医師「放置すると悪化」尿漏れ・頻尿・ぽっこりおなかの原因となる骨盤底筋群の衰え対策【医師解説】

医師「放置すると悪化」尿漏れ・頻尿・ぽっこりおなかの原因となる骨盤底筋群の衰え対策【医師解説】

8月27日(水) 12:55

尿漏れや頻尿、ぽっこりおなかなど、40代から増えてくる悩み。その原因は「骨盤底筋群」が弱くなることにあります。骨盤底筋群を鍛えるには、「骨盤底筋体操」が定番ですが、産婦人科医の駒形依子先生によれば「呼吸を変えるだけでも骨盤底筋群を鍛えることは可能」と言います。その呼吸法とはどんなものなのか聞きました。

更年期に弱くなる「骨盤底筋群」とは?
子宮や膀胱、尿道などを下から支える筋肉
まず、「骨盤底筋群」について教えてください。

「骨盤底筋群とは、骨盤の底辺にあるインナーマッスルです。

骨盤底筋群は、肛門挙筋や尿道括約筋などのいくつかの筋肉が合わさって、ハンモック状に子宮や膀胱、直腸を下から支えています。 また、排泄をつかさどる場所でもあり、尿道や肛門などの排泄口を開閉する働きもしています。

妊娠や出産を経ることで大きなダメージが加わります。 加齢により筋力が低下することに加え、女性ホルモン分泌の減少で弾力性が低下するため、年を重ねるほどに骨盤底筋群は弱くなっていきます。 また、肥満も骨盤底筋群にダメージを与える原因となります」(駒形先生)。

骨盤底筋群が弱くなると、どんな影響が出るのでしょうか。

「骨盤底筋群の弾力や厚みが失われると、内臓が下がってきます。そのため尿道、腟、肛門の開け閉めがうまくいかず 頻尿や尿漏れ、便失禁 が起きやすくなります。悪化すると、骨盤内の臓器の下垂や脱出が見られる 骨盤臓器脱 を起こすこともあります」(駒形先生)。
「骨盤底筋群」を鍛えるには?
深層筋肉
体内で平行する「横隔膜」に注目
放っておけばどんどん弱くなる「骨盤底筋群」。どのように鍛えるのでしょうか。

「『骨盤底筋体操』という体操があります。ただ、骨盤底筋群はインナーマッスルであるため、鍛えても変化を実感しにくいのです。続けておこなわないと変化が現れないのですが、途中で挫折してしまう人がとても多いのが現状です。

とはいえ、骨盤底筋群は鍛えないとどんどん衰えていきます。少しでも鍛える方法はないか……と呼吸法に着目してみました」(駒形先生)。

呼吸と骨盤、どのような関係があるのでしょうか。

骨盤底筋群は『骨盤の横隔膜』ともいえます。横隔膜と骨盤底筋群は上下で平行して向かい合って連動しており、横隔膜と骨盤底筋群が正しい位置にあれば、連動して同じ動きをするようになっています。

息を吸って横隔膜が下がっている時は骨盤底筋群も下がりますし、息を吐いて横隔膜が上がっているときは骨盤底筋群も上がります 」(駒形先生)。
「胸式呼吸」とは?
胸式呼吸
吐くことに意識を集中して胸を上下させて
呼吸をすれば骨盤底筋群は動いているんですね。では、生きている限り骨盤底筋群は動くので、何も特別なことはしなくて良いということですか?

『息』 と『呼吸』は違います。

大切なのは横隔膜を動かしているかどうか。 息は横隔膜を動かさなくてもできます。 胸をしっかり上下させて呼吸をすることで骨盤底筋群を動かすことができます。

ポイントは以下の通りです。

・息を吐くことに重点を置きましょう。 深呼吸であれば10秒かけて吸って、できる範囲でゆっくり吐くのが理想的です。
・吸うときは、胸とおなか、両方を膨らませてもOK。体幹や四肢の筋肉に力が入り体に無駄な力がかからなくなります。
・猫背や反り腰にならないよう、「正しい姿勢・体幹」を意識。 横隔膜と骨盤底筋群が平行になる姿勢を意識します。

横隔膜を動かすことで自律神経を刺激し、バランスを整える働きもあります。 横隔膜は自分で動かることができる筋肉であり、呼吸を通じて自律神経に影響を与えることができます。

まずは1日に数回、意識的に深い呼吸をする時間を取ってみましょう。 最初は1日1回でも良いと思います」(駒形先生)。
まとめ
胸式呼吸をするタイミングは、まずは1日1回。慣れたら朝起きたときや夜寝る前、さらに慣れてきたら回数を増やすと良いそうです。しかし、1回もしないよりは1回でもしたほうが良いので、回数にこだわらなくて大丈夫、ということでした。お金も道具も必要のない健康法である「胸式呼吸」。気軽に始めてみてはいかがでしょうか。

※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。


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取材・文/mido
ライター歴25年以上。35歳で第1子、38歳で第2子出産。最近、たるみが加速して二重顎が悪化。身長153㎝なのにLサイズの服が少しきつくなってきて……人生最後のダイエットを計画中。
監修者:医師 こまがた医院院長 駒形依子 先生 東京女子医科大学医学部卒業。米沢市立病院入職後、再び東京女子医科大学に戻り、専門医を取得。同大学産婦人科に入局し産婦人科医として働きつつ、性科学を学び、また東京女子医科大学東洋医学研究所で東洋医学を学ぶ。2019年1月に地元山形県米沢市にて、こまがた医院を開業。著書に『子宮内膜症は自分で治せる(マキノ出版)』『膣の女子力~女医が教える「人には聞けない不調」の治し方(KADOKAWA)』。


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