和田一浩が語る最強の投手&最強の打者 「高卒1年目であれだけ完成度の高い投手を見たことがない」

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和田一浩が語る最強の投手&最強の打者 「高卒1年目であれだけ完成度の高い投手を見たことがない」

3月1日(土) 22:10

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和田一浩インタビュー(後編)

長年プロ野球界で活躍し、セ・パ両リーグで1000本安打を達成した和田一浩氏。19年の現役生活のなかでダルビッシュ有、大谷翔平、菅野智之ら多くの好投手と対戦してきたが、「すごい」と思った投手は誰だったのか?また、同じバットマンとして一目置いていた打者とは?

セ・パ両リーグで1000安打を達成した和田一浩photo by Sankei Visual

セ・パ両リーグで1000安打を達成した和田一浩photo by Sankei Visual





【イチローは独特の世界を持っていた】 ──和田さんの西武時代、対戦した投手で「すごい」と思った投手を教えてください。

和田 一軍で投げるピッチャーはみんな好投手で選ぶのは難しいのですが、日本ハムのダルビッシュ有(現・パドレス)、楽天の田中将大(現・巨人)、それに交流戦で対戦した中日の川上憲伸ですね。そのなかでも印象に残っているのは、田中です。彼の高卒1年目に対戦したのですが、スライダーのキレとストレートのコントロールが抜群でした。それにピンチの場面になるとギアを上げたり、状況に応じてピッチングを変えたり、すでに試合をコントロールする能力がありました。高卒1年目であれだけ完成度の高い投手を見たことがありません。

──ダルビッシュ投手はどんなイメージでしたか。

和田 ダルビッシュは段階を踏んで成長し、2007年から5年連続して防御率1点台を記録し、メジャー移籍前年の2011年には18勝を挙げました。ダルビッシュは変化球が10種類以上あると言われていますが、僕のなかではカットボールやツーシームといった最後にキュッと曲がる変化球が、ストレートと判断しづらくてやっかいなボールでした。

──川上投手のすごさは?

和田 のちにチームメイトになるのですが、交流戦で対戦した時はとにかく気持ちのこもった球を投げるいい投手だなという印象があります。日本で初めて本格的にカットボールを投げた投手でもあります。

──和田さんとチームメイトの松坂大輔投手は、プロ1年目の1999年から3年連続して最多勝のタイトルを獲得しました。

和田 1年目はストレートとすごくキレのいいスライダーの2種類だけだったのが、彼は器用で年々いろんな球種にトライして、自分のものにしていきました。僕もかつてはキャッチャーをしていて、松坂とバッテリーを組んだことがありますが、やはりすごい球を投げていましたよ。

──西武在籍時代、同じ打者として注目していた選手は誰ですか。

和田 1歳下のイチロー(当時オリックス)は、やはりとんでもない選手でした。彼はヒットを打つ能力に関して、独特の世界を持っているように感じました。最終的に日米通算4367安打ですか......異次元の存在ですよね。

──ほかにもいましたか。

和田 のちに中日でチームメイトになりますが、日本ハムの小笠原道大も印象に残っています。彼の代名詞は"フルスイング"です。フルスイングすると、ホームランは増えても打率が落ちるとよく言われていますが、両立できることを証明したのが小笠原です。彼は首位打者、本塁打王、打点王の打撃3部門のタイトルを獲得しています。

──そういう意味では、左右の違いはありますが、和田さんと似たタイプではないですか。

和田 それはわからないですけど、小笠原もフルスイングをするわりには、三振はそれほど多くなかったですね。僕は追い込まれてからもボールに当てる自信があったので、ストライクゾーンを広めにして待つということはなかったのですが、彼もそんな感覚があったのかもしれないですね。当時のパ・リーグはほかにもいい打者がいっぱいいて、選ぶのは難しいですね。

