【女子バレー】パリ五輪代表のリベロ・小島満菜美はなぜ米プロリーグでプレーするのか日本との違いに「最初は対応できなかった」

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【女子バレー】パリ五輪代表のリベロ・小島満菜美はなぜ米プロリーグでプレーするのか日本との違いに「最初は対応できなかった」

4月15日(火) 8:30

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米リーグ「LOVB」で奮闘する選手たち(1)

アメリカで今年からスタートした女子プロリーグ「LOVB」(League One Volleyball)で、3人の日本人選手がプレーしている。昨年のパリ五輪に出場したリベロの小島満菜美(30歳)がソルトレイクに、そのチームメートにはセッターの松井珠己(27歳)も名前を連ねる。また、昨季にタイのリーグでMVPに輝いたリベロ井上琴絵(35歳)がオースティンに所属している。

米プロリーグ「LOVB」でプレーする(左から)井上、松井、小島

米プロリーグ「LOVB」でプレーする(左から)井上、松井、小島





"バレーボール発祥の国"で、彼女たちはどんな思いでコートに立ち、キャリアを刻んでいるのか。3人のインタビューを続けてお送りする。ひとり目は、ソルトレイクの絶対的守護神として高い評価を受け、4月10日に発表された2025年度の女子日本代表登録メンバーに選ばれた小島。

アメリカでのシーズンでは第1週目から「週間ディフェンシブプレーヤー」に選出され、以降もサーブレシーブ、ディグともに、常にリーグ上位にランクインしてきた。青山学院大を卒業し、昨季までプレーしていたNECレッドロケッツに入団する頃から抱いていたという海外挑戦。それを果たした今の思いとは。

【日本とアメリカのバレーの違い】――NEC在籍時から「将来は海外リーグでプレーしたい」と口にしていましたが、それはどうしてですか?

「学生時代にU20やユニバーシアードの日本代表として出場した国際大会で、海外の選手と対戦することが身近だったことが理由にあります。また、日本のリーグは決して世界ナンバーワンというわけではないと思っていたので、もっともっと高いレベルでプレーしたいと考えていました」

――パリ五輪を終えて、まずはアメリカのプロリーグのひとつである「ATHLETES UNLIMITED PRO VOLLEYBALL」(AU Pro)でプレーし、その後、年明けから「LOVB」に臨みましたね。

「あらかじめ『LOVB』でプレーすることは決まっていたのですが、自分が初めて海外リーグでプレーするということもあり、海外生活に慣れる意味でも『AU Pro』にトライすることにしました。今思うと、『LOVB』の前に経験しておいて本当によかったです。

というのも、最初は日本とアメリカのギャップを感じたんです。たとえばレシーブに関して、日本では基本的にアタッカーもみんなレシーブが上手なので、ある程度は責任が分担されます。それがアメリカだと、リベロが捕りにいけるボールはどんどん捕球しにいくことを求められます。

また、アメリカのバレーボールのスタイルはブロック主導なんです。日本だと、ブロックとレシーブの関係性を構築して、あえてブロックの横を打たせて、後衛のレシーバーが拾い上げることもあるんですが、アメリカはブロッカーが思いのままに手を出します。最初はそこにまったく対応できませんでしたね。私自身は"読み"で動くタイプで、瞬時の反応が速いいほうではありませんでしたから、『どうやって動いたらいいんだろう?』と苦労しました」

ソルトレイクのリベロとしてプレーする小島

ソルトレイクのリベロとしてプレーする小島





――そこはどうやって対応したんですか?

「自分のなかでプレーの見方を変えてみたり、レシーブの構え方や待ち方を研究して、徐々にモノにできました。レシーブの位置取りや準備に際しても、私が『ここに来るかも』と先に判断してしまうと、いざブロッカーの手が動いてイレギュラーなボールが来た時に対応できません。だから、『ここに来るかも』と読むけれど、なるべく全部のボールに対応できるように選択肢を増やしておくんです。

そのためにも、いろいろな目のトレーニングを取り入れてスキャン(瞬時に判断する)能力を磨き、そこから体が動くようにしてきました。こうして取り組んでいることは、日本バレーのスタイルでプレーする時にも使えるでしょうし、自分のプレーの引き出しを増やす機会になったと感じています」

【ロス五輪も見据えてさらなる成長を】――リーグの公式SNSなどで、小島選手の名前が出てくることも多いように感じます。プレー面の手応えはいかがですか?

「いやぁ、個人的にはまだまだです。たとえば、ボールのコントロール。日本だと大半の選手がきれいなサーブやスパイクを打ちますよね。一方で、アメリカはパワーが強い部分もあってか、急にとんでもないボールが来ることもあって、コントロールしきれていません。

もっとセッターをラクにさせてあげられるボールを返したい、と思う場面が何度もありますから、その精度に関しては自分でも納得していません。頑張らないと!!」

――「海外でプレーしたい」という思いが叶ったわけですが、思い描いていたものが手に入った実感はありますか?

「うーん......ハーフ&ハーフ、という感じでしょうか(笑)。もちろん『いい経験ができているな』と思うこともある反面、言葉の壁も含めて、チームのなかで自分の経験を伝えたり、逆に聞いたりすることがまだできていないだけに、そこは学びたいと思っています。さらに成長したいですし......ただ、今の時点で楽しいことは確かです」

――昨年のパリ大会で初めての五輪を経験して、今後もさまざまなキャリアを重ねていくことになりそうですね。

「(パリ五輪までの過程では)メンバー選考からずっと落選し続けてきたので、五輪に出られたこと自体は素直にうれしかったです。ですが、大会本番はとても悔しかった。個人としてもチームとしてもパフォーマンスを発揮できなかったのは、まだ弱さがあったのだと感じています。五輪独特の雰囲気も痛感しましたね。

次のロサンゼルス大会を見据えているか?と聞かれたら......見据えてはいますが、自分自身もこの先どうなるかわからないので。ただ、ここからしっかりとチームを作っていくことが大事ですし、そのなかで五輪を経験していることは活かせると思います。私が経験したことを伝えていけたらと思いますし、代表と五輪はチャレンジしたいもの。そこでは、『チームにとって必要だ』と思ってもらえる選手になりたいと考えています」

(2)を読む:松井珠己は米No.1セッターを手本に成長を実感パリ五輪は落選も、ロス大会には「出たいです‼」>>

【プロフィール】

小島満菜美(こじま・まなみ)

1994年11月7日生まれ、宮城県出身。ソルトレイク(アメリカ)所属。身長158cm。リベロ。市立船橋高校を卒業後に進学した青山学院大学時代にアンダーエイジカテゴリー日本代表に選出され、入団先のNECレッドロケッツ(当時)でも守護神を務める。抜群のディフェンス力とリーダーシップを備え、昨年は女子日本代表としてパリ五輪出場を果たした。

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