【写真】真船佳奈さん、元気いっぱいの親子カット
なにげないつぶやきが全世界に届く現代、炎上の問題は芸能人だけの問題ではない。「テレ東の漫画家」と名乗ってX(旧Twitter)で作品を公開している真船佳奈さんは、『令和妊婦、孤高のさけび! 頼りになるのはスマホだけ?!』や、『正しいお母さんって何ですか!?〜「ちゃんとしなきゃ」が止まらない!今日も子育て迷走中〜』などのコミックも刊行しつつテレ東の社員でもある働く漫画家。いわば会社の看板を背負って漫画家を続ける真船さんに、なぜ「テレ東の漫画家」と名乗っているのか、そして炎上対策についてお話を伺った。
■こっそりつけた「テレ東の漫画家」
――どのタイミングから「テレ東の漫画家」とアカウント名に付け加えられたのか、きっかけや狙いを教えていただきたいです。
そもそも私は、漫画家としてデビューするときに本名で活動する以外の選択肢がなかったんですよ。テレビマンってみんな最後、エンドロールに名前が出るじゃないですか。制作物に責任を持つ、みたいな意味合いもあります。なので漫画家デビューするときも、やっぱり実名で出すことによって、読者さんによりリアルに感じてもらったり、漫画に責任を持つ意味合いも出てくるのかなあ、と。一作目はテレビ東京で番組制作をした経験をモチーフにしているので、「テレ東」の「真船佳奈」としてデビューしました。
そんなわけでSNSアカウントもずっと本名でやっていました。名前に「テレ東の漫画家」とつけたのは、何年か漫画家をやってみて「ずっと真船佳奈で漫画を投稿していたけど、全然引っかかりがない名前だな」と思ったのがきっかけです。
「漫☆画太郎」先生や、「つのだ☆ひろ」さんみたいなインパクトの強い活動名に比べ、普通の名前すぎて覚えてもらえない。漫画家の仕事も名前を覚えてもらってなんぼですし、「この人の漫画面白いよね」という風に名指しで言ってもらえるのがいいなと思って、名前の前に入れられるキャッチフレーズをずっと探していたんです。
ただ最初の頃は「漫画を描きながら会社員やってると、どっちも中途半端になってしまったときに怒られるかも」とか、怯えがあったんですね。そのためしばらく「テレ東の」という枕言葉をつけていなかったんです。
ただ「テレ東で働きながら漫画も描いている」というのが私の1番のアイデンティティだし、唯一無二の個性ではあるのかな、と。だったらそのアイデンティティを使って、どんどん本業にも還元していけたら「別にいいじゃん」と思い直しまして。こっそり変えてから何年も経っていまに至る…という感じです。
――「テレ東の漫画家」をつけたときは、こっそりだったんですね。
こっそりで、はい。別に許可は取っていませんでしたが、怒られることもなくいまに至っております。でも炎上した瞬間に「こいつテレ東がよ」「テレ東の社員って…」と言われる可能性はあるので、「テレ東の社員」をつけることによって「会社のバッジつけて行動しています」みたいな心持ちにはなるというか(笑)。気は引き締まっております。
■炎上回避の考え方
――炎上をしかけたとか、そういったドキドキした経験はありましたか?
何度かはありますね。自分の説明不足だったりももちろんですが、SNS漫画って流れてきたものを前情報なしに流し読みする性質が強いので、そこのケアが十分できていないことが原因のことが多いです。
自分では「この流れなら誤解が生まれないかな」と思っていても、長い連載の中の1話、1コマの切り取りだけ見ると、モヤモヤが残る作品になっている…ということはよくあります。意見を言われて初めて「あー、確かにこれはそう取れる」と反省することもしばしば。
そもそも肝っ玉が小さくて少しでも否定的な意見が出ると「どうしよう」とビクビクしている方なので、投稿したことを後悔した経験は何度もあります。でも炎上経験はそんなに多くない方だとは思いますね。なるべく誤解を避けるルールを常に考えるようにはしています。
――ちなみにそのルールというのは?
