日中忙しく過ごして、疲れ切っているのに、いざ寝ようとすると目が冴えて眠れない……。そんな悩みを抱えていませんか?睡眠不足が続くと、集中力が低下したり、気分が落ち込んでしまったり、普段の生活にも影響が出てしまいますよね。
疲れているのに眠れない理由とその対処法、そして避けるべきNG行動について医師の木村眞樹子さんが解説してくれました。
|1. 疲れているのに眠れない理由

まずは、疲れているのに眠れない理由を4つご紹介します。自分がなぜ眠れないのか知ることで、適切な対処法を取れるようになりますよ。
| 自律神経の乱れ
自律神経とは交感神経と副交感神経の総称で、からだを正常に機能させるための重要な役割を担っています。睡眠とも深く関わっており、副交感神経が優位になると眠くなり、交感神経が優位になるとからだが覚醒し、活動的になるのが特徴です。
睡眠にとって重要な役割を持つ自律神経ですが、生活習慣の乱れや女性ホルモンの乱れなどによってバランスが崩れてしまうことがあります。自律神経のバランスが乱れて交感神経が過剰に働いていると、からだが疲れていても眠れなくなるのです。
| ストレス
自律神経の乱れを引き起こすストレスも、眠れない原因のひとつです。本来、夜になると副交感神経が優位になり、自然な眠りをもたらしてくれます。しかし強いストレスがかかると、交感神経が優位になるため、寝つきが悪くなってしまうのです。
眠れなくなる原因は、仕事や人間関係の悩みといった精神的なストレスだけではありません。かゆみや痛みなどの身体的なストレスも、同じように睡眠を疎外する原因となります。
| 食生活の乱れ
食生活の乱れも、睡眠を妨げる要因です。就寝直前まで、暴飲暴食をしていませんか?寝る前に胃に食べ物が残っていると、消化のためにからだが活動し続け、深い眠りに入れなくなってしまいます。
| うつ病などの疾患や更年期障害
うつ病の人は、脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質がうまく機能しなくなり、不眠の症状が出る場合があります。
また、年齢によっては更年期障害も疑いましょう。加齢に伴う女性ホルモンの分泌の変化が不眠につながっている可能性があります。
|2. 疲れているのに眠れないときの対処法

疲れているのに眠れないのは、つらいことですよね。眠れないこと自体が悩みになって、余計に眠れなくなっている人もいるかもしれません。眠りに悩む人はこれからご紹介する対処法を試してみましょう。
| 生活リズムを整える
疲れているのに眠れないと感じていたら、まずは生活のリズムを整えましょう。生活のリズムが崩れていると、入眠をサポートしてくれる対処法を取り入れても十分な効果が得られません。
まずは毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計を整えましょう。体内時計が整うことで、ホルモンの分泌やからだの機能がスムーズに調整され、入眠しやすいからだづくりをサポートしてくれます
| 適度に運動する
適度な運動で筋肉をほぐし、血行を促すことで、自律神経のバランスを整える効果が期待できます。おすすめは、早足の散歩や軽いランニングなどの有酸素運動です。ヨガやストレッチをするのもいいでしょう。
大切なのは自分に合う運動を、継続的に長く続けることです。無理なく続けられる運動を習慣化しましょう。
| 入浴でからだを温める
入浴は体温を一時的に上げ、寝つきをよくする効果があります。38度のぬるめのお湯に25~30分、または42度の熱めのお湯に5分ほど浸かるのが効果的です。40度程度の半身浴も、寝つきをよくするのに役立ちます。
入浴はタイミングも重要です。就寝の2〜3時間前に入浴すると、入眠しやすくなるとされていますが、逆に就寝直前の入浴は交感神経を刺激し、寝つきを悪くするので避けましょう。
| 日光を浴びる
朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を浴びるようにしましょう。日光を浴びると、体内ではセロトニンと呼ばれるホルモンが分泌されます。このセロトニンは、夜、光による刺激がなくなると睡眠ホルモンと呼ばれる「メラトニン」の原料となり、自然な眠りをもたらしてくれます。
また、朝だけでなく日中に光を浴びると、より入眠しやすくなるとされています。在宅ワークの人や休日に自宅で過ごしがちな人は、時間を見つけて、日光を浴びるようにしましょう。
| ストレスを解消する
仕事が忙しかったり人間関係がうまくいっていなかったり、ストレスを抱えている人も多いかと思います。ストレスがなくなるのが一番ですが、それが難しい場合は自分に合ったストレス発散方法を見つけましょう。
甘い物を少し口に入れるだけでも、ストレスを軽減する効果が期待できます ※1。疲れとストレスを感じているときは、いつもより少しリッチなお菓子を買って食べてみるのもおすすめです。
| ツボを押してみる
「失眠(しつみん)」と呼ばれるツボは入眠を助けてくれるといわれています。

