「パラサイト半地下の家族」のポン・ジュノ監督と「TENET テネット」のロバート・パティンソンが初タッグを組んだ映画「ミッキー17」のジャパンプレミアが3月26日、グランドシネマサンシャイン池袋で行われ、ポン監督、プロデューサーのチェ・ドゥホ、そして監督ファンの町田啓太、元使い捨てワーカーの“ジャパニーズ・ミッキー”こととにかく明るい安村、そして花束ゲストとして山崎貴監督も出席した。
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【フォトギャラリー】「ミッキー17」ジャパンプレミアの様子
エドワード・アシュトンの小説「ミッキー7」をポン監督が映画化した本作は、人生失敗だらけのミッキーが使い捨てワーカーとして、何度も死んでは生き返る任務――究極の“死にゲー”に従事するさまを描き出す。大勢のファンが集まった会場にやってきたポン監督は「今日はお越しくださってありがとうございます。『パラサイト半地下の家族』以来5年ぶりの来日となります。今日はお目にかかれてうれしいです」とあいさつ。
この日は、英国のオーディション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」で日本人初の決勝進出を果たした“トニー”こと、とにかく明るい安村がゲストということもあり、登壇前から安村のネタを楽しみにしていたというポン監督。そんなポン監督からの期待のまなざしを受けた安村も「俺のネタを見たくて見たくて。早く脱げという顔をされてますね」と笑ってみせた。
さっそくポン監督の前でネタを披露することにした安村は、まずは韓国の豚バラ肉の焼き肉「サムギョプサル」を題材とした韓国の全裸ポーズ、そして「ミッキー17」より、ヒューマンプリンターを使ってもうひとりのミッキーのコピーが生み出される瞬間の全裸ポーズを披露。それにはポン監督も、チェプロデューサーも親指を上げて大爆笑。「身を投げ出したユーモアに感動しました」と語るポン監督も、「安心しました」と笑顔で語った。
そしてあらためて本作の主人公ミッキーについて「労働者として極限の状態に置かれ、極限の職業に身を置いているつらい状況ですが、最後まで生き残ろうとしている。それがわたしが重要に考えていた価値でもあります」と語ったポン監督。「ミッキーがヒューマンプリンターから出力されるときは、安村さんのように何も着ていません」と冗談めかして会場を沸かせた。
さらに安村が、ポン監督に「ジャパニーズ・ミッキーとして、使い捨てワーカーにならないためにはどうしたらいいですかね?僕は求められたいんです」と相談を持ちかけると、ポン監督は「イギリスに行かれた時は、今よりもはるかに多くの観客の皆さんの前で歓声を浴びたわけじゃないですか。安村さんは独自のオリジナリティーあふれる世界を築いていると思います」と返答。それには安村も「満足です」と満面の笑みを見せた。
また町田からは「普段、どういうところにインスピレーションを受けて、この作品に投影させたのか?」といった質問も。それには「わたしはインスピレーションを得るために旅をしたり、特別なことをするタイプではありません。ただ日常のささやかなことを見逃さないようにしているんです。たとえば豚骨ラーメンを食べている途中に、スープがズボンの上にパッと落ちてしまうことがあったとして『これはどんな意味があるんだろう』『なぜ自分の身にこういうことが起きたのか』『これをどうしたらいいんだろう』といった考えを巡らせていくうちに、いろんなことが思い浮かんでくるんです。そういった小さいことから始めるんです」と創作の秘密を語った。
さらに主演のパティンソンについて「優れた俳優であると同時にクリエイティブな俳優でもあります。そして人間的にも本当にやさしい方なんですよ。ですから、わたしだけでなく現場のスタッフからも人気がありました」と語るポン監督は、「彼はなんだかプリントしたくなる顔というか、そういった雰囲気がありましたね」と笑いながら付け加えた。
本作の注目ポイントについては「この作品には社会的、政治的風刺も描かれていますし、ミッキーが置かれた困難な状況は、わたしたちが生きている現実を反映しているように思います。ですが、そんな残忍に思えるシステムの中で、彼らが生きることができたのは愛の力だと思います。この映画はラブストーリーでもあるんです。自分にとってははじめてのラブストーリーになっているので、その観点でもご覧になっていただけたら」と会場に呼びかけた。
「ミッキー17」は、3月28日に全国公開。
【作品情報】
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ミッキー17
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