お金や地位を手にすると、喜びや優越感から少しは気が大きくなってしまうこともあるだろう。周囲が「調子に乗ってるな」と笑って済ましてくれる程度なら微笑ましいが、度を越えた大柄な態度は、自分自身を苦しめることになるかもしれない。
社長の息子がやり放題
大隅重徳さん(仮名・40代)
は、同じぐらいの年代ばかりの職場で、気持ちよく働いていた。ところがある日、大学を卒業後に他社へ就職したもののすぐに退社し、ニートのような生活を送っていた社長の息子Tさん(20代)が入社。社内の雰囲気は一変した。
「Tは、『
社長である父親が自分をこの会社に就職させたということは、俺が次期社長ということ。俺の言うことを聞いておいたほうが身のためだ
』というようことを、事あるごとに吹聴。社長のいないところで好き放題やるようになりました」
大隅さんが真っ先に目についたのは、女性社員へのセクハラ。ターゲットとなったのは、実年齢は40代前半だが20代後半にしか見えない事務員で、Tからつきまとわれたり卑猥な下ネタを投げかけられたりするようになっていった。
セクハラだけでなくパワハラも
「ほかの社員が事務員さんに話しかけて引き離そうとすると、営業などが外出するタイミングを見計らってイスを隣まで持って行き、べっとりと張りつくようになったのです。どうにかしたくても、社長の息子ということもあり露骨に注意できない状況でした」
セクハラだけでなく、パワハラに苦しむ社員も次々と出現。職場のリーダー格だった大隅さんの悩みは日々大きくなっていった。小規模な田舎の会社で、社長の息子以外は全員が40歳手前以降。セクハラ被害に遭っていた事務員は、バツイチ子持ちの女性だった。
「
年齢や生活状況などから再就職が厳しい人ばかりということもあり、誰も社長の息子に歯向かう者はいません
。そして私が注意しても、『言いつけたみたいになるから』と迷惑がられることすらあったため、野放しにするしかなくお手上げ状態となっていたのです」
横暴ぶりを告発したら次期社長に
誰もが何も言えない状況をいいことに、Tの態度はますます横柄に。社員たちに向かって「レベル低すぎ。小学生かよ」「40歳すぎてもバカはバカ」など、言いたい放題。そのようななか、現在の社長が経営者の交代を考えているとの情報が大隅さんの耳に入る。
「これはもう、ここで社長に直訴しないと取り返しがつかなくなると思いました。
ほかの社員たちにもいっしょに直訴するよう声はかけましたが消極的で、結局は私がひとりで社長と話すことになったのです
。相談する前は、クビにされることも覚悟のうえでした」
ところが社長は、「よく話してくれた!」と感謝し、Tさんの横暴ぶりを深く謝罪。それどころか、Tさんの悪行に関して声を挙げた大隅さんを次期社長にすることに決めたのだ。もちろん次期社長となった理由などは、ほかの社員には公表していない。
社長の息子が辞表を提出するまで
「ただ、Tは何かを察知したようです。このままでは立場がないと悟ったのか態度を急変させ、私を含め、ほかの社員にゴマをするようになりました。
けれど当然、誰も相手にするはずがありません。苦笑いや軽く受け流される状況が続き、自らどんどん孤立していきました
」
そして、大隅さんがTさんの遅刻や勤務怠慢を注意しはじめると、ほかの社員も注意を開始。会社にほとんど顔を出さなくなっていたTさんは、大隅さんが代表に変わるとすぐに辞表を提出した。けれど、すんなりと辞めていくはずがない。
「
Tは、『みんなにいじめられた。絶対に訴えてやる!』『お前が後ろで根回ししたんだろ。卑怯者!』などと喚き散らして大騒動
。辞めたあとは音沙汰なくホッとしていますが、元社長によるとTは自宅で『お前のせいだ』とダダをこねて金銭を要求したそうです」
社長が怒っても埒が明かず、呆れて300万円と絶縁を突きつけると、そのまま音信不通になったという。まったく迷惑な話だが、Tさんほどではなくても、少なからず調子に乗ってしまう出来事もあるだろう。そんなときこそ、しっかりと気を引き締めて行動したいものだ。
<TEXT/夏川夏実>
【夏川夏実】
ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。Twitter:@natukawanatumi5
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