失眠はかかとの中央にあるツボのこと。寝る直前より、寝る30分〜1時間前にちょっと気持ちいいと感じる程度の優しい力で押しましょう ※2。
| 漢方薬を試してみる
ここまでご紹介してきた方法を試しても、睡眠の悩みが解消しないという人は、漢方薬を活用するのもおすすめです。
漢方薬は、西洋薬のような対症療法ではなく根本からの体質改善を得意としています。規則正しい生活や運動を続けるのは難しいという場合でも、漢方薬なら毎日決められた量を服用するだけで、ぐっすり眠れるからだを目指すことができますよ。
睡眠に悩みのある人に対しては、「自律神経の乱れを整え、ストレスが原因の疲労や睡眠の質を改善する」「血流をよくして中枢神経の機能を回復し安眠に導く」「いらだちや興奮を鎮めて寝つきをよくする」などの作用をもつ漢方薬を選びます。
<睡眠に悩みのある人におすすめの漢方薬>
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
からだの熱を冷ますことで緊張やストレスを和らげ、不眠を改善します。比較的体力があり、ストレスを感じることが多く、イライラしがちな人におすすめです。
酸棗仁湯(さんそうにんとう)
栄養を補い熱を取りさることで、神経の興奮や緊張を和らげ、疲れているのに眠れない症状を改善します。心身ともに疲れ弱っている人におすすめです。
漢方薬は、自分の状態や体質に合ったものを選ぶと効果を感じやすくなりますが、症状や体質に合っていないと副作用が出てでてしまうこともあります。
自分に合った漢方薬を服用するためには、その道のプロに相談するのが一番です。気軽な漢方の相談先としてオンラインで漢方に詳しい薬剤師に個別相談ができる「
あんしん漢方
」という便利なサービスもあります。漢方薬を服用する前の選択肢のひとつとして、検討してみてくださいね。
|3. 疲れているのに眠れないときのNG行動

最後に疲れているのに眠れないときのNG行動をご紹介します。ついついやってしまいがちな行動が、あなたの睡眠を妨げているかもしれません。
| 就寝前にスマホやタブレットを見る
スマホやタブレット、テレビから放出されるブルーライトを浴びると、からだが「朝だ」と勘違いして、メラトニンの分泌が抑えられてしまいます。
SNSや動画などを見始めると、なかなかやめられなくなってしまうかもしれませんが、就寝前にスマホやタブレットを見るのを控えましょう。
| カフェインやアルコールを摂取する
ここまでカフェインには覚醒作用があるので、コーヒーや紅茶などを就寝前に摂取するのは控えましょう。
また、眠れないからといってアルコールを摂取するのは逆効果です。アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドには神経を興奮させる作用があり、寝つきを悪くする原因になります。
|4.適切な対策で、ぐっすり眠れる夜を!
疲れているのに眠れない夜はつらいですよね。しかし、原因を理解して適切な対策を試すことで、快適な睡眠を手に入れることができます。自分に合った方法で、ぐっすり眠れる夜を目指しましょう!
<この記事の監修者>

医師
木村 眞樹子(きむらまきこ)
都内大学病院、KDDIビルクリニックで循環器内科および内科に在勤。総合内科専門医・循環器内科専門医・日本睡眠学会専門医。産業医として企業の健康経営にも携わる。
自身の妊娠・出産、産業医の経験を経て、予防医学・未病の重要さと東洋医学に着目し、臨床の場でも西洋薬のメリットを生かしながら漢方の処方を行う。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指す
オンラインAI漢方「あんしん漢方」
でもサポートを行う。
<参考文献>
※1
独立行政法人農畜産業振興機構「甘い砂糖の癒し効果」
※2
学校法人大麻学園四国医療専門学校「眠れない夜はココを押そう!眠りを誘う安眠のツボ」
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