ルイス・ディアスの移籍は堂安律ら日本人選手にも影響各クラブの補強はどうなる?

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ルイス・ディアスの移籍は堂安律ら日本人選手にも影響各クラブの補強はどうなる?

8月4日(月) 7:05

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西部謙司が考察サッカースターのセオリー

第60回ルイス・ディアス

日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。

今回は、新シーズンにリバプールからバイエルンへ活躍の場を移すルイス・ディアス。大物選手が動いたことで「移籍連鎖」が起こり、それは日本人選手の動向にも影響を与えています。

【バイエルン移籍で連鎖が起こる】 移籍は連鎖する。とくに大物選手が動くと、引き抜かれた側は穴埋めの補強をするので、そこで引き抜かれたクラブがさらに新たな選手を獲得し、玉突き的な移籍の連鎖が起こる。

リバプールからバイエルンへ移籍したルイス・ディアス(左)photo by Getty Images

リバプールからバイエルンへ移籍したルイス・ディアス(左)photo by Getty Images



最初に動く大物の移籍金によって末端のほうの移籍計画も変わってくるので、一見何の関係もなさそうなクラブにとっても大きな関心事だ。

今オフ、今のところ最大級の連鎖案件がルイス・ディアスのリバプールからバイエルンへの移籍である。移籍金は7500万ユーロ(約128億円)と言われている。

レロイ・サネがガラタサライへ去り、バイエルンはニコ・ウィリアムズを獲得候補としていた。スペイン代表の左ウイングはバルセロナも獲得に動いていたが、ニコはアスレティック・ビルバオとの契約を更新。

折しもクラブワールドカップでジャマル・ムシアラが負傷して長期離脱となったバイエルンは、フロリアン・ビルツ、ブラッドリー・バルコラの獲得を狙ったが、ビルツはリバプールが獲得、バルコラはパリ・サンジェルマンが放出せず。

ちなみにニコ獲得でバイエルンと競合していたバルセロナはマンチェスター・ユナイテッドからマーカス・ラッシュフォードを1年間の期限付きで獲得している。買い取りオプションは3000万ユーロ(約52億円)。比較的安価で手を打った形だ。

バイエルンがこの状況下でルイス・ディアスを獲得できたのは大きい。こちらは本気の補強である。

ルイス・ディアスを失ったリバプールは、センターフォワード(CF)にフランクフルトからウーゴ・エキティケを補強した。左ウイングが本職のルイス・ディアスだが、昨季はCFでのプレーも多かった。本来はダルウィン・ヌニェスが「9番」のはずだったが、期待したほど得点が伸びず、ルイス・ディアスが偽9番的な役割でまとめていたのだ。

左はコーディ・ガクポが起用されていたので、左の穴埋めはすでにできている。アカデミー出身の16歳、リオ・ングモハも台頭してきた。それでルイス・ディアスとはタイプの違うCFエキティケの獲得になったわけだ。

興味深いのはルイス・ディアスの移籍金7500万ユーロも高額だが、エキティケはさらに高い9500万ユーロ(約163億円)であること。28歳と23歳という年齢差があるにしても、単純に実績で言えばルイス・ディアスのほうがずっと上と考えられる。需要と供給のバランスで移籍金が跳ね上がるケースはよくあることで、移籍市場のひと筋縄ではいかないところだ。

エキティケを失ったフランクフルトは手にした約163億円で強化費用に余裕が生まれ、堂安律の獲得が秒読み段階と報道されている。堂安がいたフライグルクは移籍を見越してすでに鈴木唯人をブレンビーから獲得ずみ。

ルイス・ディアスを引き金にした移籍の連鎖は堂安や鈴木の動向にも影響を与えていて、こうした複雑な市場の動きは今や恒例となっている。

【ケインとのホットライン開通か】 コロンビアのバランキージャでデビューしたルイス・ディアスは、アトレティコ・ジュニオールを経てポルトへ移籍。南米選手の欧州での登竜門とも言えるポルトガルリーグでの活躍で、2022年1月にリバプールと契約した。

ルイス・ディアスが冬のマーケットでリバプールに来た当初、左サイドにはサディオ・マネがいたため、プレー機会は限られるものと思われた。しかし、マネは2022年夏にバイエルンへ移籍。マネがリバプールに残っていたら、ルイス・ディアスのキャリアはまた違ったものになっていたかもしれない。

マネはバイエルンではフィットしきれず、ロッカールームで口論の末にサネに暴行した事件もあり、1シーズンでバイエルンを去ってアル・ナスルに移籍した。あてにしていたマネを失い、さらにサネを放出したバイエルンにルイス・ディアスというのは何かのめぐり合わせだろうか。

CFにエースのハリー・ケインがいるバイエルンでは、本来の左ウイングとしてプレーするだろう。右利きのルイス・ディアスは左からカットインしてのシュートが十八番。ニア、ファーのどちらにも打ち分ける。縦への突破力もあり、右からのクロスボールに飛び込んで得点もできる。

このくらいは現在の左ウイングとしてはむしろ普通だが、そのどれをとってもトップレベルのキレ、正確性、スピードを持っていて、さらにハードワークができて戦術理解度も高いところがルイス・ディアスの価値だ。

模範的な左ウイングであるルイス・ディアスの加入で、ケインの得点チャンスは増えるだろうし、逆にケインやマイケル・オリーセのアシストでルイス・ディアスの得点力も生かされる。バイエルンにとっては手堅い補強だったのではないか。

【リバプールの新仕様も興味深い】 一方、ルイス・ディアスが抜けた穴をリバプールがどう埋めるかは未知数だ。

左はガクポがやるとして、新加入のエキティケがどれだけフィットするか。さらに移籍の目玉であるビルツがリバプールのプレースタイルに合うのかどうか。プレミアリーグ史上最高の移籍金を払って獲得したビルツを使わないことは考えられず、むしろチームがビルツ仕様で機能するかどうかが問われることになりそうである。

ビルツの抜けたレバークーゼンはシャビ・アロンソ監督もレアル・マドリードへ去っていて、大きな変化が予想される。連鎖移籍が発生した場合、その最初のチームはプランにしたがった補強をしているが、それに続くクラブは主力放出を予想しての柔軟な対応が求められる。

フランクフルトやレバークーゼンはある意味こうした事態の対処には慣れているはずだが、選手がオフになるこの季節こそ、フロントにとっては最も忙しく気の休まることのない時期なのかもしれない。

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