平野レミさんが作る料理をいつも「おいしい、おいしい」と褒めてくれた、夫の和田誠さん。レミさんにとって、とても大きな存在でした。
NHKのお料理番組『平野レミの早わざレシピ!』などで大活躍の、平野レミさん。幼少期からいままで、「ありのままの自分」で生きてきたと言うレミさんの人生哲学が詰まった一冊『私のまんまで生きてきた。』(ポプラ社)より一部をお届け。
今回は、最愛の夫・和田誠さんとの思い出エピソードです。
結婚とは一心同体になるもんだと思っていたら、大間違い
結婚生活はずっと幸せだった、とレミさん。(平野レミさん提供写真)
和田さんと結婚して6か月ぐらい経ったときに私が書いた日記がついこのあいだ見つかったんです。「今日から日記書こう!」なんていって、新婚の私が書いてんですよ。
「結婚とは一心同体になるもんだと思っていたら、とんでもなかった、大間違いだ。仕事のときの和田さんのまわりにはものすごい壁があって、私はどうしても入れない。和田さんはそんな世界を自分で持ってるんだから、私も自分の世界を持たないと大変だ」
私よりも私のことをわかってる
和田さんって、私よりも私のことを知ってるみたいで、玄関をガチャガチャッて開けたとき、私が沈んだ声で「お帰んなさい」なんて言うと、靴を脱ぐ前に、「どっか食いに行く?」って言う。
私が疲れてることがわかるのね。もうありがたくてありがたくて。食べに行ったあと「ああ、おいしかった」って私が言うと、「レミのごはんのほうがおいしいよ」って言われちゃうの。
私でよかったの?
入院先で容体が悪化していく和田さんの手を握って、足をさすって、たくさんしゃべりかけて、歌もいっぱい歌いました。「私でよかったの?」って聞くと「よかった」って言ってくれました。
和田さんはいつもジーパンとスニーカーだったから、棺にも愛用のジーパンで。葬儀も家族だけで「やっぱり喪服じゃないよね」って意見が一致して、和田さんに合わせて全員ジーパンにスニーカー。会場には和田さんが愛したフランク・シナトラの音楽を流して、お経やお焼香やチーンなどは一切なし。
私は和田さんの好物ばかりをたくさん作って重箱に詰めて、棺の中に入れました。大好きな肉料理。和田さんが名付けた「ヒツジュ品」のラムチョップ。塩こうじとヨーグルトに1時間ほど漬けて、ぬぐって焼くの。和田さんが食べる最後の料理だと思ったらすごく緊張しました。
でも、和田さんのために作っている時間は本当に幸せだったなあ。私にとってのいちばんの幸せは、和田さんにごはんを作ることだったんだってあらためて気づきました。
一人で食べていても「おいしい」って声に出す
一緒に旅行するのも大好きだった。(平野レミさん提供写真)
和田さんがいなくなっちゃっても、ちゃんとテーブルクロスやランチョンマットを敷いて、料理を作るの。
熱湯にかつおぶしをたっぷり入れて出汁をとって、豆腐とかを入れてお吸い物にして、おいしいごはんを炊く。
そして一人でも「おいしい!」って声に出すんです。
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この続きは、書籍でお楽しみください。
平野レミさん/料理愛好家、シャンソン歌手
料理愛好家、シャンソン歌手。主婦として料理を作り続けた経験を生かし、NHK「平野レミの早わざレシピ!」などテレビや雑誌などを通じて数々のアイデア料理を発信。また、レミパンやエプロンなどのキッチングッズの開発も手がける。2022 年、『おいしい子育て』(ポプラ社)で第9回料理レシピ本大賞エッセイ賞受賞。エッセイに『家族の味』『エプロン手帖』(以上、ポプラ社)、『ド・レミの子守歌』( 中央公論新社)など、レシピ本に『平野レミのオールスターレシピ』( 主婦の友社)、『平野レミの自炊ごはん』(ダイヤモンド社)など多数。最新刊、自身の人生哲学が詰まった言葉集『私のまんまで生きてきた。』(ポプラ社)好評発売中!
X(旧Twitter):@Remi_Hirano
(写真:平野レミさん提供構成:マイナビ子育て編集部)
※本記事は、『私のまんまで生きてきた。』著:平野 レミ/ポプラ社より抜粋・再編集して作成しました。
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