証言などを残しておくと有利です。
また、「持ち出して使った額」「遺品整理などで減った分」「死亡後に発生した出費(葬儀費用など)」を整理しておき、遺産総額を正確に割り出すことが重要です。
申告書には現金分も含めた遺産一覧を作成し、もし遺産分割協議書を作るなら現金の扱いについても明記しておく方がトラブル防止になります。
もし「子どもたちにこの100万円を自由に使ってほしい」という思いがあるなら、生前に贈与しておく、遺言書で指定する、といった方法も検討できます。贈与の場合、贈与税の枠内であれば非課税になることもありますが、贈与税や手続きをきちんと考えないと逆に税負担が増えることもあるので注意が必要です。
また、遺産全体が基礎控除額を超えそうなら、将来の相続税を見込んで税理士に相談し、この現金がどのように扱われるかを含めた全体の遺産設計をしておくと安心です。
自宅に100万円のタンス預金があるだけなら、それだけで相続税が発生する可能性は低いです。なぜなら、相続税には「基礎控除」があり、その額を超えなければ税金はかからないからです。
ただし、遺産全体の総額や相続人の数などによって状況は変わります。現金の証明を準備しておくこと、遺言か贈与で意図を明確にしておくこと、必要なら専門家に相談することが、将来のトラブルを避けるために大事になります。
国税庁 No.4152 相続税の計算
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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