1月22日(水) 2:20
年収103万円の壁は、給料に対して所得税の支払いが発生する境目を指す際に広く使われています。通常、給与における所得税の計算をするとき、給与所得控除と所得税の基礎控除が適用されています。
給与所得控除は最低額が55万円、また所得税の基礎控除は最高48万円です。合計で103万円となるので、「103万円の壁」と呼ばれています。
壁が引き上げられると、年収103万超~123万円の方で所得税の課税対象だった方は所得税がかからなくなります。そのため、手取り額が増える可能性が高いでしょう。
また、なるべく税金がかからないように労働時間を調整して稼ぎすぎないようにしていた方が、より長時間働けるようになるメリットもあります。労働者だけでなく、企業側にとっても長時間働く従業員が増えることで労働者不足の解消につながるでしょう。
財務省が公表している「令和7年度税制改正の大綱」によると、税制改正として給与所得控除の最低保障額を55万円から65万円に、所得が2350万円以下の方に対する所得税の基礎控除は10万円引き上げるとされています。
今回は、以下の条件で年収123万円だった場合、税制改正前後でどれくらい税額が変わるかを比較しましょう。
●適用される控除は給与所得控除、社会保険料控除、基礎控除のみ
●東京都在住40代
●賞与は考慮しない
●住民税はどちらの場合もかかる
●住民税額は控除等を差し引いた所得10%+5000円で計算
条件を基にすると、月収は10万2500円です。月収から計算する社会保険料は以下のようになります。
●健康保険料と介護保険料(年額):7万2259円
●厚生年金保険料(年額):11万4192円
●雇用保険料(年額):7380円
●社会保険料合計:19万3831円
まずは2024年現在の税額を求めましょう。年収123万円のときの給与所得控除は55万円です。年収123万円から社会保険料と給与所得控除を引いた48万6169円が税額の計算に使われます。
所得税の基礎控除は48万円で、基礎控除を引いた6169円から1000円未満は切り捨てるため、6000円が課税所得金額です。税率は5%なので、300円の所得税が課されます。また、住民税の基礎控除は43万円のため、課税金額は5万6169円です。住民税率をかけると1万617円が課されます。所得税と住民税の合計額は1万917円です。
次に、税制改正後、仮に123万円に引き上げられた場合で計算しましょう。社会保険料は変わらず、給与所得控除は65万円になるため税額の計算に使う金額は38万6169円です。基礎控除額は所得税が58万円、住民税は43万円で税金の計算に使う金額のほうが少なくなるため、税金は発生しません。
今回のケースだと、壁の引き上げにより税額が約1万円抑えられるでしょう。
年収103万円の壁が123万円にまで引き上げられると、一定年収までの方は税金負担が軽くなります。また、働き控えをしていた方も、壁が高くなればさらに多くの時間勤務できるようになるでしょう。
年収123万円の方の場合、控除額の引き上げにより1万917円の税金負担を軽減できる可能性があります。ただし、社会保険料は変わらないことがある点には留意しておきましょう。
財務省 令和7年度税制改正の大綱(1~3ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
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