コーヒーで旅する日本/九州編|別府の日常に根づき、温泉地ならではのコーヒーも作る。「オセロスペシャルティコーヒーロースター」は次の10年へ

地元の会社や店舗、自宅向けにコーヒー豆1kg〜利用できるサブスクサービスも行っている

コーヒーで旅する日本/九州編|別府の日常に根づき、温泉地ならではのコーヒーも作る。「オセロスペシャルティコーヒーロースター」は次の10年へ

3月10日(月) 0:00

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。
【写真】「Beppu Onsen Coffeeドリップバッグ」の焙煎を見据えて導入したフジローヤル15キロ
なかでも九州・山口はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州・山口で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

フレーバーを重視して選んだ焙煎機GIESEN W1

九州編の第113回は大分県別府市にある「オセロスペシャルティコーヒーロースター」。今年で開業10周年、スペシャルティコーヒーに特化するロースタリーとしては大分県内では先駆け的存在だ。もともとカフェ利用もできるようにしていたが、今は焙煎と豆売りに特化したスタイルにシフトチェンジしているのは、地域の暮らし、日常にしっかりと根付いている証だろう。
別府市で生まれ育ち、観光ホテルでセラピストとして10年ほど働いた経験を持つ店主兼ロースターの高部美希さん。なぜコーヒーの焙煎士の道を目指したのか、そして10年の節目を迎えた今、どんな目標を持っているか聞いてみたい。

オーナーロースターの高部美希さん

Profile|高部美希(たかべ・みき)さん
大分県別府市生まれ。もともと両親が別府市内でジャズ喫茶を営んでいたことから、子どものときからコーヒーと身近に関わる。高校卒業後、観光ホテルで働きながら趣味で手網焙煎を始めたのが本格的なコーヒーの入口。ロースターを目指すため、前職のセラピストを退職。2015年9月、「オセロスペシャルティコーヒーロースター」を開業。2016年、Qアラビカグレーダー、Qロブスタグレーダーの資格を取得。現在は豆売り専門店として営業。

■別府の日常に癒やしを
ボードゲームのオセロのキャッチコピー「覚えるのに1分、極めるのに一生」にピンときて屋号を決めたそう

全国有数の温泉地、別府市の秋葉通り沿いに小さく掲げられた看板。ガラス戸越しに見える大きな焙煎機がシンボリックなコーヒーショップが「オセロスペシャルティコーヒーロースター」だ。外から見えた焙煎機は、半熱風式のフジローヤル15キロで、きれいに塗装・整備されているが、メーカー名の刻印やフォントなどから、歴史あるマシンだとわかる。聞けば半世紀以上前の焙煎機で、宇佐市の老舗喫茶から譲り受けたものだと店主の高部美希さんが教えてくれた。

フジローヤルの半熱風式焙煎機。カスタムも施している

ただ、実はこちらの焙煎機を導入したのは2024年で、長年メインの焙煎機として愛用しているのはオランダGIESENの1.5キロ釜。そしてGIESENの前、開業時から数年使っていたのが半熱風式のフジローヤル1キロ。そんな焙煎機の変遷からも、きっと店を開いてからの10年でいろいろな変化があったのだろうと推察できる。まずはどんなきっかけでコーヒーの世界に飛び込んだのかを聞いてみた。

生まれ育った別府が大好きだと話す高部さん

「もともと別府市内の観光ホテルでセラピストとして働いていたんです。お客さまをマッサージするなど、肉体的には結構ハードな部分もありましたが、お客さまに癒やしの時間をご提供しているというやりがいや楽しさもありました。そして、そんな仕事の合間に飲むコーヒーに私は癒やされていて、ふとセラピストもコーヒーも“癒やし”という部分は同じだなって思ったんです。セラピストは非日常の癒やし、コーヒーは日常の癒やし。より多くの人に、日常的に癒やしの時間をご提供できるコーヒーって、すてきだなって考え始めたのが惹かれたきっかけ。ちょうど前職を続けるか、違う道に進むかを選ぶタイミングでもあったので、思い切ってコーヒーの道に進もうと決めました」と高部さん。
■温泉を活かしたコーヒーって?
コーヒー業界では唯一の国際資格とされているQグレーダーの資格を取得

「オセロスペシャルティコーヒーロースター」はそうやって日々の癒やしを提供できたらと、真摯にコーヒーと向き合ってきた。米国コーヒークオリティインスティテュート(CQI)認定のQアラビカグレーダー、Qロブスタグレーダーの資格を取得し、客観的にも高い品質と認められたスペシャルティコーヒーを厳選する。

