3月27日(木) 19:20
観光地での二重価格の現状についてみていきましょう。2025年に開催されたさっぽろ雪祭りでは、スケートリンクの入場料に「札幌市民割」が導入され、話題となりました。
通常、大人の当日券は3000円ですが、札幌市民割価格では1500円となり、地元民が優遇される形となっています。なお、この価格には、シューズ代も含まれています。
また、海外でも二重価格を採用している例があります。インドのタージマハルでは、インド国内に住む人は50ルピーで入場できますが、観光で訪れた日本人などの外国人は1100ルピーと、料金に大きな差があります。
1ルピーを1.7円のレートで換算すると、インド国内に住む人は85円、外国人は1870円となり、その差は実に22倍にもなります。このような料金差は、世界中のいくつかの観光地でみられます。
観光地が二重価格を採用する理由は、観光資源の維持やオーバーツーリズム(観光公害)対策のために必要な財源を確保することが主な目的です。
特に、インバウンド向けの価格設定については、円安や物価水準の違いにより、訪日客に高い負担能力があると見込み、負担を多く求める狙いがあります。また、観光地で外国語表記のメニューや案内を提供するなど、観光客対応には追加コストが発生するため、価格差を設けることは自然な対応とも考えられます。
国内の観光客向けにも、例えば、札幌雪祭りの開催には札幌市の財源も使用されているため、市民はすでに税金によって負担をしているともいえます。このような背景から、地元民優遇策として価格差が設けられている理由は理解できるのではないでしょうか。
二重価格の採用に対して、「差別的だ」との意見もありますが、観光地の維持や地域経済の支援を目的とした戦略として、日本でも導入する動きが見られます。
実際に国内では、札幌市の事例以外にも二重価格の導入や検討が進んでいます。
例えば、兵庫県姫路市では、世界文化遺産である姫路城の入城料を、市民以外には2500円に値上げする改正案が市議会に提出されました。この措置は、城の維持管理費用を確保するためのもので、札幌市の雪祭りの事例と同様、市民には税金での負担があることから、料金を据え置く方針です。
京都市でも、観光客の急増により市バスが混雑し、市民の利用に支障をきたしていることから、観光客向けの「観光特急バス」の導入を検討しています。
観光客をそのバスに誘導することで、市民と観光客の利用のすみ分けを図ろうというものです。これは、観光資源を守りつつ、地域住民への影響を最小限に抑えることを目的としています。
このような動きは、オーバーツーリズムへの対策として、今後も日本全国で広がる可能性があります。
春休み中で、観光地での料金差について関心をもつ人もいるでしょう。観光地が二重価格を導入する理由には、観光資源の維持や地域経済の支援があるため、観光客としてはその背景を理解する必要があります。
二重価格が当たり前になるかどうかは、各地域の対応次第ですが、観光地の維持と円滑な運営を考慮した措置として広がっていく可能性は高いと考えられるでしょう。
さっぽろ雪まつり 公式ガイドブック
インド ウッタル・プラデーシュ州政府観光局 タージマハル公式ウエブサイト
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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