「不妊治療しています」「していました」ということをなかなか周りの人たちに言いづらかったのですが、勇気を出してカミングアウトすることで、職場で配慮を受けられたり、仲間が見つかったりすることがありました。「不妊治療している(していた)ことを周りに伝えてよかったな」と感じた私の体験談をお伝えします。
不妊治療のため、勤務時間を調整してもらえた
不妊治療を始める前は、フルタイムのパートとして週5日、1日8時間働いていました。しかし、不妊治療を始めると、治療のために休みがちになってしまいます。しかも病院からは「生理1〜3日目までに来てください」「次は明後日に来てください」と言われてしまうので、前もって通院の予定が立てられません。
はじめは「不妊治療するなら、仕事を辞めるしかないのかなぁ」と思っていたのですが、ダメ元で上司に「不妊治療を始めたいので、勤務時間を短くしてほしい」とかけあってみることにしました。上司は驚きつつも快く承諾してくれて、短時間勤務だけれど健康保険もそのまま加入し続けられるよう配慮してくれました。
短時間勤務になったあとは、可能な限り勤務後の時間に通院の予約を入れるようにして、できるだけ仕事を休まないよう調整し、働き続けました。もちろんどうしても休まないといけないこともありましたが、上司も事情をわかってくれているので、後ろめたい思いをすることもありませんでした。仕事を辞めなかったことで、妊娠後も働き続けて、産休や育休もとらせてもらい育休給付金を受給できたので、経済的にも助かりました。職場には感謝していて、勇気を出して伝えてよかったなと思っています。
SNSで同じ悩みを持つ人とのつながり
不妊治療は夫婦で取り組むものですが、一般的に通院回数などは女性のほうが多く、精神的にも肉体的にも女性にかかる負担のほうが大きくなりがちだと思います。私は不妊治療中、夫がつらさをあまり理解してくれていない気がして、気が滅入ってしまうことが多くありました。
たとえば、年賀状を見ているとき。夫が「俺たちよりあとから結婚した友だちのところに子どもが生まれたんだって、早いよね」と言ってくるのです。夫に悪気はないのですが、「なんでわざわざ神経を逆なでするようなこと言うの?」と苛立ってしまいました。
そんなときに逃げ込んだのがSNS。見ず知らずの不妊治療中の人たちとつながり、夫への愚痴ツイートや、「つらい、しんどい」というツイートにコメントしあうことで心が晴れて、「また治療、頑張ろう」という気になれました。私はSNS上では本名を公開していなかったので匿名ではありますが、治療内容や思いをオープンにすることで、心のバランスを保っていた気がします。
ママ友との絆が深まった
体外受精で第1子を授かって2年、再度体外受精にチャレンジして第2子を妊娠しました。そのころ公園で仲良くなったママ友と話していると、そのママ友が「うちも2人目が欲しいけれど、なかなかできないからうらやましい」と打ち明けてくれました。
私が「実は、うちは2人とも不妊治療で、体外受精でね……」と伝えると、ママ友は驚きつつ、「いや実は、うちも今クリニックに通い始めて、人工授精から始めていて……。ねぇねぇ、最終的にいくらかかった? 体外受精の体への負担はどうだった?」と、かなり会話が弾み、自分の経験をママ友に伝えられました。悩みを共有するもの同士、絆が深くなった気がして、そのママ友とは引越して離れたあとも連絡を取り合う仲です。
不妊治療中はいろいろなことをひとりで抱え込んで悩んで孤独になりがちでしたが、会社にも理解ある人がいたり、周りの友だちにも不妊治療中の人がいたので、勇気を出してカミングアウトしてよかったと思っています。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
著者:矢野あい子/女性・主婦。2歳の女の子と0歳の男の子の母。子どもは2人とも体外受精で授かり、帝王切開で出産。
作画:しおみなおこ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています
監修者・著者:助産師 松田玲子 医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。
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