【写真】山田太一氏に関する思い出を語る俳優・山崎努
亡くなった今も「一ワットの魂の光を灯し続ける」山田太一氏をご存じだろうか?「男たちの旅路」(1976-1982年)や「早春スケッチブック」(1983年)等で知られる脚本家だ。最近では、山田氏の小説「異人たちとの夏」をアンドリュー・ヘイ監督が「異人たち」として2023年(日本公開は2024年)に再映画化したことでも話題となった。日本映画専門チャンネルでは、2023年11月29日に亡くなった山田氏を偲んで、特集「没後1年を偲んで名優が紡ぐ山田太一の言葉」を放送中。その中で、山田太一作品の魅力を関係者が語りつくすオリジナル番組「山田太一特別番組魂に一ワットの光を~2025年・山田太一を語り継ぐ~」が、3月14日(金)22時より放送される。
■作り手たちによる証言から再び山田太一ドラマを見つめ直す特別番組
同オリジナル番組は、没後1年となった今、第一線を走る作り手たちによる証言から再び山田太一ドラマを見つめ直す特別番組。数多くの名作を執筆し、日本のドラマ界に“光を灯し続ける”脚本家・山田太一氏。そんな山田太一ドラマの“光”に集まった作り手たち・大根仁、清田麻衣子、古沢良太、西川美和、水橋文美江が、その魅力をそれぞれの視点から証言していく。また、「早春スケッチブック」に出演し、本作は自らの代表作だという俳優・山崎努も、山田氏との思い出や山田ドラマの神髄を語っている。
「早春スケッチブック」を振り返った山崎は、「やっぱりそれぞれ(登場人物が)魅力的だったからね。本当に懐かしいよな。ディテールまで12回(話)全部覚えているよ」と放送から40年以上経った今でも山田氏が紡いだ言葉が自身の中に鮮明に残っていることを告白。
「リーガル・ハイ」(2012年ほか、フジテレビ系)などを手掛ける脚本家・古沢は山田氏の「男たちの旅路」について、「全く違う価値観を持った世代の両者が自分たちの考えをぶつけ合う、些細なことでもちゃんと意見を戦わせるっていう、そのディスカッションドラマみたいなところと、セリフがすごくロジカルでカッコいいところ。僕は、それに憧れて『リーガル・ハイ』っていう弁護士が論争するドラマをやりたいと思って。だから、きっかけはこれ(『男たちの旅路』)なんですよね」と人気ドラマの誕生秘話を明かす。
■山田太一ドラマが与える影響
他にも各作り手たちが、山田氏の作品や言葉から影響を受けていることを振り返っている。つまり、山田氏は今も国内外問わず映像界に光を灯し続けているのだ。同時に、クリエイターらだけでなく我々一視聴者たちにも魂の光を灯し続ける。それは、山田氏が手掛けるドラマの登場人物の多くが“普通の人”たちであり、彼らが直面する現実を描きながら、常にその時代(現代)を鋭く切り取ってきたから。
ただドラマを観ている私たちにも時に何か新しい気付きを与え、時に眠っていた感情を叩き起こし、時にそっと寄り添ってくれる。どんな人生を送る人たちにも、影響を与える作品たち。それはまるで月の光のようで、迷っているときには道標にもなる。
同業者であるクリエイターたちはさまざまな視点からその作品を観ている。このオリジナル番組では、山田太一ドラマがまた違った角度から観察されているため、解釈が実に新鮮で面白い。この番組を観ることで、山田太一ドラマの面白さがさらに深みを増すことだろう。
さらに山田氏がどんな人物で脚本家としてどう優れていたのか、山田太一という人物像がより立体的になり、作品自体の厚みも増す。たとえ、これまで山田太一ドラマを一度も観たことがないという方たちも「山田太一特別番組魂に一ワットの光を~2025年・山田太一を語り継ぐ~」は、ドキュメンタリー番組としても楽しめるはずだ。
また3月は先述の名作「早春スケッチブック」第1~6話が3月13日(木)17:00から、第7~最終12話が14日(金)17:00より放送されるほか、1986年のドラマ「シャツの店」(全6話)も3月25日(火)から28日(金)にわたってリピート放送される。
数々の作品を紡いできた山田太一氏。その作品たちはこれからもずっと我々に「一ワットの魂の光を灯し続ける」。なぜその“光”が消えることがないのか。その答えが、彼が遺したドラマと、「山田太一特別番組魂に一ワットの光を~2025年・山田太一を語り継ぐ~」の中に散りばめられている。
構成・文=戸塚安友奈
※山崎努の「崎」は「立ざき」が正式。
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