箱根駅伝2025早稲田大上位進出のカギを握る「一般組」4年生たちの誓い

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箱根駅伝2025早稲田大上位進出のカギを握る「一般組」4年生たちの誓い

12月27日(金) 16:55

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早大のエントリーメンバーに名を連ねた6人の4年生(右から石塚、伊福、菅野、草野、伊藤、和田)photo by Wada Satoshi

早大のエントリーメンバーに名を連ねた6人の4年生(右から石塚、伊福、菅野、草野、伊藤、和田)photo by Wada Satoshi





2025年1月2日・3日に行なわれる第101回箱根駅伝(217.1km/往路107.5km・復路109.6km)。2年連続シード権獲得中の早稲田大は、春先からチーム全体で活気を帯び、駅伝シーズンに入っても、出雲駅伝6位、全日本大学駅伝6位と上位をうかがえる位置につけている。

その要因は、過去に好成績を残した時と同様に、スポーツ推薦組とそれ以外のいわゆる一般組がチームとして醸成されていること。

果たして箱根では、どんな走りを見せてくれるのか?

【2年連続で箱根路を踏んだ一般組の伊福と菅野】早大といえば、「スポーツ推薦組」と、指定校推薦や系属校、一般入試から成り上がったいわゆる「一般組」が融合した時に、これまで箱根駅伝で成果を上げてきた。

それはスポーツ推薦の枠が3人程度と他大学に比べて圧倒的に少ないからで、スポーツ推薦の選手だけで16人のエントリーメンバーを構成できないという事情がある。

だが、高校時代に全国トップクラスの実績を挙げた選手たちが入ってくるチームだ。そんな選手たちを相手に、一般組がメンバーを勝ち取るのは簡単なことではない。

そして今年度の4年生は、一般組が大多数を占める。

「僕らの学年はスポーツ推薦が少なくて、例年の早稲田のように個性がギラギラと立っている学年ではない」

駅伝主将の伊藤大志が言うように、今季の4年生は例年にはないメンバー構成となった。

今回の箱根駅伝のエントリーメンバーには4年生6人が名前を連ねた。その6人の所属学部と出身高校は、以下の通りだ。

石塚陽士教育学部早稲田実業高(東京)

伊藤大志スポーツ科学部佐久長聖高(長野)

伊福陽太政治経済学部洛南高(京都)

菅野雄太教育学部西武学園文理高(埼玉)

草野洸正商学部県立浦和高(埼玉)

和田悠都先進理工学部早稲田実業高(東京)

6人のうちスポーツ推薦はなんと伊藤だけで、そのほかの5人は「一般組」。もっとも、系列の早実高出身の石塚は高校時代から全国区で活躍しており、「一般組」と呼ぶことはためらわれるので、この記事では石塚を別枠扱いとする。

この学年は一般組が多いだけでなく、所属学部も多彩だ。

このうち、最初に箱根で出番を勝ち取ったのが、伊福と菅野だった。

彼らが2年時、2023年の第99回大会で、伊福が8区、菅野が10区を走り、ともに区間10位とまずまずの走りを見せた。チームも総合6位となり、シード権奪還にも成功した。

その翌年の前回大会も、伊福と菅野は2年連続で同じ区間を走り、ともに区間5位と成長した姿を見せた。

伊福はその後、2月の延岡西日本マラソンで初マラソンに挑戦し、学生歴代6位(当時)となる2時間09分26秒の大会新記録で優勝を飾っている。

「1年目、2年目は"とりあえず箱根に出たい"と思っていましたが、2年目で箱根を走ってからは"出るだけではダメだ"と思って、一段階上の取り組みをし始めました」

こう話すように、伊福は、箱根を経験したことで競技への向き合い方が変わり、その経験をレベルアップにつなげた。

「前回の箱根は最低限の目標はクリアしましたが、上位争いや優勝争いするチームは全員が区間3位前後で走っています。一般組も推薦組も関係なく、全員がそういう走りをしなければいけないと思っています」

