2月10日(月) 20:00
年収が1200万円の場合、税金や社会保険料などが差し引かれるため、実際に手元に残る金額(手取り)は減少します。会社員の夫と専業主婦、小学生の子どもが3人の東京在住の家庭を例に、2024年度の税制をもとに試算してみます。
●社会保険料約186万円
●所得税約114万円
●住民税約78万円
合計約378万円
これらを差し引くと、手取り額は以下のとおりです。
1200万円-378万円=約822万円
この手取り額を12ヶ月で割ると、1ヶ月あたり約68万5000円となります。なお、小学生の子どもが3人いる場合、児童手当が月5万円、さらに東京都の子育て支援として「018サポート」月1万5000円が受けられます。これを加算すると、年間の手取り額は約900万円となり、1ヶ月あたり約75万円です。
この金額が、日々の生活費や教育費、住居費、貯蓄などに充てられることになります。ただし、この計算には生命保険料控除などは含まれていないため、あくまでも目安として参考にしてください。
文部科学省のデータによると、公立小学校に通う子どもの「学習費総額」は、1人あたり年間約34万円です。これは、学校での教材費や給食費に加え、学校外の習い事費用を含めた金額です。月額に換算すると約3万円となり、子どもが3人いる場合は月9万円となります。
さらに、家族が多いと住居費の負担も大きくなります。東京都内のファミリー向け賃貸住宅の家賃は、20万円を超える地域も珍しくありません。また、総務省の調査によれば、2024年11月における2人以上の世帯の食費は月約9万円です。これらを合計すると、教育費、住居費、食費で月約40万円必要となります。
手取り額が月75万円の場合、この時点で残りは35万円になります。そこから、光熱費、通信費、被服費、医療費などをまかなう必要があります。さらに、子どもの進学費用や自分たちの老後資金を貯蓄することを考えると、金銭的な余裕があるとは言い難い状況です。
子どもの人数が多いほど、全ての費用が増える傾向にあるため、「年収1200万円でぜいたくな生活」とは程遠い現実が見えてきます。
中には「高年収なら毎年家族でハワイ旅行に行っても余裕がある」と考える人もいるのではないでしょうか。しかし、子どもが3人ともなると、旅費もばかになりません。例えば、家族5人でハワイ旅行に行く場合の費用を計算してみましょう。
2025年3月の春休みに、ホノルルに6日間フリープランで旅行するとして試算すると以下のようになり、これを家族5人分に換算すると総額は約181万円になります。
大人1人あたりの費用約38万円
子ども1人あたりの費用約35万円
仮に子ども1人の3人家族であれば約111万円ですから、子どもの人数が多いほど出費が大きくなることが分かります。
さらに、現地での食費やお土産代、アクティビティ代を考慮すると、追加で10万円以上かかる可能性があります。これらを含めると、総費用は200万円近くに達することもあるでしょう。
また、年収1200万円の手取り額や児童手当などの合計約900万円のうち、181万円は約20%に相当します。これだけの金額を1回の旅行に費やすのは、相当な覚悟が必要であり、ほかの支出とのバランスを考えると、気軽に実現できるわけではなさそうです。
年収1200万円は一見すると高収入に思えますが、子どもが3人いる家庭では、ぜいたくな暮らしができるわけではないことが分かっていただけたのではないでしょうか。子どもが多いと、学用品や習い事、外食などの費用が増えるため、日々の出費がかさみます。
今回の試算は、物価が高い東京を前提としているため、地方であれば家賃や物価の違いから、多少の余裕が生まれる可能性もあるでしょう。しかし、税金や子どもの人数による出費が大きい点は全国どこでも共通です。
また、日本の累進課税制度により、収入が高くなるほど税金の負担が大きくなります。その結果、手元に残る金額は想像以上に少なく、「年収1200万円=ぜいたくな生活」という認識が、必ずしも当てはまらない現実があるのです。
国税庁 令和5年分民間給与実態統計調査―調査結果報告―
文部科学省 令和5年度子供の学習費調査の結果を公表します
総務省 家計調査報告-2024年(令和6年)11月分
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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