実家よりはるか遠方に嫁いだ私。ある日、実家の祖父が入院したとの知らせを受け、お見舞いに向かうことにしました。最初は「命に別状はない」とのことでしたが、その後「今生の別れになるかも…」と連絡を受けて状況が一変。不安な気持ちを抱えながら帰省の準備をする私に夫が差し出してきたものは……。
週に1度は義実家へ…
私たち夫婦は義実家とは別居して生活しておりましたが、兼ねてから週に1度は義実家を訪問する習慣がありました。
その際には、義母が食べ物や日用品だけに留まらず、お下がりや地域のお得情報まで、いろいろなものをくださいました。しかし、いい年をして実家からたくさんの援助をもらうことを恥ずかしいと感じていた私は、その習慣が好きではありませんでした。
一方で夫は「もらえるものはもらえ」という考えのようでした。そのため、夫だけが毎週義実家を直接訪問し、私はメールでお礼を伝えつつも月1回程度の訪問で済ませるようにしていました。
祖父の突然の入院
そんなある日、私の実家の祖父が入院したと母から知らせがありました。驚きながらも、よく話を聞いてみると「80代という年齢を考えて念の為に入院しているけど、命に別状はないよ」「とはいえ、祖父の年も年だから、元気なうちに顔を見せに来れば?」とのことでした。それを聞いた私は「ならば気軽で楽しい帰省じゃないか」と感じたため、二つ返事で「来週にでも帰るよ」と返しました。
実家が遠方であるため、帰省のためには数日家を空けることになってしまいます。そのため、週に1度の義実家訪問を利用し、義実家に「祖父のお見舞いのため、来週から実家に帰省します」と報告をすることにしました。義実家からもお見舞いの言葉と祖父へのお見舞い金を預かり、快く送り出していただけるものと、このときは思っていました。
義母と夫から渡されたものは…
翌週になり、いよいよ出発の日も目の前。先週の祖父は「命に別状はない」ということでしたが、だんだん雲行きがあやしくなっており、母からの電話も
「今生の別れになるかも」「すぐに来たほうが良い」
という言葉へと変わっていました。
そのため、不安な気持ちを抱えながら帰省のための荷造りをしていたところ、夫が週に1度の義実家訪問から帰ってきました。夫の手には何かが握られており
「母(義母)から良い情報をもらった」「出発前に間に合ってよかった」
と言いながらうれしそうに私にそれを渡してきました。
見てみると、握られていたものは1枚のチラシで、そこに書いてあった文字は
「喪服のセール」
。突然のことに意味がわからず、どういうことだろうと考えていたところ、夫から
「祖父のための喪服が安く買えるよ」
というひと言がありました。
それを聞いた私は、本当に祖父が亡くなってしまうかもしれないという不安な気持ちが相まって
「祖父はまだ生きているのに、どうしてそんなことを言うのか」
と、思わず激怒してしまいました。
しかし夫からは驚くべき返答がありました。
「(当時は病気などもしておらず、とても元気であった)祖母のときも使えるだろう」
「せっかく安く買えるチャンスを見逃すのは、家計を浪費する考え方」
「セールで買わないのであれば、喪服代は俺の稼ぎからは一銭も出さない」
きっと私が何に怒っているかわかっていないのだろうと思いました。いくら説明しても根本が違うのだから仕方ないと諦め、悲しい気持ちのまま出発の日を迎えました。当然、喪服は購入しませんでした。
結果的に程なくして祖父は亡くなってしまい、夫からは
「あのとき買っておけば、高い値段で喪服を買わずに済んだのに」
と、それ見たことかと言わんばかりの態度で言葉を投げかけられました。しかし、それは結果論であり、少なくとも、祖父を亡くして気落ちしてる人にかける言葉ではないと今でも考えています。
まとめ
この経験を通して気付いたことは、人それぞれに大切にする価値観があり、必ずしも正解・不正解では測れないものかもしれないということです。喪服の購入を巡って、夫は実践的な経済を考えた視点から家族を守ることを価値とし、私は喪服に込められた感情を価値として大切にしていたことから起こったすれ違いだったと思います。
どちらも家族の幸せを願う気持ちから生まれているものであり、お互いにお互いを思いやる気持ちが持てていれば、このような争いになることはなかったのではないかと反省しています。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:遠藤ちよ/30代女性・主婦
イラスト/マメ美
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年3月)
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