総合3位以内というチーム目標を成し遂げるために、これまで以上の走りを誓っている。

菅野も伊福と同様に「今回は、まかされた区間で確実に区間3位以内っていうのは狙っていきたい」と決意を口にしている。

今季は、春先に貧血になったり、オーバートレーニング気味になったりと出遅れたが、夏合宿ではしっかり練習を積み重ね、秋以降は調子を上げてきている。

【最初で最後の箱根を狙う草野&和田】初めての箱根駅伝出場を狙うのが草野と和田だ。

ともに1年目の箱根当日は、黄色いジャンパーを着て沿道で走路員を務めた。

その悔しさが出発点にはあり、4年間をかけて16人のメンバー入りを果たした。

草野は、早稲田に憧れながらも、国立の筑波大にも合格していた。

「国立のほうが経済的な負担は少ないですし、手続きのギリギリまで悩みました。結局、親が『行きたい方に行ったらいい』と言ってくれたので、小学生の頃からなんとなく憧れていた早稲田を選びました」

しかし、1年目は寮にも入れず、当然、駅伝のメンバー争いにも絡めなかった。

「1、2年の頃は、スポーツ推薦で入ってきた人たちとは、ものすごい差がありましたし、ことあるごとにその差を意識せざるをえませんでした。でも、だんだんと自分も力を付けていくうちに、一般組、推薦組という潜在的な意識は薄れていったかなと思います」

浮上のきっかけは2年生の時。ちょうど花田勝彦駅伝監督が就任した頃にあった。

チーム内にケガ人が続出しAチーム入りを果たすと、夏合宿も選抜メンバー入りを果たした。

「そこからは明確に、箱根のメンバーになれるかもしれないとイメージできるようになりました」

3年生になると関東インカレに3000m障害で出場し、憧れ続けた燕脂のユニフォームに初めて袖を通した。

「燕脂を着る試合はスイッチの入り方が違う。たくさんの応援も受けるし、内面から湧き上がる高揚感もありました」

そして、今季の関東インカレでは自己ベストをマークして6位入賞。その後から花田監督の勧めもあって、山下りの練習に取り組み、4年目にして初めて16人にエントリーされた。

「これで陸上は引退なので、最後は、小さな頃から夢だった箱根を走ってしっかり締めくくりたい。

この1年は、6区の候補が誰もいないところから始まり、僕がその穴を埋めるっていう意識で取り組んできました。しっかりと早稲田に貢献したいと思っています」

準備を万全にして、最初で最後の箱根駅伝に臨む。

一方の和田は、これまで駅伝はもとより、関東インカレなどの対校戦でも燕脂を着たことがなかった。前回は、「たぶん17番目」と惜しくもメンバー入りを逃した。燕脂を着ること自体、今回の箱根がラストチャンスとなる。

理系の学部は下級生の頃に授業が多く、和田も1年時には「競技も学業もっていうのはすごくきつく感じていました」と言う。

そんな時に、相楽豊前駅伝監督から言われた一言で考えを改める。

「相楽監督から『理工学部の人は何人も見てきたけど、学業を言い訳にしたら活躍できないよ』ってガツンと言われた時があって、その一言が心に刺さりました。学業を言い訳にしていたら、競技者として戦えないし、別にハンデをもらえるわけでもありませんから」

確かに和田の言う通りだ。冒頭のような事情から、早稲田の"一般組"はメディアで取り上げられることは多いが、文武両道を実践しているのは彼らだけに限ったわけではない。その事実は、われわれも忘れてはいけない。

和田はここぞという時に負けん気の強さを発揮してきた。例えば、メンバー入りを逃した前回、年末の早大競技会では10000mでチームトップの走りを見せた。また、目標としていた関東インカレのハーフマラソンの対校選手の座を逃した時にも、4月の日体大競技会では10000mで自己ベストをマークし、関東インカレの対校選手にも先着してみせた。その奮闘ぶりは、チームを後押ししただろう。

大学院に進む和田にとっても、今回の箱根は、競技者として臨む最後のレースになる。

「どんな展開であれ、前を向いて、最後まで諦めない走りができたらなと思っています」

早実に入学した時から燕脂のユニフォームに憧れ続けてきた。その7年分の思いを箱根路にぶつける。

われわれは便宜上、"スポーツ推薦組"と"一般組"とに区分してしまうが、彼らのなかには、その隔たりはない。競技者としてメンバーに選ばれたからには、全力でレースに挑むことに変わりはないからだ。

もちろんここで取り上げた選手全員が、最後の箱根駅伝を走れるわけではない。それでも、集大成のレースに向けて、着々と準備を進めている。箱根路に悔いを残さないように。

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