コーヒーはハウスブレンド2種、シングルオリジン約7種をラインナップ

開業当時はまず「スペシャルティコーヒーとは?」というところから伝え、その魅力を広めていく。地道に、丁寧にファンを増やしてきた10年。異業種からの転職であったため、しっかりとコーヒーの品質を評価できる資格を取得するところから始めるなど、高部さんは、とにかくまっすぐな人。派手さはないけれど、逆にそれが安心感につながるという印象を受けた。

コーヒーのテイクアウトは可。Mサイズ500円、Lサイズ700円。マシンで抽出

高部さん自身、おっとりとした人柄で、自然体、ナチュラルといった言葉が似合う雰囲気。ただ、前述したように2024年に15キロサイズの焙煎機を導入するなど、新しいことへの挑戦にも積極的で、変化をいとわない人。今までは1.5キロサイズの焙煎機のみだったのに、なぜ大幅にサイズアップした焙煎機を導入したのか。その理由が2025年1月から販売をスタートした新商品「Beppu Onsen Coffeeドリップバッグ」にある。

地元の会社や店舗、自宅向けにコーヒー豆1kg〜利用できるサブスクサービスも行っている

「これまでは地元に暮らす方々の日常に寄り添うコーヒーをご提供できるよう心がけてきました。おかげさまでまもなく丸10年を迎えますが、次のステップとして温泉地・別府ならではのコーヒーを発信したいと手掛けたのが『Beppu Onsen Coffeeドリップバッグ』です。たくさんの観光客の方が来られる別府という土地柄、ちょっとした手土産にちょうどいいコーヒーが作れないかとは長年考えていて、念願かなって形にできたのが『Beppu Onsen Coffeeドリップバッグ』。生豆を飲用許可も取得した温泉水で洗い、その後、蒸すようなイメージで焙煎しています。生豆を温泉水で洗うことで、クリーンですっきりとした味わいかつ、フレーバーがはっきりと感じられるドリップバッグに仕上がった思います」と高部さん。

Beppu Onsen Coffeeドリップバッグ(1個290円、3個入り930円※販売店舗により価格は異なる)

飲ませてもらうと、確かに後口がすっきりとしていて非常に飲みやすい。焙煎度合いも中煎りと中深煎りの間ぐらいなので、多くのコーヒー好きにフィットしそうだし、親しい人への手土産にはベストだと感じた。なにより、パッケージもかわいいし、別府という街で親しまれてきた「オセロスペシャルティコーヒーロースター」のストーリー性も感じられていい。

【写真】「Beppu Onsen Coffeeドリップバッグ」の焙煎を見据えて導入したフジローヤル15キロ

「Beppu Onsen Coffeeドリップバッグ」は店舗をはじめ、別府市内の雑貨店「SPICA」、百貨店「トキハ」、大分空港の売店などでも販売しているといい、今後もっと販路を広げていきたいと力強く語る。そのために15キロと大容量の焙煎機を導入したというから、高部さんは明確に将来のビジョンを見据えたしっかり者だ。
全国有数の温泉地、別府を表現したコーヒー。地域に根づき、愛されてきた10年があったからこそのオリジナリティのあるプロダクトだけに、ぜひ見かけたら手にとって、飲んでみてほしい。

グアテマラ、ブラジル、エチオピア、ルワンダ、中国など産地はさまざま

高部さんは最後にこう話した。
「別府は海外から観光客がたくさん訪れるのをはじめ、留学生が多いこともあり、国際色豊かな土地。コーヒー豆の産地国から日本に留学している学生さんと接する機会があったり、よりコーヒーを身近に感じられる環境にいられるのはロースターとして恵まれていると実感しています。コーヒーを通して日々の癒やしをお客さまにご提供していくのはもちろん、生産現場のことなどを伝えられるようなコーヒーショップでありたいです」

■高部さんレコメンドのコーヒーショップは「Create Coffee Lab」
「大分県大分市にある『Create Coffee Lab』さん。オーナーロースターの椎原さんの人柄に惹かれているファンは相当多いと思います。ハンドドリップの技術を競う、コーヒーブルーイングトーナメントジャパン2023でも優勝。各種競技会にも積極的に挑戦する姿に刺激をもらっています」(高部さん)

【オセロスペシャルティコーヒーロースターのコーヒーデータ】
●焙煎機/GIESEN W1、フジローヤル半熱風式15キロ
●抽出/コーヒーマシン
●焙煎度合い/中煎り〜中深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム850円〜




取材・文=諫山力(knot)
撮影=坂元俊満(To.Do:Photo)

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