2月10日(月) 20:20
株式会社東京商工リサーチによると、学習塾の倒産件数は2024年で53件にのぼっています。前年と比べて17.7%多く、2000年以降の最高値となりました。学習塾市場は少子化の中で過当競争が続いていて、今後も倒産が続く見通しです。
2024年で最も負債の多かった学習塾は「株式会社個別指導塾スタンダード」です。小学3年生~高校3年生まで幅広く対象にした個別指導塾だったのですが、2024年6月に民事再生法の適用を申請しました。全国23府県に教室を構える学習塾が潰れたのです。
大手受験予備校「ニチガク」(株式会社日本学力振興会)が破産申請した一番の理由は、急激な生徒数の減少だと報じられています。
携帯電話の普及により「固定電話のある家庭に電話して入学を勧誘する」という手法では生徒が増えなくなっていた上に、コロナ禍の影響で対面授業ができなかったことや、自習室の利用を制限したことでさらに生徒数が減少。結局、業績回復できなかったとされています。
その結果、給料未払いや税金滞納、経理スタッフの退職が起き、正確な債権債務額さえ把握できていません。
潰れそうな「危ない塾」とは、どんな塾なのでしょうか? 塾に限らず全国の企業が潰れている理由を調べることで傾向が見えます。株式会社東京商工リサーチの「全国企業倒産状況2024」および株式会社帝国データバンクの「倒産集計 2024年(1月~12月)」を基に調査しました。
学習塾に限らず、全国の企業を対象にした統計では「従業員数10人未満」の倒産が91.5%を占めています。言い換えれば従業員が10人以上いる企業を選ぶだけで倒産リスクが低くなるということです。
学習塾なら、個人経営および少人数体制の塾が該当します。「授業料が安い」「合格実績がある」という売り文句でも、講師が塾長ひとりしかいない、法人化されていない、という場合は、慎重な見極めが必要といえるでしょう。
全国の企業における倒産理由で圧倒的に多いのは「販売不振」82.4%です。次いで設備投資や経営多角化などを除く「その他の経営計画の失敗」と「経営者の死亡」が同率2.5%ですが、1位の販売不振に比べては微々たるものといえるでしょう。
学習塾なら、保護者から「以前はもっと生徒がたくさんいたのに」という声が聞こえてきたら注意が必要かもしれません。
資本金別の統計では「1000万円未満」46.2%、「5000万円未満」24.3%、「個人事業主」19.2%です。どんな業種であれ大企業よりも中小企業のほうが倒産しやすいといえるでしょう。
学習塾でも零細企業および中小企業が倒産の中心で、資本金1億円超えの大企業は比較的安泰です。前述の「ニチガク」「個別指導塾スタンダード」どちらも資本金は1000万円でした。
何月に倒産するか、という傾向は特にありません。2024年の倒産件数は全業種で5月が1016件、10月が925件、7月が920件でした。塾・教室・予備校の倒産件数で一番多かった月は2024年で7月でしたが、2023年は3月、2022は4月でした。
調査の結果、注意が必要な塾の条件は「10人以下の少数経営で、生徒が少ない(減った)」ということになります。とはいえ安泰と思える資本金1億円以上の大企業はごく少数ですし、少子化のいま競争は激化しており、「絶対」は存在しないでしょう。また塾の授業料や指導方針など希望の条件を踏まえると、大企業経営の塾がベストとは限りません。
また、「一見大丈夫そうに見える」企業が潰れないという保証はありません。ニチガクは1983年設立で40年を超える歴史を持っていて、個別指導塾スタンダードは全国に教室を展開していました。当事者にしてみれば「まさか潰れるなんて」という心境でしょう。日頃から塾の経営がうまくいっているか目を向けることが肝心です。
「危ない塾」を確実に見分けることはできませんが、リスクを分散することはできます。教科ごとに学ぶ場所を分ける、塾だけでなく通信講座を使うなど、補習の方法を1つに絞らず考えてみることをおすすめします。
株式会社東京商工リサーチ 全国企業倒産状況
株式会社帝国データバンク 倒産集計 2024年(1月~12月)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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