三笘薫に何が起きているのか チームは6連勝、ゴール数増加の陰で失われた「縦突破」

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三笘薫に何が起きているのか チームは6連勝、ゴール数増加の陰で失われた「縦突破」

3月9日(日) 0:55

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8位ブライトンが9位のフラムをホームに迎えた一戦。結果は試合終了寸前に得たPKをジョアン・ペドロ(ブラジル代表)が決め、ブライトンが2-1で逆転勝利を飾った。

左ウイングとして先発した三笘薫は後半41分までプレー。10段階で独自に採点するならば6弱の出来映えだった。ミスらしいミスは皆無だったが、ウイングとして、またアタッカーとして、相手に大きな脅威を与えることができずに終わった。なにより目を惹くプレーを披露することができなかった。

左右の比較でいうなら、右ウイングとして先発し、後半31分までプレーしたヤンクバ・ミンテ(ガンビア代表)のほうがウイングプレーヤーとして見せ場を多く作った。

ここ数試合、ウイング色を抑えるかのようにプレーしていた三笘。大外で構える時間が長いミンテに対し、長い時間、内側で構えていた。それはベンチからの指示なのか、個人の判断なのか。

サイドに適性がない選手がウイングをまかされたとき、居心地のよさを求めて内側に入るケースがある。古くは中村俊輔、最近では香川真司、南野拓実がそれに該当するが、三笘にその癖はない。内に入るなと言われれば左のサイドアタッカーに徹し、スペシャリストとしてプレーすることができる。右のミンテと比較すると、監督から同じタスクを課せられた選手には見えなかった。

だが、フラム戦の三笘は、少なくともポジション的にはミンテと左右対称の関係にあった。最近では珍しく、多くの時間でタッチライン際に張って構えた。ウイングらしいプレーを発揮する舞台は整っていたかに見えた。

フラム戦に先発、後半41分までプレーした三笘薫(ブライトン) photo by ZUMA Press//AFLO

フラム戦に先発、後半41分までプレーした三笘薫(ブライトン) photo by ZUMA Press//AFLO



にもかかわらず、不発に終わった。たとえば、前半19分。左の高い位置でボールを受けたとき、縦に抜ける勝負を仕掛ける環境は整っていた。ところが三笘は前進を止め数秒間停滞する。左SBペルビス・エストゥピニャンの攻撃参加を待った。背後を駆け抜けたエクアドル代表SBのその鼻先にパスを通したが、それはフラムのDFに見抜かれていた。意外性に欠ける連係プレーとなった。早いタイミングで三笘が仕掛け、縦勝負を挑んだほうが相手を驚かすことができていたはずだ。

【相手を縦にかわすことができない】前半40分にも左の高い位置でボールを受けるシーンがあった。だが、三笘は縦勝負を挑まず、再びその背後を忠実に走ったエストゥピニャンにもパスを出さず、無難に後方へ戻している。ここまで勝負した回数はゼロ。歌を忘れたカナリアならぬ、ドリブル勝負を忘れた三笘と化していた。

この間、MFヤシン・アヤリ(スウェーデン代表)、MFカルロス・バレバ(カメルーン代表)は、三笘がフリーで構えているにもかかわらず、パスを送ることを躊躇し、方向を転換している。"三笘頼み"だったこれまでからは考えられない、嘘のようなシーンだった。

あえて最大の見せ場を言うならば、前半45分のプレーだ。自軍の深いところでボールを拾ったミンテが、左前方で構える三笘の先に左足で数十メートルの縦パスを送り込んだシーンだ。三笘は対峙するティモシー・カスターニュ(ベルギー代表)とトップスピードで併走しながら、このボールをナイストラップ。チェルシー戦のスーパーゴールを彷彿とさせる鮮やかなプレーを披露した。ところが、さすが三笘と思ったのも束の間、カスターニュに身体を寄せられボールを失ってしまう。

後半6分にはカスターニュに対しこの日、初めて自ら縦勝負を挑んだ。しかし抜けなかった。あえなく止められてしまう。自信満々だったかつてとは明らかに様子が違っている。「いったんトライしなくなると、どんどん抜けなくなる」とは、あるウインガーの言葉だが、その気配をいまの三笘にうかがうことができる。直近の10試合ぐらい、相手を縦にきれいにかわすことができていない。

一方で、三笘はその間に、先述のスーパーゴールを含めて得点を重ねた。ウインガーとしてではなく、アタッカーとしてその名を上げた。トータルで見れば大活躍となる。これを万々歳と見るか、心配するか。筆者は後者だ。まさにドリブル&フェイントという自身最大のセールスポイントが失われつつある現状を憂いたくなる。

久保建英ならば、もっと1対1の勝負を積極果敢に挑んでいるだろう。先のヨーロッパリーグの対マンチェスター・ユナイテッド戦、レアル・ソシエダの右ウイングは、タッチライン際を小刻みなタッチと軽やかなステップで再三、縦突破を図った。恐いもの知らずといった感じで、慎重な三笘とは対照的な姿を描いた。三笘に欠けつつある魅力が久保にはある。久保に三笘がチェルシー戦で見せるスーパーゴールは望めない。直進性溢れる推進力はないが、ウインガーとしての魅力に限れば、いまの三笘に勝る。

日本代表が4バックで戦う時、三笘は左ウイングで起用される。サイドのスペシャリストとして扱われる。一方、久保が右ウイングでプレーする機会はほとんどない。森保監督は久保を内側の1トップ下周辺に据える。欧州での両者の姿とは真反対な立ち位置である。

心配なのは三笘だ。ウイングプレーヤーとして軽いスランプに陥っていると見る。代表ウイークを機に本来の切れ味を取り戻すことができるか。三笘の縦を突くタッチライン際のドリブル&フェイントに目を凝らしたい。

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