【投手・大谷翔平と対戦した印象は?】 ──では中日移籍後に対戦したなかで、印象に残っている投手を挙げてください。

和田 まず、日本ハムの大谷翔平(現・ドジャース)です。対戦したのは、大谷のプロ初勝利の2013年の交流戦でした。ただその時は156キロをマークするなど確かに速かったのですが、スピードガン以上の球速を感じませんでした。それがNPB最後のシーズンとなる2017年には160キロを超えていましたし、フォークも威力があって、すごい成長を感じました。

──大谷選手のメジャー移籍後の活躍をどう見られていますか。

和田 投げても打っても超一流ですからね。「すごい」のひと言につきます(笑)。人がすごいと思うのは、投げる球が速いか、打球を遠くに飛ばすかだと思うんです。どちらかひとつを持っている人はいますが、彼はその両方を持っている。特にメジャーのなかでも、飛距離は誰にも負けていないというのが、やっぱり一番すごいですよね。

──ダルビッシュ投手も大谷選手も、日本時代と比較してかなりビルドアップしました。パワーから生まれる技術もあるということですね。

和田 昔は投手がウエイトトレーニングで筋肉をつけるなんてとんでもないと言われていましたが、あれだけの体がないと、逆にあのパフォーマンスは出せないと思うんです。すごい投手になろうと考えたら、筋肉をつけて体を大きくするのが絶対条件です。彼らがそれを証明しましたからね。

──ほかに印象に残っている投手はいますか?

和田 スピードなら、当時巨人にいたマーク・クルーンです。僕がセ・リーグに移籍した2008年に162キロをマークしたのですが、とにかく速かったですね。あと、当時の中日は阪神や巨人と優勝を争う展開が多かったのですが、阪神・藤川球児の真っ向勝負の"火の玉ストレート"は対戦していて楽しかったですね。

──同じく打者でほかに印象に残っているのは?

和田 阿部慎之助(現・巨人監督)は2010年に44本塁打、2012年に打率.340(首位打者)と、長打力がありながらミート力もある強打者でした。ヤクルトのウラディミール・バレンティンは2011年から3年連続本塁打王に輝き、2013年のシーズン60発は強烈でした。

【セ・パの野球の違い】 ──和田さんは両リーグ1000安打をマークしていますが、「セ・パの違い」というと、何でしょうか。

和田 セ・パ交流戦が導入された2005年以降の20年間で、パ・リーグ球団が14回の優勝、同年以降の日本シリーズもパ・リーグ球団が14回の優勝と一時は圧倒的な差がつきましたが、最近はそれほどでもありません。

──その理由はどこにあると思いますか?

和田 パ・リーグの豪打はDH制が一番の要因であり、セ・リーグは投手が打線に入ると得点力が下がる分、細かな戦法が多くなると思います。また先述したようにドラフトの兼ね合いで田中将大ら好投手がパ・リーグに多く揃いましたが、最近はセ・リーグ投手も150キロを超える速くて強い球を投げる投手が増えました。

──最近の「投高打低」をどう見ますか?

和田 トラックマンなどのデータ機器の導入や、それに伴う最新トレーニングの浸透で投手サイドの進化が先に進みましたので、球のスピードが全体的に速くなりました。ただ、今後は打者サイドの進化が追いついていくでしょう。



和田一浩(わだ・かずひろ) /1972年6月19日、岐阜県出身。県岐阜商から東北福祉大、神戸製鋼を経て、96年のドラフトで西武から4位指名を受け入団。30 歳でレギュラーに定着し、リーグ優勝、日本一に貢献したほか、2004年アテネ五輪、06年第1回 WBC では日本代表として日の丸を背負ってプレーした。08年からはFA 移籍で中日ドラゴンズへ。15年には史上最年長で2000本安打を達成し、名球会入りを果たした。引退後は野球解説者として活動する傍ら、少年野球の指導、講演などで活躍。23年から24年まで中日一軍打撃コーチを務めた

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