CIAでは暗号解読の専門家、しかし内勤なので戦闘スキルはナシ。そんな主人公が、妻を殺したテロリスト一味への復讐に挑むという、ユニークな設定で注目を集めているサスペンスアクション『アマチュア』(公開中)。味方であるはずのCIAに追われながら、コンピュータやネットワークの知識を武器に、敵を追い詰めていく奔走がスリリングに描かれており、目が離せないエンタテインメント作品となっている。
【写真を見る】ラミ・マレック、見つめる視線はチャーリーそのもの…来日インタビューでの撮り下ろしショット!
主人公チャーリーを演じたのは、『ボヘミアン・ラプソディ』(18)のフレディ・マーキュリー役でアカデミー賞をはじめとした映画賞を独占したラミ・マレック。「90歳の老婆と腕相撲しても負ける」と揶揄されるほど、スパイとしては“アマチュア”だが強い意志と頭脳で敵を追う男を、人間的な魅力と共に演じてみせた。また、悲劇の愛妻サラに扮したレイチェル・ブロズナハンは、シリーズ完全新作となる『スーパーマン』(7月11日公開)でロイス・レーン役を演じることが決定している注目株で、出番はわずかだが強い印象を残す。MOVIE WALKER PRESSでは、本作の公開直前に来日した彼らに直撃インタビュー!作品の魅力や舞台裏について語ってくれた。
■「観客がチャーリーに対して“個人的なつながり”を感じることが、一番の願い」(マレック)
――マレックさんは『アマチュア』では主演と共に製作を兼任されていますが、プロデューサーとして具体的にはどんな仕事を?
マレック「予算のことを考えつつではあったけれど、99%はクリエイティブな仕事でした。僕がこだわったのはロンドンをロケーションの主軸にすること。というのも、『ボヘミアン・ラプソディ』や『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』での経験に基づいているけれど、スタッフの質が高いし、映画製作のインフラも整備されているから。とにかく、プリプロダクションから編集まで、あらゆることを考え、アイデアを出しました。ロケハンはもちろん、キャスティングにも関わったけれど、レイチェルは、いつもサラ役のリストのトップでしたね」
――チャーリーとサラ、それぞれをどのように感じて演じられたのですか?
ブロズナハン「チャーリーとサラの関係を、なによりもいいものとして見せることが大事だと思っていました。彼らの夫婦関係を見せることで、その後のチャーリーの行動に誰もが感情移入できるようにしたかった。私が撮影に参加した時は、すでに何か月も撮影が行われていた段階だった。なのでラミの助けを借りて、ロンドンの街ですてきなラブストーリーを作り上げていきました。たぶん、キャストのなかで私が一番楽をしていたかも(笑)」
マレック「アクションというジャンルの映画にはなかなか出てこない人間関係が描かれているし、そういう意味ではキャラクターの持つ力が非常に強い作品です。この作品を作る旅路のなかで僕は常に、脆さを持っていて共感できる、誰もがつながりを感じられる人物を演じたいと思っていました。僕の一番の願いは、観客がチャーリーに対して個人的なつながりを感じることなんです」
――チャーリーが復讐という行為におよぶことについて、どう考えますか?
マレック「チャーリーは愛のために、全世界を敵に回しても構わないと考えている。僕も彼の立場だったら、同じことをするかもしれない。この物語のいいところは、誰かが悲しみと向き合い、その段階がどんなものであるのかを、きちんと見せていることです。どの段階で否定から怒りに変わり、その先にある受容の感覚に変化していくのかを注意深く観察しました。チャーリーはその過程をナビゲートしなければいけない。サラがいなくなっても、彼の周りの世界は続くから。彼は生き続けようとしているし、愛する人の記憶も生き続けさせようとしているんです」
ブロズナハン「この映画は正義と復讐の境界線の間を行く旅だと思います。私はチャーリーの進む旅路が大好きです。彼は愛する人のためであれば、地の果てまででも行こうとする。ほかの誰かの真似をするわけでもなく、あくまでも自分のやり方でね」
■「ラミは、一緒の演技でなにが起こるかわからない電撃的なパフォーマー」(ブロズナハン)
――共演されて、お互いにどんな点に役者として、または映画人としての強みを感じましたか?
マレック「面と向かって言うと、レイチェルは照れてしまうかもしれないね(笑)。とにかくカメラが回っている時の彼女は、周囲を威圧する感覚がある。もちろん、それは役者には必要なもので、共演者としてお互いにそれを交換し合い、共有していくものです。またレイチェルには、そのキャラクターを自然なかたちで生きているような、そんな感覚がある。これは俳優が一生をかけて培っていくものだけれど、彼女には自然にそれが備わっているんです」
ブロズナハン「そんな、畏れ多いです(笑)。実は、私も彼に同じことを思っていました。ラミが入念な準備をして撮影に臨んでいるのはわかっているけれど、一緒に演技をしてなにが起こるかわからない、電撃的なパフォーマーだったんです。それに、共に仕事をするパートナーとして誰にでも寛大で、彼と話していると私も気分がよくなる。けれど、『あ、私も、もっとレベルを上げないといけない』と思えてくるから、同時に怖くもなるんです(笑)」
――プロのスパイではないチャーリーをアクション映画の主人公にすることは大変だったと思いますが、どんな準備を?
マレック「肉体的なトレーニングを必要としないと思ったのは、今回が初めてだった。僕が学んだのは、チャーリーにすでに備わっているであろう知力を使うということ。IQをさらに上のレベルに引き上げ、彼に天才的な能力をもたらすことで、妻を殺した犯人を倒す。そのようなスキルが育まれるのは決して軍事訓練の場からではなく、これはいわば“知性に訴える銃撃戦”なんだ。極めて知的でありながら、非常に派手でもある。それこそが本作が特別なところだ。時には彼の倫理観に疑問を抱くこともあるだろうけれど、それは誠実さから来るものであり、同時にスペクタクルでもあるんだ」
――“アマチュア”と、その対比であるプロフェッショナルについて、どんな違いがあると思いますか?
ブロズナハン「人によって解釈は異なるけれど、“アマチュア”は才能を技術に変えようとする情熱を持った人のことだと思います。逆に、プロは技術を活かし続け、なおかつフレッシュな状態にすることに情熱を燃やす人ですね」
マレック「そういえば、共演のローレンス・フィッシュバーンが言っていたよ。“アマチュア”の語源は『愛』から来ているって。(「マトリックス」シリーズでフィッシュバーンが演じた)モーフィアスの言うことだから間違いない(笑)。プロフェッショナルというのは、アクション映画でよく見られる、一定のトレーニングを積んだあと、ある局面で的確に培った能力を発揮できる人とも言えるだろう。でも、“アマチュア”であるチャーリーの武器は『愛』だ。正直、この武器だけで彼が生き続けられることを、時々不思議に感じるけれど。チャーリーはアマチュアであるという意識を持ち続けることで、プロでもなしえないことをやってのけるんだ」
取材・文/相馬学
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