厳しい残暑から急に寒くなって…「体が季節に追いつかない」と感じている方は多いのでは? 実際、体調不良を訴える人は多いようで、早くもインフルエンザの全国的な流行が懸念されています。
例年以上に健康管理が大切になりそうな今冬、どんな注意が必要なのか? 佐賀大学医学部附属病院小児科診療准教授の垣内俊彦先生に教えていただきました。
体調不良の原因は急激な気候の変動
冬は暖房を使うために換気をおこたりがちですし、乾燥していると鼻や喉の粘膜から感染しやすくなります。しかも、ウイルスは冬の寒さと乾燥が大好き。もともと冬は感染症が広がる条件や環境が揃う季節でもあります。
ただ、今冬のリスクはそれだけではないそう。垣内先生は「今年のような急激な気候の変動も、感染症流行につながる」と指摘します。
「私たちの体には季節の移り変わりとともに、体を暑さ・寒さに慣らしていく『順化』という機能があり、それによって体調を管理しています。しかし、今年は急に寒くなったため『寒冷順化』ができていません。それが、体の負担となって免疫力が低下してしまうのです。
免疫力が落ちると短期間で繰り返し感染症にかかることもあり、今年はそうした『感染症ドミノ』のリスクも高まりそうです」(垣内俊彦先生以下カギカッコ内同じ)
季節の変化についていけず免疫力が落ちて感染し、感染症で弱っているところに、別のウイルスに感染してしまうのが「感染症ドミノ」。マイコプラズマ肺炎や手足口病、ノロウイルスも相変わらず流行中だし、新型コロナウイルスやRSウイルスの流行も懸念されています。
お医者さんを対象にしたアンケートでも、12月~3月には同じ患者さんが感染症に複数回かかるケースが増えるそうで、感染症ドミノには警戒が必要そう。
「とくに、子どもや高齢者は注意が必要です。もともと子どもは免疫が未発達で、そのうえ、近年、細菌やウイルスへの接触回数が減っていて免疫が獲得できていない子が少なくありません。『ここ数年、風邪をひいていない』というお子さんは要注意です。
また、高齢者は加齢によって免疫力だけでなく、体力や体の機能も低下傾向にありますので、感染症ドミノに加え、重症化のリスクも高まります」
「免疫リペア」にストレスケアや運動、睡眠が大切
寒冷順化が難しく、免疫力が下がりやすい今冬。必要なのはまず、ウイルスとの接触を極力減らすべく、うがいや手洗い、マスクの着用などの予防対策を徹底すること。そして、同時に「免疫リペアが必要」だと垣内先生はいいます。
「免疫の低下を防ぐこと、そして、免疫力を高めること。この2つのアプローチで免疫力を“修繕(しゅうぜん)”し、整えていきましょう。決して、大変なことではありません。日常生活のちょっとした意識で免疫力を健康的なカラダづくりはできます」
ということで、垣内先生におすすめの「免疫リペア」術が次の7つ。
【免疫の低下を防ぐ】
●適度な運動:軽いジョギング、水泳、 縄跳び、サイクリング、筋トレなど
●十分な睡眠:質の良い睡眠、必要な睡眠時間の確保
●ストレス対策:ストレス除去、休息、ストレッチなど
●体温を上げる:入浴、温かい食事、しょうがや根菜類など体を温める食品の摂取など
「免疫力の低下にかかわるホルモンのひとつが『コルチゾール』です。『ストレスホルモン』の別名をもつコルチゾールは、過度なストレスによって分泌が増加します。
コルチゾールの増加を抑えるためにはストレスケアや運動、睡眠が大切です。また、体温が低下すると免疫力が低くなることがわかっていますので、寒い時期は特に体温を下げないように心がけましょう」
発酵食品を摂る、日光を浴びる……
【免疫力を高める】
●腸内環境を整える:ヨーグルトなどの発酵食品、食物繊維やオリゴ糖の摂取
●口腔内を清潔に保つ:歯磨きや舌磨き、歯科で定期的なケア、よく噛み唾液を分泌する
●自律神経を調える:メリハリのある規則正しい生活、日光を浴びる、朝食を摂るなど
「免疫細胞の約70%は腸内に存在します。善玉菌を増やすヨーグルトなどの発酵食品、さらに善玉菌のエサになる食物繊維やオリゴ糖を食事に取り入れることで腸内環境が整いやすくなります。また腸内環境は口腔内環境にも影響を及ぼしますので、お口の中は清潔に保ちましょう。
さらに、自律神経が乱れると免疫力は低下しやすくなり、自律神経の乱れから腸の動きが乱れやすくなり腸内環境へ悪影響を及ぼします。規則正しい生活で体内時計をリセットし、自律神経も整えておきましょう」
いろいろやるべきことはたくさんあるけれど、まずは、なにかひとつ、続けられそうなことから始めてみてはいかがでしょうか。たとえば、朝食に納豆やヨーグルトを加えるとか、いつもの習慣にプラスオンするのが、もっとも手軽な免疫リペアになるかもしれません。
とくにヨーグルトなどの乳製品はタンパク質を含むため、代謝や体温維持にもいいのだそう。免疫の低下を防ぐのと、免疫力を高めるのと、ダブルでアプローチできるのはポイントが高いですよね。
私たちの体は日々の積み重ねでできています。一朝一夕で免疫力を高めることはできないからこそ、本格的な冬が来る前に、今から感染症に強い体をつくっていきましょう!
<文/小山武蔵>
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