【写真】山田孝之、9年前の写真と今の比較投稿が話題に“シンクロナイズドスイミング=女性の競技”というイメージが強かった2000年代。当時は今のように「多様性」という言葉を耳にすることはほとんどなく、世の中は男性的/女性的とはっきり二分されている印象だった。そんな中、社会現象を巻き起こした作品が「ウォーターボーイズ」だ。同作は、2001年に映画化された後、2003年にドラマ化、さらに翌年2004年に続編ドラマが制作された人気シリーズ。
そもそも「ウォーターボーイズ」は実話である。モデルは、埼玉県立川越高等学校の男子水泳部による文化祭演目・シンクロナイズドスイミング(現・アーティスティックスイミング)。驚くべきことに同演目は、1980年代後半から受け継がれてきていたという。そんな時代の一足も二足も先を行っていた「ウォーターボーイズ」が、2025年の今TVerにて順次無料配信されている。
シンクロナイズドスイミングに汗と涙の情熱を注いだ男子高校生たちは、時にバカバカしくて笑えてしまい、時にキラキラ輝いていて心臓を掴まれ、時にその無器用な真っ直ぐさに涙してしまう。そんな泥臭くて愛おしいザ・青春物語を2025年の今、見るべき理由を3つに分けて紹介したい。(以下、ネタバレが含まれます)
■王道な“努力・友情・勝利”の青春物語!
まず何と言っても見どころのポイントはその内容ではないだろう。同ドラマは、映画「ウォーターボーイズ」から2年後の同学校を舞台にしているため、始まりの始まりこそ順調に思えた。今やシンクロは有名になり、観光客やマスコミがそれを目当てに押しかけるほどの人気っぷり。水泳部員たちも先輩からの熱意を受け継ぎ、今年の文化祭でもシンクロを披露する気満々でいた。
だが、ひょんなことから今年の文化祭でのシンクロは中止に。そこからあれよあれよと転がり落ちていき、気付けばシンクロメインの水泳部員たちは解散。決行しようと立ち上がるのは、主人公・進藤勘九郎(山田孝之)と、シンクロをやりたいがためにわざわざ転校してきた立松憲男(森山未來)だけになっていた。余談だが、主人公の名前が進藤勘九郎、縮めると“シンクロ”となり、その相棒となるノリがいい男の名前が憲男(ノリオ)…と他にもほとんどの主要人物の名前に遊び心があって面白い。
そこから物語は、文化祭でシンクロをするために、勘九郎と憲男がゼロからシンクロ同好会を立ち上げていく。そのための仲間集めから始まるのだが…まさに王道少年漫画のような努力・友情・勝利の青春ドラマが繰り広げられる。ぶつかり合って不安定に揺れながらも次第にアツイ友情が芽生え、(ほぼ)素人たちが集って使用できるプールがないなどの紆余曲折がありつつも練習という名の努力を重ねて、いよいよ文化祭での本番という勝利を掴むまでの物語なのである。
■時代背景がエモい…演出やセリフの数々!
またコンプライアンスが厳しくなっている昨今では、決して見ることができないあの頃の時代背景が詰め込まれている演出やセリフは、今だからこそ興味深い。
たとえば、男子校である彼らの原動力の大半が「モテたい」であることがはっきり口にされていたり、「男なんだから」と叱られたり、エロ本を賄賂に使ったり、女子校のプールに潜入したり、自転車に二人乗りしたり、ノーヘルのチャリが道路を横切ったり…と、今では見られない“あの頃の光景”に懐かしさを覚える。もちろん、ドラマだから誇張されている部分もあるが、それも踏まえて、あの当時を思い出す。
ドラマの記憶から、それが放送された当時の自分自身へと遡って思い出に耽るのも、昔のドラマを今見返す、醍醐味の一つではないだろうか。青春ドラマのエモーショナルさと自分自身の記憶のエモーショナルさのマリアージュは実に不思議な心地良さがある。まさに二度美味しい。もちろん10代〜20代前半らヤング世代が今初めて観ても、こんな時代だったの!?今のドラマと全然違う…などと楽しめるはずだ。
■福山雅治の主題歌「虹」を含めた音楽との相性の良さ
さらに、主題歌にも注目して欲しい。主題歌は、福山雅治の名曲「虹」。「虹」は2025年の今も時代を感じさせないどころか、新鮮にさえ聴こえる。ゆえに20年以上もずっと歌い続けられ、愛されている印象だ。オープニングの青春を詰め込んだ「ウォーターボーイズ」らしい映像×爽やかでかわいらしいイラストアニメーションともあいまって、この楽曲を耳にするたびにキラキラとした光景が脳内に浮かんでワクワクする。また主題歌以外の「ウォーターボーイズ」らしい劇中曲も、記憶に刻み込まれているほど特徴的でマッチしていた。音だけで「ウォーターボーイズ」の世界観をより一層盛り上げているのだ。時にコミカルに時に切なく、時に爽やかに物語を色濃く彩ってくれる。
さまざまな要素が詰まった「ウォーターボーイズ」。今のこの多様性の時代に通じるような題材で時代の最先端を走りつつも、実は当時の真っ只中がギッシギシに詰め込まれた不思議な青春ドラマ。もちろん、現在日本の俳優界には欠かせない山田孝之、森山未來、瑛太らの高校生姿が瑞々しいのも新鮮だ。ぜひあなたも2025年の今、キラキラしつつも泥臭い輝きとアホっぽくて爽やかな水飛沫を堪能してみてはいかがだろうか?
構成・文=戸塚安友奈
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