◆2023年「この3冊」
◇<1>津村記久子『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版)
◇<2>木内昇『かたばみ』(KADOKAWA)
◇<3>玉置太郎『移民の子どもの隣に座る 大阪・ミナミの「教室」から』(朝日新聞出版)
子供のことが気になる1年だった。子供を大切にしない社会に未来はない。<1>は本紙に連載された長編小説。親に大切にされなかった子供が、他人に親切にされて成長していく。親切にされた子供は、成長して他人に親切にする。賢いヨウム(オウムの一種)のネネがいいところで活躍。<2>も新聞小説。戦時中から戦後まもなくの東京郊外が舞台。他人の子供の親になることにした元槍投げ選手の女性と、世の中を斜めから見るのが得意な男性、そして彼らを支える人々。<3>は大阪・ミナミで移民の子供の学習サポートをするボランティアについてのノンフィクション。大人の都合で言葉も習慣も異なる環境にいきなり放り込まれた子供たちを手伝う人々。戸惑い、傷つき、悩む子供たちが印象的だ。著者が留学中に体験したイギリスの実例も紹介される。

『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版)著者:津村 記久子
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『かたばみ』(KADOKAWA)著者:木内 昇
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『移民の子どもの隣に座る 大阪・ミナミの「教室」から』(朝日新聞出版)著者:玉置 太郎
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【書き手】
永江 朗
フリーライター。1958(昭和33)年、北海道生れ。法政大学文学部哲学科卒業。西武百貨店系洋書店勤務の後、『宝島』『別冊宝島』の編集に携わる。1993(平成5)年頃よりライター業に専念。「哲学からアダルトビデオまで」を標榜し、コラム、書評、インタビューなど幅広い分野で活躍中。著書に『そうだ、京都に住もう。』『「本が売れない」というけれど』『茶室がほしい。』『いい家は「細部」で決まる』(共著)などがある。
【初出メディア】
毎日新聞 2023年12月16日
