【世界フィギュア女子】坂本花織「うれしくて泣いて、悔しくて泣いて」 4連覇逃すも五輪へ「身が軽くなった」

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【世界フィギュア女子】坂本花織「うれしくて泣いて、悔しくて泣いて」 4連覇逃すも五輪へ「身が軽くなった」

3月31日(月) 22:05

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世界フィギュア2025・女子シングル レビュー

【リンクサイドで泣き続けた坂本花織】アメリカ・ボストンで開催されたフィギュアスケートの世界選手権。3月28日(現地時間、以下同)の女子フリーを終え、大会4連覇を逃した坂本花織(シスメックス)は自身の演技終了後、泣き続けた。

「今日の演技は、自分のできることをやりきれたので満足しています」と話す坂本は、演技後にしばらく氷上で喜びをアピールし、力強いガッツポーズも見せた。ショートプログラム(SP)とフリーの合計得点は217.98点。他の選手の実績を見れば、表彰台は確実で、優勝してもおかしくない得点だった。

世界選手権で2位になった坂本花織 photo by AFLO

世界選手権で2位になった坂本花織 photo by AFLO





だが、坂本のあとに4人の演技者。その演技を、暫定1位の選手が座るリンクサイドで見ていた。

「今日は会場入りする前からとてつもなく緊張していて、その緊張感のなかでなんとか自分の演技をやり終えて満足していました。残りの4人の演技に感動して泣いて、最後のアリサ(・リュウ/アメリカ)が優勝を決めて、すごくうれしくて泣いて。同時に悔しくて泣いて。いろんな感情がこみ上げていました」

女子史上5人目、66年ぶりの世界選手権4連覇。その偉業を坂本は、2月の冬季アジア大会の敗戦から強く意識した。だが、緊張していたのは坂本だけではなかった。彼女とともに表彰台争いをすると目されていたキム・チェヨン(韓国)やアンバー・グレン(アメリカ)も同じだった。

坂本は3連覇中の女王で、ふつうに考えれば、キムとグレンのふたりは挑戦者としてリラックスした気持ちで挑めるはずだった。しかしグレンはGPファイナルで坂本に勝利し、キムは冬季アジア大会で坂本を下していた。相手が絶対王者ではないと肌で感じたからこそ、世界選手権の初優勝を強く意識するようになっていたのだろう。

【重圧に表彰台候補が軒並み失速】力みが出たのは、3月26日のSPだった。第3グループでは、リュウが74.58点を出し、樋口新葉(ノエビア)は72.10点、千葉百音(木下アカデミー)は73.44点を出している状況だった。

坂本、キム、グレンの3人のうち最終グループで最初に登場したグレンは、冒頭のトリプルアクセルで転倒。そのあとのジャンプは決めたものの、コンビネーションスピンと最後のステップシークエンスはレベル3と取りこぼし、67.65点にとどまった。

続くイザボー・レビト(アメリカ)が73.33点を出したあと、坂本は緊張した表情のなかで前半は丁寧な滑りをしたが、後半に入ると3回転フリップが2回転になるミス。それでも3回転トーループを付けたが、ステップシークエンスがレベル3の取りこぼしもあり71.03点。その時点で暫定5位と予想外の結果になった。

そのふたりを下回ったのが、四大陸選手権で優勝している最終滑走のキムだった。最初のダブルアクセルはいつものように決めたが、次の3回転フリップからの連続ジャンプは、3回転トーループが回転不足になって転倒。そのあとは、はつらつさがない滑りになってGOE(出来ばえ点)加点を稼げず、今季自己最低の65.67点に。SPは坂本が5位、グレンが9位、キムが11位と、表彰台候補が軒並み失速するスタートになった。

【アリサ・リュウがノリノリの演技で優勝】2日後のフリー。キムは後半にミスを重ねて浮上できずに合計194.16点、グレンも最初のトリプルアクセルは着氷したがジャンプのミスが複数出て合計を205.65点。そんななか、坂本は勢いのある滑りを見せた。

今季から入れている前半の3連続ジャンプは、最後の3回転サルコウは回転不足で、後半の3回転フリップからの連続ジャンプはセカンドの3回転トーループが4分の1回転不足の「q」判定だったが、スピンとステップはすべてレベル4で流れのある大きな滑りだった。

フリーの得点は146.95点で合計は217.98点。そのあとの選手たちのシーズンベストを考えれば、なんとか逃げきれそうな得点だった。

だが、それを阻んだのは千葉が合計を215.24点にして表彰台を確定したあとに登場した最終滑走のリュウだった。

トリプルアクセルを武器にしていたシニア移行の2022年北京五輪シーズンは219.24点の自己ベストを出し、北京五輪は6位で世界選手権は3位。そのあと一度引退したが、今季になって復帰。大技のない構成でも今年1月の全米選手権は215.33点を出していたが、2月の四大陸選手権は198.55点で、その得点がISU(国際スケート連盟)公認のシーズンベストだった。

今回は、地元アメリカの大声援に背中を押された。フリーは復帰シーズン最大の舞台を楽しもうするようなはつらつとした滑りで、回転不足もないノーミスの演技。とくに観客のボルテージが上がった終盤のステップシークエンスは、ノリノリで踊るような滑り。自己最高の148.39点を出し、合計を222.97点にしての初優勝を決めた。

リュウの勝利を坂本は、「以前から変わらない彼女の明るさと元気さが、世界チャンピオンという結果に導いたのだと思います。明るさと元気さ、優しさと人のよさがパワーアップしたというのをすごく感じました」と、祝福した。

【五輪へ向けて「身が軽くなった」】坂本は、今回の結果を次の五輪シーズンに向けて前向きに捉えている。

「目標に掲げた4連覇は達成できなかったけれど、それで身が軽くなったといえば軽くなった。この結果を経験できたおかげで次は挑戦者の気持ちで挑めるので、次の五輪に向けて大事な経験だったのではないかなと思います。今のこの悔しさは、きっと必要な経験だったのだろうなと感じています」

世界選手権4連覇という肩書きをもって五輪に臨むのと、それを一回肩から降ろして新たな気持ちで臨むのとでは精神的な重圧もまったく違う。それは今回の、ひとつのプラス材料だったという。

またフリーの前半の3連続ジャンプと後半の連続ジャンプは回転不足の判定だったが、これは今季からの新たに挑戦しているもの。以前は苦手にしていた、基礎点がもっとも高い3回転ルッツを2本入れるために3連続をオイラーが入ったものにした。

さらに3回転+3回転を基礎点が1.1倍になる後半に入れたのも昨年12月のGPファイナルから。それは、昨年11月のNHK杯ではシーズンベストの231.88点を出したが、そこにさらに上積みしたいという狙いからだ。

また、来季へ向けてはプログラムの選択への期待もある。2022年の世界選手権では、ブノワ・リショーの振り付けで自己最高得点を236.09点まで伸ばしたが、そのあとは新しいチャレンジをしたいと振付師をかえ、これまでやらなかったジャンルの曲にも挑戦している。

そのなかで坂本は「ここ数年はショートが自分のなかで悩みだった」とも明かしているが、それも含めて今の自分のよさをもっとも発揮しうるプログラムを選ぶ準備もできているといえる。

2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪のライバルとして、今回は不調だったグレンやキムだけではなくリュウも台頭してきた。坂本は最終章でもあるシーズンへ向けて全開で挑む準備をここから始めていく。

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