4月5日(土) 14:20
まだ若く元気な方であれば、将来医療費が増えていく実感はないかもしれません。ただし、医療費は高齢になるにつれて増えることは統計からも明らかです。
厚生労働省の「令和4年度国民医療費の概況」によると、人口1人当たりの国民医療費(注:保険診療の対象となる治療に要した費用)は、65歳未満の場合、男性で年20.6万円、女性で年21.28万円です。
一方、65歳以上の場合は男性で年84.96万円、女性で年71.94万円となっており、単純に比較すると65歳未満の男性で約4.1倍、女性で約3.4倍になります(※)。
高齢になるにつれ医療費がかかることは、持病が増えたり、かかる診療科も増えたりすることから何となく想像がつくかと思います。さらに、上記に示した数値を念頭に置いておくと、老後に医療費が増えることに対して、より実感を持つことができるでしょう。
なお、上記の数値は保険適用前の額であり、いわゆる自己負担額ではありません。実際に支払う医療費(自己負担)は公的保険の適用によって、原則3割(70歳以上は1~3割)に抑えられています。自己負担額ではいくらになるかについては、後述します。
高齢になると医療費はなぜ増えるのでしょうか?
また、私たちが実際に支払う医療費(自己負担額)はいくらになるのでしょうか?ここでは、医療費を通院(入院外)と入院の場合に分けて見てみます。
まずは通院費用についてです。以下のグラフは、厚生労働省「令和3年度医療保険に関する基礎資料」から抜粋したもので、年齢別の入院外医療費(調剤を含む、ただし保険適用前の金額)を、次の3つの要素に分解して年齢順に並べたものです。
1.受診率(≒何回医療機関にかかったか)
2.1件当たり日数(≒何日医療機関にかかったか)
3.1日当たり医療費(≒1日でどれだけの医療費がかかったか)
次に、入院した場合の費用を見てみましょう。前項と同様に、厚生労働省の資料から以下のグラフを抜粋しています。
入院の医療費は、次の3つに分解できます。
1. 1人当たり新規入院件数(≒入院が発生する頻度)
2. 平均在院日数(≒入院する日数)
3. 1入院当たり医療費(≒1回入院するとかかる費用)
ここまで、医療費を通院と入院に分けて、それぞれ65歳以上になるといくらになり、どれだけ増えるかについて、統計値から解説しました。
その結果、通院(入院外)では65歳以降の1日当たり医療費は自己負担額で約5000円、受診頻度は2倍以上になること、入院では1入院当たりの自己負担額が約35万円、入院日数は2倍以上になることなどが分かりました。
しかし、これらはすべて統計に基づく推定です。一人ひとりの視点で考えた場合は、どのような病気に何歳でかかるのか、若い内の健康状態や生活習慣はどのようであったか、病気になった場合、どのような治療を受け、サービスを受けるのか、などによって大きな違いが出てくることは明らかです。
さらに、自己負担額についても年齢や収入などに応じて保険適用の医療費が定額以下に抑えられる高額療養費制度がありますので、同じ病気で同じ入院をしても、人によって医療費に大きな違いが出ます。
このように人によってさまざまな老後の医療費への備えの1つとして、医療保険に加入することは検討に値します。ご自身の必要保障額を確かめたい場合は、ファイナンシャルプランナーに相談することをお勧めします。
(※)厚生労働省令和4(2022)年度国民医療費の概況 表6 年齢階級、性別国民医療費P7
厚生労働省医療保険に関する基礎資料 参考5年齢階級別1人当たり医療費(令和3年度)(医療保険制度分)
執筆者:酒井乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。
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