「珠代パンティーテックス」「男なんてシャボン玉」など唯一無二のギャグとパワフルな芸風でおなじみの島田珠代さん。舞台やテレビには映らない「本当の珠代さん」とは……?
唯一無二の持ちギャグで、新喜劇を長きに渡り支えている看板女優の島田珠代さん。舞台とは違う裏側の珠代さんの姿を赤裸々に綴った自身初のエッセイ『悲しみは笑い飛ばせ! 島田珠代の幸福論』(KADOKAWA)より一部抜粋してご紹介します。
第1回となる今回は、ガンで亡くなった元夫への思いを綴ったエピソード「空に旅立つ日」。
36歳で二度目の結婚をし、38歳で出産した珠代さん。しかし娘が生後8ヶ月を迎える頃、夫の病が発覚。夫婦関係にも綻びが生じ、離婚することになります。元夫はどうしても娘と暮らしたいと望み、珠代さんは身を切る思いで承諾します。
空に旅立つ日
(出産を控え、夫婦仲に曇りのなかった新婚の頃。/提供写真)
ガンが見つかったときに、あと4年くらいしか生きられないと言われていた彼ですが、11年を過ぎた頃になると、「まだまだ生きると思うわ」と笑いながら話していました。
「書面では中学生までって約束したけど、娘が20歳になるまで一緒にいられるなら、それまで生きるから。だからそっちには行かせられへん」
彼が医者の予想よりも長く生きられたのは、娘という生きがいが近くにいたからなのかもしれません。娘がいるから仕事を頑張る。娘がいるから治療がつらくても頑張る。そういう気力が彼を支えていたような気がしてなりません。
私自身も、まだまだ元気に生きるなと思っていて、母も同じように感じていました。しかし、娘が小学6年生になった年の12月23日。彼はこの世を旅立ちました。あと3ヵ月で中学生になるこのタイミングで。書面の約束通りになってしまったことが、とても偶然とは思えませんでした。
亡くなる2週間前、彼から連絡があったときのこと。
「あ~……死ぬの怖いな」
その頃は、だいぶ痛みが強かったみたいで珍しく弱気なことを言っていました。痛みを軽減するための薬で朦朧としているのか、ぼんやりと聞き取れるかどうかくらいの声。その言葉を聞いて、私も正直に思っていることを伝えました。
(元夫と娘と。/提供写真)
「娘の身体に、あなたの血が流れているんだから、あなたはいつまでも死なないの」
「……いいこと言うな」
私に似ていると言われる娘だけど、私はあなたにそっくりだと思う。だから、私は娘の顔を見ているだけで、今でもすごく幸せな気持ちになります。私の好きなタイプがハマ・オカモトさんだから、世間的に見てかわいいのかは分からない。だけど、私にとっては完璧で最高の子ども。ずっと見ていられるし、思わず「かわいいなぁ」と声に出してしまうくらい。
あのとき言ったように、今もあなたは娘とともに、そして私の記憶の中で生きています。同じ時間を過ごすことはできないけれど、それでも彼に感謝を伝えたい。
こんなに愛らしい子どもを本当にありがとう。おやすみなさい。
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この続きは、書籍でお楽しみください。
島田珠代さん/芸人・役者
大阪府出身。17歳で芸人デビュー。長きにわたり新喜劇を支える看板役者。「パンティーテックス」「男なんてシャボン玉」など唯一無二のギャグと独創的な動きで、老若男女問わず見た人を笑いの渦へと巻きこんでいる。
※本記事は、『悲しみは笑い飛ばせ! 島田珠代の幸福論』著:島田 珠代/KADOKAWAより抜粋・再編集して作成しました。
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