炎上にも、良い炎上と悪い炎上があると思っていて。良い炎上というのは、いろいろな人が自分の意見を言いたくなること。賛否両論というか、みんなが作品自体を批判をしているのではなくて、自分の意見を言うための材料となっている“炎上”は別にしてもいいと思っています。
一方でなるべく避けたい炎上は、作品を読んで傷つく人が出たりとか、誤った情報であったり、誤解されたままイメージが広まってしまうことはです。だから本の試し読みを出すときも、切り出す場所に気をつけています。たとえば妊娠・出産期を描いた著書「令和妊婦、孤高のさけび!頼りになるのはスマホだけ?!」(オーバーラップ)では新生児期に夫婦がすれ違い、衝突するシーンが出てきます。喧嘩のシーンは、やっぱり全部の文脈まで読んでもらわないと「どちらかが悪い」というのを決めつける意見が出てしまいがちです。
喧嘩って実際に流れを見てみると、「この流れだったら確かに奥さんがこれくらい怒っても仕方ないね」とか「旦那さんサイドで見てみたらチリツモだったのか。これはたしかに怒るわ」というようなことの積み重ね合いじゃないですか。
著書自体は、全てを通して読んでくれる人用にその背景をしっかり描いてあるのですが、それを全てネットで無料公開するわけにはいかない。むしろ、試し読みは続きが気になるようなモヤモヤするシーンで終わった方が、購入率は上がってくると思います。
なので毎回、購入率と自分の気持ちを天秤にかけて試し読み箇所をどこにするか大変悩むのですが…。
家族のことを描いていることもあり、自分がすり減るよりは「楽しく妊娠・出産のあるあるを読める前半のシーンを載せた方がいい」といった感じで悪い炎上を回避するようにしていました。
――試し読みの考え方としては1番健全ですよね。
そうですね。エッセイマンガを描く心得として、「自分を削り過ぎない」というのも大事にしないとな、とは思っております。
ただ、それは前作までのお話で…。2月5日に出した新作「正しいお母さんってなんですか!?〜ちゃんとしなきゃが止まらない!今日も育児迷走中〜」(幻冬舎)では、その心得も一回忘れようかなと思っています。
この作品は、私自身が「お母さんとしてちゃんとしなきゃ!」と奮起し、いつの間にか追い詰められていく…といったストーリーなのですが、その要因の一つとして、昨今の育児事情を大きく左右するSNS事情のお話が出てきます。
ネット上にこの話を出したら多分荒れるだろうな…とビクビクしながら描いたのですが、そこを怖がっていたら本当にこの本が必要な人に届かないかもしれないと思い至りました。
結果、共感の声はあれど、批判はほとんど出ませんでした。
■SNS炎上の辛さ「こんな叩かれていいわけないだろうと思います」
――「ここは炎上するかもな」という嗅覚は、独学で身につけられたのでしょうか。それとも周りで経験された方がいて、学ばれたのでしょうか。
こちらからチェックしにいくまでもなく、最近はおすすめに炎上している投稿が上がってきたりしますよね。一見、普通の微笑ましい投稿だけど「どうしてこんなに引用数が多いの?」と思って見に行くと、思わぬ理由で火が上がっていたりする。その内容が年々些細なものになっている気がしていて、これくらいで最近は炎上しちゃうの…?」と驚くこともあります。
以前は心配な話は漫画家同士でチェックしたり、家族や編集担当さんに意見を聞いたりなどして「内容を直すか」「載せるのをやめるか」なんかを判断していましたが、昨今の事例を見ると、正直「これは防ぎようがないかも…」というものもあります。
――漫画家目線だと、一般の方よりもより炎上に対する危機感が違いそうですね。
一般の方の炎上については、辛いだろうな、と思います。漫画家の人たちは炎上しても、「枠品を届けたい」みたいな目標が裏にあるのでなんとか耐えられる。
ただ、一般のお母さんの何気ないつぶやきとかがめちゃくちゃ叩かれているのを見ると、本当にかわいそうだなって…。
いろんな事例や事情があるので投稿文だけでは判断できないけれど、心の拠り所をSNSに求めてリアルでは言えない本音をそっと流したつもりが、届くつもりのなかったところまで届いてしまい、何百人の人に攻撃される。めちゃくちゃ恐怖体験だと思います。
もうその人の元に駆け寄って、「いやそうじゃない、こうじゃなかったんだよね、そういうことが言いたかったんじゃない。わかるよ」って言いに行きたくなる。
ちょうど今回の漫画にも書かせていただきましたが、育児界隈の炎上はまた特殊で、投稿に対して石を投げているのが普段は一生懸命に育児をしているママアカウントのことも多いです。
一生懸命になりすぎて、適当に見えるお母さんに対して許せないと思ってしまったり、「正しい知識を教えなきゃ!」と思うがあまりに誹謗中傷に発展してしまったり…。全てきっと「赤ちゃんを守りたい」という気持ちに集約されるとは思うのですが、自分自身もこういった声に肩身が狭くなった経験があるので、本当に現代のSNSは難しいな…と思っています。
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