失われてゆくもの『伊集院光の偏愛博物館』/テレビお久しぶり#146

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失われてゆくもの『伊集院光の偏愛博物館』/テレビお久しぶり#146

4月4日(金) 10:00

「テレビお久しぶり」
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長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『伊集院光の偏愛博物館(ミュージアム)』(BS-TBS)をチョイス。

■失われてゆくもの『伊集院光の偏愛博物館』

伊集院光が、何かを愛しすぎてしまった人による私設博物館へと訪れる番組、『伊集院光の偏愛博物館(ミュージアム)』。今回訪れるのは、東京・神田にある「絶滅メディア博物館」。現在では使われなくなった様々なメディア機器がずらっと展示され、自由に手に取ることもできるという、私のような懐古主義者にはたまらない場所なのだ。

とはいっても、私は1996年生まれ。リアルタイムで触れてきた絶滅メディアといえばゲーム機とか、ガラケーとかウォークマンといったくらいで、それ以前のものを懐かしむことができない。しかし、伊集院光が代わりに懐かしんでくれるから大丈夫。「わー懐かしい」「これあったなあ」とはしゃぎ、館長をもしのぐ勢いで喋り続ける姿は見ていて気持ちがいい。人間、懐かしいものに触れると、口数が多くなるもの。対する館長の博識で明るい人柄も相まって、全編ニヤニヤしながら見てしまった。非常に良い番組である。

こうして、時代に淘汰されていった物たちに並ぶ場所があるというのは素晴らしいことだ。古いものは、どんどん失われてゆく。私も以前、ジモティーで、「閉業となったレンタルビデオショップの在庫を持っていってほしい」という依頼に名乗りをあげ、栃木県まで足を運んだことがある。そこにはお宝のようなVHSがたくさん眠っていて、友人と一緒にはしゃぎながら車に詰めていたら、依頼者の方から「すでに半分以上ゴミに出しちゃったんですけどもったいなかったですねえ」と言われ、膝から崩れ落ちた。まあ、確かに、”お宝のような”というのは個人的主観で、『ブレインスキャン』のVHSにヨダレを垂らす人間はごくごく少数派だとしても、世界各地でこんな風にフィルムやテープが次々と処分されているのであろう現実にクラクラしたのだ。

しかし、私だって、誰かにとってのお宝を、無邪気に捨てている筈。そのことを、覚えてすらいないだろう。時代の淘汰とはそういうもので、だからこそ、この絶滅メディア博物館のような場所は偉大だ。いま必要が無くなって、「思い出す」という行為が、その物への愛情であり、自分の人生を振り返るきっかけにもなる。なるべく色んなことを覚えておきたいし、色んなものを手元に置いておきたい。人生を豊かにするとは、やっぱりこういったことではないか。人は必ず、何かと一緒に生きているのであって、その「何か」のうちの一つを思い出させてくれるようなこの博物館は、やはり素晴らしい。私は神田も大好きだから、すぐにでも行ってみたいね。帰りは鬼金棒に寄ろう。

■文/城戸



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