4月26日(土) 17:10
定年が近づくにつれ、「老後の資金が足りないのでは?」という不安を感じる人も多いでしょう。まずは60代前後の貯蓄状況について見ていきます。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2023年)」によると、各年代の金融資産の平均値と中央値は次のとおりです。
●50代平均値:1147万円中央値:300万円
●60代平均値:2026万円中央値:700万円
●70代平均値:1757万円中央値:700万円
この金額を見ると「わが家には貯蓄がない」と不安になるかもしれませんが、同調査では、50代の約27%、60代の約21%が「金融資産非保有」としています。つまり、「定年直前で貯蓄がない」という状況は決して珍しいことではないのです。
定年後に貯蓄がない場合、まずは公的年金を頼りにする生活となります。しかし、年金だけでは生活費が不足するケースも少なくありません。
総務省の家計調査によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯における平均支出は月額で約28万円です。しかしこの金額はあくまで平均です。
例えば住居費は約1万7000円で、持ち家家庭も多く含まれることが推測されます。賃貸物件に住んでいる場合、都心では家賃が10万円くらいすることも少なくないため、実際の支出はもっと多い家庭もあるでしょう。
一方で、厚生労働省の試算では、夫婦2人で受け取る年金の標準額は月額で約23万円です。
このように、年金だけでは毎月数万円の赤字が発生する可能性があり、貯蓄ゼロの状態では生活に大きな影響を及ぼすことになります。
公的年金だけで暮らしていくことは難しいかもしれませんが、赤字分は働くことでの補填も可能です。
内閣府の高齢社会白書によると、男性の場合、60~64歳の84.4%、65~69歳の61.6%、70~74歳の42.6%の人が働いています。
働く理由としては生活費を稼ぐためというほかにも、社会とのつながりを保ちたい人や、働くこと自体が好きだという人もいるでしょう。いずれにせよ、60歳以降も収入を確保できれば、生活の安定につながるでしょう。
貯蓄がない場合でも、定年後の生活を安定させる対策はいくつかあります。
「投資」と聞くとリスクが大きいイメージがありますが、リスクを抑えた運用をすれば、少しずつ資産を増やすことも期待できます。iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAなどを活用し、短期で大きな利益を狙うのではなく、堅実な運用で将来の備えを作ることもこれからできる老後に向けた対策の一つとして挙げられます。
生活費を抑えることも、老後の安定には大切です。例えば、住居費について、賃貸なら安い物件への住み替えを検討したり、携帯料金や保険料といった固定費を見直したりすることが大切です。
外食が多い場合、無理のない範囲で自炊を増やし、外食を減らすなども考えたいところです。毎月の支出を数万円抑えられれば、老後の生活の余裕が大きく変わるでしょう。
定年後に働く選択肢として、ちょっとした副収入という方法もあります。例えば、週2~3日だけパートやアルバイトをする、スキルを活かした在宅ワークをするなどです。
自分のペースで働きつつ、生活の安定につながるでしょう。
定年直前に貯蓄がゼロの人も少なくなく、その場合でも定年後の生活を守る方法はあります。「定年=引退」と決めつけるのではなく、定年後の人生をどうデザインするかを考えることが大切です。
今からでもできることを1つずつ実践し、老後の不安を減らしていきましょう。
金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)
総務省統計局 家計調査報告〔 家計収支編〕 2023年(令和5年)平均結果の概要
内閣府 令和6年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)1 就業・所得
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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